狂女26_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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狂女26

15-06-14 09:12

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「狂女」へ

暗く狭い屋敷の中は細い道が続いている他は幽霊や妖怪をかたどった物が所々に立ててあるだけで、不気味ではあっても怖くない。
しかし加奈さんは僕にしがみ付いて体を震わせており、時々、「ねえねえ・・・」とか、「もう嫌・・・」と言って怯えている。

「しっかりして」
それでも加奈さんは顔を僕の体に埋めて前を見ようとせず、何度も足が止まった。
お化けよりもむしろ不気味な暗闇を異常に恐れているのでは・・・と思った。
「もうやめて・・・」
僕は加奈さんを宥めるように頭を撫でたり、時には立ち止まって両腕で抱き締めるのだった。
細いだけの道を進んでようやく出口まで来て外に出、明るい陽光を浴びてほっとした。
加奈さんを見ると、青ざめている。
「ごめんなさい」
「ばかばか」
加奈さんは顔を歪めて拳で僕の胸を叩いた。
親程年上の女が少年に甘えて怒っているようなその光景に、近くの人が変な目で僕たちを見ていた。
さすがに加奈さんを抱く事も出来ず、何度も謝ったり宥めたりして彼女の機嫌を取らねばならなかった。

つづき「狂女27」へ


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