この話はつづきです。はじめから読まれる方は「出会いの街角(一話)」へ
ひとまず二人は車で移動をはじめる。
まだラブホテルには行かないということは示し合わせてある。
「バイブで何かやってみる?」
「えー」
「ディルドーもあるけど」
「うーん」
「縛ってみようか?」
「どうしよう」
彼女は迷っているように見えて、じつはこのまったりした時間を楽しんでいるのだ。
「出し惜しみしないでさあ、自分から言っちゃいなよ」
シンジに促され、ミサが照れながら告白する。
「あたし、オナニーがしたい……」
その瞬間、シンジの胸がきゅんきゅんと音を立てて疼いた。
聞いてはいけないフレーズを聞いてしまったような、それでいて欲求が満たされたような、なんとも歯痒い感覚である。
「ミサはオナニーが好きなのかい?」
「エッチより、一人エッチが好き……」
「あ、ずるい、言い方を変えてるし」
「だって恥ずかしいから……」
「オナニーが好きなら、オナニーって言えばいいじゃん」
「いやだ」
埒が明かないので、この件についてはシンジのほうが折れてやることにした。
その代わり、ミサのことを徹底的に凌辱してやりたくなった。
彼女の人権は尊重しつつ、絶え間ないアクメによって性に依存させてやるのだ。
数分後、シンジの車はレンタルビデオ店の駐車場にあった。
入店するなり二人は別行動を取る。
邦画コーナーに女子高生の姿があった。
こんな夜遅くにどうして女子高生が、などと思ったが、シンジは妄想の中でその少女を犯しながら、ミサが無事に帰ってくるのを待つことにした。
一方のミサは、ひとりでアダルトコーナーに向かった。
『18禁』と書かれたのれんをくぐり、心細さを顔に浮かべて、誰とも目を合わさないようにしながら奥へと踏み込む。
そこには女の知らない世界が広がっていた。
目を覆いたくなるような下品なタイトルが所狭しと並んでいる。
ふと誰かの視線を感じ、ミサの被害妄想がはじまる。
たちまち彼女の体の一部分が潤いを帯びてくる。
それを受け止めるための下着がないので、熱いしずくはすぐに太ももをつたい、人目につくところにまで流れていく。
仕方なくそのままアダルトコーナーを巡り、ほかの客の視線をびりびりと感じながらタイトルを眺める。
盗撮、人妻、同性愛、近親相姦などなど、以前のミサなら蕁麻疹が出るほどそれらを敬遠していたはずだが、今ではすっかり性のマーケットに敏感な女性に成長していた。
そこにきてシンジのような男性に出会えたのは、たとえそれが偶然の産物だとしても、運命的なものを感じずにはいられなかった。
彼はどこか自分とおなじ匂いがする、ミサはそう思う。
四方をアダルトDVDに囲まれた一画でミサは立ち止まる。
きょろきょろとまわりをうかがい、バッグの口を開ける。
手を差し込むとシリコンの感触をおぼえた。
もう一度まわりを見て、ほかの客から死角になっていることを確認すると、ディルドーを取り出してその先端にキスをした。
誰かが来る気配があったので、ミサは玩具をバッグに戻して素知らぬ顔をする。
あぶないところだった。
けれどもこのスリルが堪らない。
ふたたび誰もいないところに移動して、同じことを繰り返す。
ディルドーを使って疑似フェラチオをするのである。
何度かやっているうちに脳が痺れるような感覚をつかみはじめる。
ミサは陳列棚に向かってしゃがみ込み、大胆にもディルドーを床にくっつけた。
お尻をバッグで隠して死角をつくり、ショートパンツに隙間を開けると、そのままディルドーにまたがった。
それは膣口押し広げながら、するすると中に入ってくる。
公共の場で自慰行為に耽っているという現実が、あっという間にミサの理性を奪っていく。
もうどうなってもいいと思いはじめていた。
ミサはゆっくりと腰を落とし、とうとうディルドーを根元まで飲み込んでしまう。
「んっ……んんん」
声を出すわけにはいかず、ミサは唇を噛んで快感に堪える。
意識して腰に回転運動を加えてやれば、膣に馴染んだシリコンの質感が穴の隅々にまで行き渡る。
くちゅり、くちゅり、という音はミサにしか聞こえないほど小さい。
男性客らが踏みしめたであろう床の上に、はしたない液がとろりと流れる。
つづき「出会いの街角(七話)」へ
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