この話はつづきです。はじめから読まれる方は「狂女」へ
クリスマスと言いながら、ホテル代も無い為に結局平凡なデートで終わった友里恵さんとの関係をこの先どのように積極的に進めるか、僕は加奈さんとの事を考えながら計画した。
加奈さんとは叔父の存在もあって簡単には行かないが、友里恵さんなら比較的たやすいと思った。
大晦日の夜どこかに泊まり、除夜の鐘を聞きながらセックスをするなんて面白い、などとにやにやして思った。
しかしいざ現実を考えると、たとえ一夜でも家を空ける勇気は無く、母さんが変に思うのを恐れて自由に行動出来ないのだった。
絶えず監視しているようで、一旦疑い出したらうるさく聞いてくる・・・。
大胆な事を企んでいる割には何も出来ない自分が情けなく、腹立たしくもあった。
夜、ベッドの上で天井を見上げながらむしゃくしゃした、加奈さんの全裸姿を思い出したりしている僕は所詮気の弱い男なのか・・・。
友里恵さんとの予定ははっきり決められないまま加奈さんの事を思っていた或る日、勝叔父さんから電話が掛かってきた。
聞けば、あの日に別れてから加奈さんは僕がいない為すっかり落ち込み、なだめても泣きじゃくったり、逆に怒ってわめいて物を投げたりし、困っているという。
<あいつ、君に惚れちまったらしい。俺じゃどうにもならん>
その言葉に自尊心をくすぐられ、「僕が行きましょうか?」と優越感を抱いて聞いた。
<そうしてくれるか?>
「わかりました。今日でもどうですか?」
<ああ頼む>
そういうふうにすんなり話がまとまったが、電話を切ってよく考えたら、たとえ行っても又帰って来なくてはいけない。
そうしたら同じ事の繰り返しだ、と困った。
一緒に暮らさない限り加奈さんは納得しない・・・いっそあの人をこの家に連れてこようか・・・しかし両親に話さなくてはならないので無理だ。
僕はジレンマに陥りながらも、とにかく又あの人に会える嬉しさから落着き無くズボンを履き替え始めた。
名古屋に着き、電車を乗り換えて五駅行った後バスを乗り継ぐ。
お金も掛かるのでしょっちゅうこんな事は出来ない。
以前の夏のように叔父さんが加奈さんを連れて自宅まで来てくれれば楽なんだがなあ・・・と思いつつ二人の家に向かっていた。
バスから降りてしばらく、オーバーのポケットに両手を突っ込んで白い息を吐きながら人気の無い道を歩いていると、遠くの家から一人の男性が出てき、こちらを見て大きく手を振った。
勝叔父さんだ。
僕も手を振ったら叔父さんは家に姿を消し、今度は加奈さんを連れて又現れた。
加奈さんは僕の姿に気付くやぴょんぴょん飛び跳ね、手を叩いてはしゃいだ。
僕は笑顔で彼女に向かって大きく手を振り、走って行った。
「加奈さん!」
「ユウイチー!ユウイチー!」
僕たちは抱き合って再会を喜んだ。
加奈さんの顔を見ると目が涙で潤んでいる。
「ユウイチ・・・」
加奈さんの目から涙が頬を伝わった。
「ごめん・・・」
思わず謝り、又彼女を抱き締めた。
「俺の負けだ・・・」
叔父さんが俯き、それから顔を上げた。
「二人でどこかへ行ったら?」
人目が気になる為街は避け、勧められた近くの小さい公園へ行く事にしたが、加奈さんはまだ僕を強く抱き締めている。
「よっぽど嬉しいんだなあ・・・」
叔父さんがしんみりして呟いた。
僕は加奈さんの腕を緩め、公園に向かって一緒に歩いて行った。
公園に入り、木のベンチに掛けた。
冬のうらぶれた園内には他に人はおらず、滑り台やぶらんこなどが侘しい。
「寒いだろ?」と、首に巻いているマフラーを加奈さんの首にも掛けてあげた。
加奈さんは僕の体に腕を回して笑顔でいる。
こうして二人だけでいられるのが嬉しかったが、こんなになってしまって、この先どうなるか不安でもあった。
相手が健全な一般女性ならまだいいが、気が変な実の叔母と関係を持つなんて・・・。
友里恵さんだけとならごく普通の高校生カップルとして堂々と付き合える。
それでも加奈さんを離したくなかった。
写真で見た高校生時代の彼女を思い出していると、二十年近く経ってしまったもののその本人と今こうして愛し合ってられるのが嬉しくもあった。
ただ・・・気の毒だという気持ちがやはり付いて回るのだった。
昔のようにまともな人間に戻してあげたい・・・。
公園を出て家に戻った。暖房の効いた部屋に入り、ほっとする。
「やっぱり公園じゃ寒くておれんかな」
叔父さんが苦笑いして言った。
僕はマフラーを取り、オーバーを脱いだ。
加奈さんは僕から片時も離れようとせず、僕とすぐ隣り合って炬燵に入るのだった。
そんな妹の姿を叔父さんは神妙な面持ちで眺めていた。
それは、妹を甥に取られた寂しさだと僕は早合点して内心得意になったが、叔父さんが炬燵に入り、「加奈はこの年になってやっと恋愛をしたんだな・・・」としんみり言われて意外な気がした。
「相手がどうだろうと、こいつが幸せならいいんだ・・」
僕は彼をじっと見た。
叔父さんも僕を見た。
「俺だって人間の心を持っとるさ」
しばらく沈黙が続い。
「俺との間には恋愛感情は無かったんだぜ」
叔父さんは意味ありげに笑みを浮かべた。
「セックスに夢中になっても、それとこれとは別さ」
「・・・」
「恋愛とセックス。やっぱり恋愛してもらいたかったんだ」
叔父さんは愛しそうに妹を見た。
僕たちの話を理解出来ない加奈さんは痴呆の笑みで目をとろんとさせていた。
「それでも、男というのは本当に獣みたいだな。こいつが可愛ければ可愛い程抱きたくなってな」
叔父さんは自虐的に言った。
結局はその人の人間性だろ、と思ったが、僕も叔父と同類なので言い返せなかった。
加奈さんと一緒にいてやはりぺニスの疼きはどうにもならず、ズボンの上から頻りペニスをいじるのでファスナーを下ろして性器を出してあげると、喜んでそれをしゃぶるのだった。
「ううん・・・」
あまりの気持ち良さの為そのままでいる内に叔母の口の中に精液を放出してしまった。
彼女は精液をごくん、ごくんと飲み込んでいく。
「はあ・・・」
満足顔だ。
けれど一旦出してしまえば僕はその日、以前みたいに情欲は続かなかった。
叔父に打ち明けられた事実が心に引っ掛かっていた。
強姦事件から十数年の間にどれ程多くの出来事があったのか、それらが少しずつ明らかになっていくのが怖くもあれば知りたくもあった。
もしも加奈さんを異性として何とも思わず、強い気持ちを持っていたら勝叔父さんから細かく聞き出しているかもしれない。
加奈さんが初めて恋をした相手が僕だというのは本当だろうか?
もしそれが事実ならやはり嬉しい。
十数年という空白期間を経て加奈さんはようやく恋愛を知った訳だから。
しかし、彼女の輝いていた中学・高校生時代を直接知っている勝叔父さんが羨ましかった。
二人は仲が良かったに違いない。
もしかしてその時すでに叔父さんは男としてひそかに妹に思いを寄せていたかもしれない。
そして妹が強姦されたのを心の片隅では喜びながら、犯人の痕跡を消す為に彼女を全裸にしてシャワーを浴びせたり、体を愛撫したかもしれない・・・。
しかも精神病院を出てから十年以上もの間、瑞々しい二十代の体をたっぷり味わった・・・。
そう思っていると叔父がたまらなく妬ましくなるのだった。
つづき「狂女19」へ
コメント