つかの間の恋、風俗嬢編_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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つかの間の恋、風俗嬢編

15-06-14 09:19

これまで、10人からの女性とおつきあいし、その性的交渉を日記風に記録してきた。なかで一番衝撃的だったのは、風俗嬢との一晩である。
その夜のことは今もありありと思い起こすことが出来る。

それは、離婚してから、母と二人暮らしをはじめた初秋の出来事。仕事が終わればまっすぐ帰宅して、88才の母と夕食をともにするのが日課である。話しかけて会話に努め、認知症対策に余念がない。あんなに気丈夫だった母が父の死後、理解できない言葉を繰り返し発するようになり、インターネットで知識を得ながら、対応している日々だ。
仕事が早めにかたづいたら、ちょっと寄道してみたくなる。母を大切には思うけれど、考えたくない時もある。そうか、これが家族というものかと自分を納得させるのだった。ある日突然出ていった妻のことを思い返す、悔悟の気持ちと居直りとが、満たされない性欲をコントロールする。女体への少年のような焦燥感に振り回されてしまう。60を過ぎても性欲は強く、朝立ちする。この年でオナニーはつらい。放出後の虚脱感が深く、いっそう惨めになってしまうから。
どこに行こうかと迷いながら、誰かと会えるチャンスのある、デモの帰りによく立ち寄ったアイリッシュバーのカウンターに坐る。店長格の細身の男性が「久しぶりですね」と声をかけてくる。声をかけられると、気分はよい。上面発酵のキルケニー、アイリッシュビールを注文する。別れた妻はギネスビールのフアンだった。酒飲みだった。身辺の変化をしゃべりたくなるが、止めた。いい人を見つけて再婚したいと盛り上げても、60才を越えた母と二人暮らしの男にそんなチャンスがあるとはとうてい思えない。
お好みのビールのせいか、ひとりで飲むせいか、ピッチが早い。すすめられるまま、ぐいぐいとのみ出し、酔いがまわる。酔いがまわると勢いがついてくる。母に電話して「つき合いがあって遅くなる」と言い訳すると、機嫌良く「留守番してるから、大丈夫」と返事してくれた。気分が安定しているようで、夜遊びすることにした。10時頃に帰れば、まず安心かと判断する。年寄りには、夕方からのひとりが一番よくないそうだ。たそがれ病となづけられているくらいだ。
妻が出ていってしばらく一人暮らしだったが、その折り、デリヘルを何度か利用した。思った以上の風俗嬢が部屋を訪ねてくれる。時代はすっかり変わったのが実感できる。女性の解放とか言い合って議論したものだが、記憶の彼方の女性はどうしているのだろうか。財布を確かめながら、携帯から酔い心地でデリヘルに電話する。隣の席のひとりで飲んでいる30才前後の女性とは、へルタースケルターだったか、沢尻エリカ主演の映画の話で瞬間、盛り上がった。この映画は女性がひとりで観賞することで注目された。実際、女性のひとり客が劇場にたくさんいた。主人公が風俗産業で働き始める場面で終わるから、女性という存在は、セックスへの自己抑制が解かれた時、自由になれるとか言いながら映画評論を交わしたもので、それ以上おつきあいする自信はまったくない。風俗嬢に期待する。
受付の男性に、若くなくてもよい、頭のよい子で、やせすぎでなければスタイルは問わない、と注文をつける。「ぴったりのこがいます、ほんとに」と進められる。その気になって待ち合わせることにした。京都は繁華街の高瀬川沿いにホテルがいくつかあり、そこに入って風俗嬢を待つ。
ごく普通の女性が部屋に入ってくる。化粧も薄く服装も派手ではない。肩先まで伸ばしている髪が落ち着いた印象をもたらしている。30才は過ぎている。人妻ではないだろう。細面、ちょっと神経質に感じられた。いつもそうだが、最初はなじむために話し込む。貴重な時間だが、くつろげぐ時間を設けた方が、あとの時間を濃厚にすることができる。恋人気分をも楽しめる。
「昼間はなにしてるの」
「仕事してます」
「どんな仕事」
「海外事業部のような」
「英語が得意なんやね」
「それで就職できたのかも知れません」
相手のプライドをたてる。適度な自信は円滑な性交に欠かせない。会話は順調に滑り出した。
応接セットに並んで坐る。相手が答えやすいように尋ねるのがテクニック。海外と聞いて思わず興奮した。当たりやないか。指の爪の飾りは、職場の自由な雰囲気を表している。
青のストライプの入ったシャツ、膝下までの黒のスカート、黒いストッキング。黒は誰でも着るのでかえって個性を感じさせないから、地味に見える。きっと、おとなしくて目立たないこなのだろう。そう思うと、このこは当たり。京都は大企業が少ないが、海外事業に実績のある企業は多い。油取りで有名なお店は海外の売上高が大きいらしいと聞いている。そのため24時間営業だそうだ。
「よくご存じですね」と男を持ち上げてくる。
「仕事帰りやろ」
「ちょっと時間つぶしに」
驚くような事を言う。暇つぶしに、デリヘルか。主導権を奪われそうなほど大胆な発言だ。
女は、相手の表情を、顔をかたむけながらて見て「1時間ですね」と念を押す。やりとりする言葉と顔をかたむけてほほえむ表情との落差にあらためて困惑する。たじろいでいてはいられない。全くなぞめいた女だ。物怖じするところがない。第一印象と違って、男にすれているというか、こういう設定に場慣れしている。男を扱いなれているのだ。ちょっと意外だ。
「1時間でお願いします」
はごく自然に立ち上がって、バスルームに向かおうとする。いつもなら見送るが今日は普通のパターンは採用しないと決め、男は広いベッドのすみに坐りなおして、女に指示する。
「ゆっくり脱いでいって」
「ゆっくり脱ぐんですか」
「そう、脱ぐのを見るのも楽しみやね」
女はたったまま、男の前で裸になっていく。シャツを脱ぐ。キャミソールのかた紐を身体からはずす。
「それは仕事のかっこう」
「このかっこうで仕事してたんですよ」
乳房があらわになる。
「ブラジャーしてないの」
「ブラキャミなんです、楽ですよ」
スカートを脱ぐ。黒のパンストの下はピンクのパンテイ。パンストを足から丸めながら脱ぐ。
「穴があいている」と恥ずかしそうに言う。ストッキングの穴を見つけられたと思ったのだろうか、可愛いと思った。女の日常に触れたようだ
足下を確かめながら、パンテイだけになる。前からはふんどし風、お尻はひも。
「かわいいね」「色っぽい、よくはくの」
「かわいいでしょ、気分ではくのです」
足の指先を見ると、小さな爪にはきれいなぺデキュアがしてあり、若い女性らしさを表現している。
つやがあって、すべすべしている肌の様子が分かる。太腿は女性らしくたくましいとさえ感じたが、乳房はこぶりで、おもちのように柔らかそうだった。
どうしますと、女が目で問いかけてくる。
「全部脱いで」
女は身体をかがめて、お尻からパンテイをとり裸になった。
「きれいなからだ、しているね。素人みたいやね」
「素人ですよ」すぐに言い返す。
「お腹が出てきて、いやなんです」と言いながら、腹をたたく振りをする。
「やめてくれ、気にならないから」
女が男にほほえみかける。
「若い子でなくてはいい。30代で頭のよいこ、出来れば髪の長いこって注文したら、いい子がいますからちょっと待ってくださいって言われた。しばらくすると、いいこですよ、テクニシャンですよ、きっと満足していただけますよ、と。待ってた」「イメージ通りだった」とほめあげる。
「イメージ通り」と笑う。
「化粧、あまりしないんやね」
「彼氏がしなくていいって言うから」
「化粧しなくてよいって」
「素顔はいやなんです、自信がないから」
「どうしましょう」
男は考えた。この生意気な女を困らせよう、そして主導権を取り戻そうと。
「足を置いてみて」
ガラスのテーブルを指さして、命令した。さっきから気になっていたが、毛が薄いのかどうか確かめたかった。
女は男の前のテーブルに左足を置いた。
女の中心が丸見えになった。
おめこがむき出しになっている。もう開いている。口を開けている。
女はじっとしている。男は眺める。
男は女の中心部に毛がほとんどないことにすぐに気がついた。異変だ。この女が自分の意思で剃っているとは思わなかったし、剃られていると考えた方が設定としては面白い。そうであれば、これは被虐的な光景だ。毛のない光景と男に剃られたこととを同時にさらしているのだ。恥ずかしい限りではないか。
「毛、剃られてるの」
「彼に剃られてるの」
女は平静だ。この女に強烈な興味がわき起こってきた。性欲を越えるもっと強烈な、理不尽な勢いがからだの芯から湧いてくる。この女の、男をなめたような態度はどこから来ているのか、探求しなければ。男はもう十分経験しているのよ、そんな柔ではないわ、と女が言葉にならないことばで話しかけてくる。昼は有名な企業に勤めてるに違いない、それだけで不思議なのに、風俗しながら男がいて、毛を剃られているとは、まったく不可思議な世界だ。
この女、セックスが好きなんだ。相当経験がある。手に負えないかも知れないが、今生の出会いだから渾身の力を尽くして楽しもうと思い直した。
「パンテイ、彼の好みやね」
「スカートの上からお尻をなでまわす」「パンテイをはいてないみたいで落ちつかないんですけどね、ひもパンが好きではいてくれって」
男は意地悪い質問をする「なんで、こんなことしてるの」
女は笑って答えない。全く動揺を示さず、余裕すら見せる。
「彼がいてるんやね」
「彼、います」「事務所から連絡があって、今日バイトしないかってすすめられて、彼がね」
仕事が定時で終わって、京都駅近くで彼と会ってた時のことだ。彼が「バイト行って来い、丁度会議があるから、バイトのあと、会おうってと。何か難しそうな会議らしい。女には興味がもてないような新聞記事にでてくる世の中の事らしい。
「ふーん」
この女は妄想しているのかと疑った。あまりに話が奇妙すぎる。ちょっと気がかりだが、まあいいか、もう後戻りは出来ないし、危ないところはない、とことんつきあおうと決めた。男は目の前の女をこの1時間、自分のものにしてしまえると思ったのに、その男が介在してくるようでなにか、三角関係のような不思議な感情にとらわれた。三角関係は性欲を刺激する。人妻との不倫を思い出して興奮した。
この女をいじめてみたくなってきた。加虐の感情がわき起こり収まらない。頭の中のまだ使ったことがない箇所に血流があふれていく。まだ時間はあるぞと言い聞かせた。
「おめこを広げてみろ」
男は乱暴な表現で女に指示した。体が熱くなる。
女は驚く風もなく、従順に命令に従う。両手で花びらをつかんでおめこを広げる。
「きれいな色してる」
「きれい」と女が尋ねる。
「きれいよ」
二つの陰唇はこんもりと盛り上がる程度で、ほぼ同じ高さになっていて、そんなに使い込まれているようには見えない。
思わず、舌をのばして、おめこのまわりを滑らせる。作業を継続しようと、おんなの体勢を安定させるため、テーブルに坐らせる。
再び、おめこをなめ回す。
「あ、あ」と小さな声を短くあげると、あとは声を押し殺して、刺激に耐えている。まるで少女のようだ。この女を可愛いと思った。
つるつるのおめこを繰り返し、なめる。
女が「おいしい」と男に聞く。
「美味しいよ」
このまま突入したい気持ちになったが、なんとか息子を押さえ込む。本格的な戦闘はまだまだだ。
ベッドのはしに並んで坐ると、男は冷静さを取り戻すため、女に話しかける。先は長い。
「バイトよくするの」
「時々、気が向いたら」
「気が向くって」
「私、もうお局さんなんです。会社ではおばさん扱いなんですよ」
「それなら、僕はおじいちゃんやね」
「お客さん、いくつです」
「いくつに見える」
「お父さんよりは若そう」
「おとうさんはいくつです」
「66才」
「同じやね、団塊の世代」
手をからませながら「お肌が若い、うらやましい」
「あなたもきれいですよ」
「ありがとう」そう言ってほほえむ。
女の言葉遣いはていねいで、男は女の雰囲気になじんでいった。
「お客さん、45分にアラームしておきますね」
携帯の機能をセットする。
セットし終わると、男を見つめて、次の行動を促す。
興奮していたはずなのに、冷静だ。興ざめするところだが、女の指摘の方が正しい。時間配分は大切だ。
「指名されるんでしょ」
「スタッフが気を遣ってくれる、むりには入れないので」
「お客さんみたいな人ばっかりだったらいいんだけど」
「おじいちゃん」と男に呼びかける。
先の会話を取り上げて、おじいちゃんになっているから、感心する。
「おじいちゃんはおかしいでしょう、お父さんは」
「お父さんはいや」「わたし、年上の人が好きになるんです」
「シャワー、浴びてきますね」と女が言ったが、さえぎって
「横になって」、次の行為を指示した。
男はベッドカバーをはずした。
女をベッドの上に横たわらせた。
下半身をひねり足をからませる。
男の足が女の足を開かせる。女は膝でまげる。
すぐに足をそろえて、品よく振る舞う。
「広げろよ」「もっと」
女は足を広げる。所在なげにしている。
男の指示を待っている。
「自分でさわってみろ」
女が右手をおめこにのばすと、男は裸になってベッドのふちに両手を置き、観察する体勢になる。
おめこをくつろげる。花びらをなでる。それをじっと眺める。
「ぬれてるやないか」
「ぬれてますか」
「裸になって、足をひろげておめこをいじっている。いやらしいやないか」
男がなじると「いやらしい」と女がだめを押す。
「ほんとにいやらしいな」
男が言葉で責める。
「シャワー、浴びてきてよろしいか」
女は賢くて冷静だ。場面転換というか、時間配分が絶妙だ。
バスルームから「バスタオル、ありませんか」と女が聞く。
ひきだしの中から出して女に渡す。
「お客さん、シャワー浴びますか、お風呂に入る時間がないでしょ」
男は断って、ベッドの上でしばらく空白の時間を楽しんだ。女との攻防を思案した。なにか足りない、この女との攻防にはなにかが。
女はベッドの上に戻ると「ガウン、ありますか」
ひきだしからとり出すと「投げてください」
「ガーゼ地みたいで気持ちいい」とガウンをまとう。
恋人のようなしぐさがゆとりの空間を演出して、男は満足した。
前をはだけたままにしている。
「抱いてください」
面白い表現だと感じ入った。
「うしろから抱いてください」
男が抱きしめると「あたたかい」とつぶやく。
男は少女のような幼さを奇妙に思えた。
顔をくっつけると、ため息をもらす。
「後ろから抱かれるの好き」
「何に一番、時間を使うの」
「エステかな、土日とかいろんなとこを試してみる」「お金もいちばん使うかな」
「すべすべやね」
「すべすべでしょ」と自信たっぷりに答える。
身体の脱毛は勤めだしてすぐ、自分のお金が貯まるようになって。なにかコンプレックスがあったのかも知れない。
女のプロ意識というのかも知れない。よい循環なのだろうか。からだを磨いて喜ばせる、男に大事にされる、そして自信を深める。自信が深まれば、男に左右されることが少なくなる。
女が男をリードしている。
「キスして」
向き合って、キスする。
キスとキスの間は、口を開けてぽかんとしている。
「いい顔やね」「なかなかいい」とほめる。
口をあけて、キスを待っている顔は扇情的だ。
「眠たいからだと思いますよ」と女はカムフラージュする。
「仕事が忙しいのか」
「ひまなんです、することがなくて」
中小企業ではとても考えられない。
「彼が部屋に来て、一晩中、責められて」と自分から解説する。
「毎日のように会って、やってる」
彼は時間が自由になるらしい。そう言う仕事なのかと思う。
「責められて夜更かしすると、次の日、ぼーっとしてて、上司に声かけられると、なにも悪いことをしていないのに、恥ずかしくなる」
「窓際みたいやね」と問いかけるが、そうでもないらしい。
「楽しんでください」
女が誘いかける。場面転換がうまい。
この女がつきあっている男のことを思い浮かべながら、女をベッドの上に横たわらせる。
女が足をからませてくる。男は左足を女の股に滑り込ませる。そして、膝を中心部に当ててこすりつける。
「おめこ、すごくぬれてる」
「びちょびちょや」
「お客さんがすてきだから、なにかされると思うとぬれてくるのです」
「ぬれやすいんやな」
「うん、すぐぬれる」
「入れられると思うとぬれてきます」
「乳首、つまんでください」
女のリードは完璧だ。男を知り尽くしている。完投型のピッチャーのようだ。
男を挑発するタイミングが見事なのだ。挑発しているが、女のリードを感じさせず、甘えながら次の行為を誘っている。
男を盛り上げ、女も高まっていく。正、反、合である。もとより性交は、女が高まらずにうまくいくわけがない。
乳首を左指でつまむ。きりきりともむ。力をこめると、女があーあーと反応する。
「感じてんのか」
「感じてます」
強くもむ。
「すごく感じてます」
「おめこも感じてます」
「乳首、つままれていたぶられると、おめこがすぐに反応します」
女はひとり、佳境に入ろうとしているかのようだ。男はしばらく、この感度のよさにつきあうことにした。
「いい女や」「本気になってくれるのはめったにない」
「うれしいです」
「娼婦の人って、出させようとするからね、出したらおしまいやから」
「生本番、いいですよ、特別サービスです」「お客さんのもの、生で味わいたいから」
「うわーうれしいな」「うれしいこと言うね」と思わず声をあげてしまった。
「生の方が気持ちいいでしょ、わたしも」
いよいよ、主導権を回復するべき決戦の時がきた。
ちんぽを入り口にあてて接触感を楽しみ、毛のない穴の周囲にすべらせる。性欲を高めていくための大切な皮膚がたがいに求めあうようにすり寄っていく。ちんぽもぬれている、おめこも受け入れ態勢が十分だ。女が腰をすり寄せてくる。ちんぽを誘い込むかのようだ。すごい女である。いかにもタイミングの良い動きに驚かされる。まさにテクニシャンだ。女の腰の動きにあわせてゆっくり入れると、止まって様子を見る。ここが踏ん張りどころだ。
「いいか」
「いい」
「ちんぽ、入れて欲しいのか」
「ちんぽ、入れて欲しい」
会話を楽しみ、回り道をする。余裕を取り戻して、責めの言葉にも勢いがでてくる。
「ちんぽ、いっぱい入れたんか」
「ちんぽ、いっぱい入れました」
「ちんぽ、好きか」
「ちんぽ、好きです」
「男、好きか」
「男、好き」
「もっと、大きな声を出して見ろ」
男が好き、と言わせて、女を降伏させたように思えた。男が好きなんだ、男なら誰でもいいと。もっと女をなぶりたくなってきて、暴力性が頭を支配する。
「ちんぽ、ちょうだい」「奥まで入れてください」
「つっこんでください、やろ」
「ちんぽ、つっこんでください」
「おちんぽ、と言って見ろ」
「おちんぽ、つっこんでください」
「おちんぽ、つっこまれてこいって言われたやんやろ」
「おちんぽ、つっこまれてこいって、命令されました」
女は自分で高まっていく。しだいに男も我を忘れるほど興奮してしまう。
「奥まで入れてください」
ちんぽをゆっくり、奥まで押し込んでいく。
「あー、あー」とため息をついて反応する。
「奥がいいのか」
「奥にあたるのがいい」「おちんぽ、すごくいいです」
「長くて太い」
女は評価をしながら、深い挿入を味わっている。言葉責めをしているように思ったのにそうではない。煽られているようで、女は男を煽っているのだった。すごい女だ。とても叶わない。正、反、合だ。
「おめこ、いいよ。柔らかくて、包み込まれているようや」
「いいですか、ゆるくないですか」
「ちょうど、ぴったりやね」
「わたしも」「お客さんのおちんぽ、大好きです」
奥まで挿入したままじっとして、肉と肉とが直に接触を楽しみ、ゆっくり動いては、摩擦感も味わう。ここで、出し入れしては発射してしまいそうだ。今までと違うパターンに挑もうとする。
ちんぽは挿入感をたのしみ、頭は言葉責めを続ける。頭でしながら、肉体も交わっている。血液が頭とちんぽに集中している。総動員態勢だ。勝利は目前ではないか。
これまでならの経験だと、このあたりで女は上り詰めて恍惚の顔を示すが、この女はそうではない。なにが違うのか、いきにくいのか、ちょっと自信を失いそうになった。方針転換を考えて実行する。ふつうなら勢いがついて女とともに達するのだが。突撃しそうになってしまうところ、興奮を抑えて、ちんぽを抜く。退却だ。
女が意外な表情を見せる。
「出そうやったから」と言い訳する。なんでと疑問の表情を女が見せる。
「彼はどうしてる」、話題を転換する。
「鍵を持ってるから、部屋で待ってると思いますよ」
「彼とはどうするの」
「玄関でね、裸にしてチェックする」
「それから、どんなことする」
「いきなり入れてきたり、どんな風にしたのか言わされたり」
「ほかにはなにされる」
「縛ったり、たたいたり」
男の頭に血が上っていく。想像というか妄想というか、この女の不可思議な暮らしを思うと目がくらみそうだ。
45分経過したアラームが鳴る。
「あと15分やな」
「片づけもあるし、10分ですかね」
あっという間に時間が過ぎてしまった。惜しい気がする。もっと濃密な時間をつくらなければ。
「10分コースしましょう」
女は股を開いて、どうぞとばかりだ。男にはアナーキーな感情が湧いてきた。
「10分て、なに」
「時間がないときとか、いきなりやってきてね、ぱっとすることしたら、帰っちゃうの」
「ふーん、10分ね。出すだけやな」
「そう、出しに来るの、性欲処理してさっぱりして帰るのね」
男は凶暴な感覚にとらわれて、その感覚のままの言葉を女にぶつけた。あらたなエネルギーが投入されて、戦線拡大する。
「ちんぽ、つっこまれてこいって言われたんやろ、あとで抱いてやるからって」
「そう、男に入れられたあとのおめこに入れるのがいいんですって」
女は狂わない。狂わずに応答している。全く不思議な女である。
アナーキーではなくて、アナーキーな欲望である。この欲望は破壊、混乱をもたらすのではない。より高い性欲を満たすため、心と体を組織しなければならない大事な役割があるからだ。
「おちんぽって叫べ」
「おちんぽ」「おちんぽ」
「もっと大きな声を出せ」
「もういや、なにも言わないでください」女が突然、怒りだす。男はあまりの情勢の変化に、おかしいなと首を傾げながら黙る。
しかたがないから、ちんぽの出し入れに専念すると、発射の感覚がせりあがってくる。
女はおちんぽの動きにあわせるように、息を詰めながら快楽を高めていく。集中しているのだ。
「あーー、あーー」と叫びだして、おめこがぐぐっと動き、収縮する。ほぼ同時に男も射精する。
女は身体をぐたーとさせて、静かになった。
「いったのか」と聞くと、快楽の淵に沈んでいたはずの女がにこっと笑った。どう、満足したと、言っているようだ。絶頂に達していたのではないか、それがすっかり平常に戻って、笑うところは娼婦だ。とても定義しきれない女である。
完敗だ。攻防を繰り返したものの、総括すれば、初めから終わりまで、女のペースだった。しかし、心ゆくまで楽しめたから、悔いはない。
みづくろいしながら「また、会えるかな」と問いかけると「道ですれ違うかも知れませんね」とごまかすのであった。
次の朝、大きなうんこがでた。すっきりした。身体のなかの血が一巡したように思われた。それから、自信がついてきて、女性に声をかけることが出来るようになった。あの女のおかげだ。あのような女がいると思えば、おじいちゃんにも夜更かしが楽しい。


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