狂女38_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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狂女38

15-06-14 09:09

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「狂女」へ

そのうちに母さんか叔父さんが自室まで来るような気がして椅子に掛けていると、「雄一君」と声がした。
「何?」
しばらくして戸が開き、叔父さんが入ってきた。

「全部、ばれとったんだな」
そう言って彼は絨毯の上であぐらをかき、「ま、別にどうって事ないが」と開き直って言った。
「君の事は言ってないから安心しな」
僕は叔父の顔を見た。
「これからどうなるのかな・・・?」
「・・・」
「このまま諦めるのは癪だし」
叔父のその言葉で僕は不愉快になった。
やはりまだ加奈さんを諦めていないんだ。
二人共黙っていた後、僕は思い切って、「叔父さんはもう十分楽しんだじゃないか」と責めるように言った。
「俺に手を引けって言うのか?」
勝叔父は厳しい目で僕を見据えて聞いた。
さすがに彼を見返せない。
「ふん。生意気な事を言いやがるな」
僕は今にも殴られるような怖さを感じて固くなったが、叔父はそれ以上言わずに部屋を出て戸を強く締めた。
ほっと溜息をつき、ベッドの上に身を投げ出した。
加奈さんにまつわる様々な事がごちゃ混ぜに思い出され、ぼうっと天井を眺めていた後、彼女が眠っていた布団の所まで行った。
ひどく乱れている様が妙に懐かしい。
『加奈さん・・・』
僕は力無く正座をし、布団を眺め続けた。
自分の弟と妹の肉体関係を息子が知ってしまった事が母さんにはやはりショックらしく、僕と顔を合わせても殊更それを気にしている感じだった。
まさか息子が妹とセックスをしたなんて考え及ばないだろう。
初めの内、僕は変に優越感を持って母さんに接していた。
近親と言っても所詮男と女じゃないかという開き直りが快くさえあり、大人の女を何回も悦ばせたという自負も当然快かった。
しかしそんな優越感はすぐに崩れ、逆に不安が増したのだった。
勝叔父が僕と加奈さんの関係を母さんに言ってしまうんじゃないか・・・。
今までは彼も妹との肉体関係を知られたくないという弱みがあったが、知られてしまった以上、もはや開き直って強い態度に出るかもしれない。
あの時彼を怒らせてしまったのはまずい。
僕は胸に鉛のような重苦しさを感じ、気にすればする程つらくなるのだった。
それから逃れたいあまり、いっそ全てぶちまけてしまおうかと思った事もあるが、やはりそんな勇気は無かった。
不安のまま新学期が始まった。
友里恵さんとは別なクラスになって複雑な気持ちだ。
彼女とは、携帯電話で加奈さんのよがり声を聞かせていきなり切られてから全く連絡し合っていない。
加奈さんの事で頭がいっぱいで、せいぜいたまに思い出すくらいだった。
そんな気まずいままだったので彼女と顔を合わすのがどうも苦手で、自然、避けるようになっていた。
携帯にも掛かってこない。
けれど狭い校内、たとえ生徒が多くてもいつかは会ってしまう。
まだ一月も経っていない学校帰りの或る日、加奈さんを思いながら一人で校門に向かって歩いていたら、前を友里恵さんが女友達二人と歩いている。
僕は彼女たちに追いつかないようにわざとゆっくり歩いたが、それでかえって気付かれたらしく、ふいと友里恵さんが後ろを振り返った。
その途端友里恵さんは嫌な顔をしてすぐに顔を戻した。
見つかってしまった僕は開き直って足早に彼女たちを追い抜き、やがて校門を出た。

つづき「狂女39」へ


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