この話はつづきです。はじめから読まれる方は「愛し乙女は奴隷する(01)」へ
槙雄の全部が欲しい晶は槙雄のどんな事も受け入れることが出来ると思っている。
もちろん、断言は出来ない。
現に部室に後輩の御手洗さんと一緒に現れた時は、心底、混乱して嫉妬に駆られた。
御手洗さんと話をして偶然であると聞かなければ、その場で形振り構わず槙雄に迫っていただろう。
「美味しい?」
出来上がったハンバーグを黙々と食べている槙雄に晶はそう問い掛けた。
槙雄は黙ってこくりと頷き、再び、ハンバーグを食べ始める。
どうしよう可愛いと晶はそんな槙雄の姿にトキメキを感じてしまう。
帰れとか言ったクセにちゃんと晶の作ったハンバーグを食べる素直じゃない槙雄に晶の胸はキュンキュンするのだ。
女友達から周りから見ても結構面倒くさい男の部類に入ると言われた槙雄だが晶にするとそうでもない。
逆にそんな反応が槙雄らしくて好きだったりする。
ただし、素直な槙雄を見ても自分は同じく可愛いと思うであろう事は否めないがと晶は思った。
結局、槙雄がどんな反応をしようと自分にとってほとんど全てが萌え化するのだと思った。
「ごちそうさま…美味かった」
「うん!えへへっ」
あ、今のは駄目だ。
晶は不意に掛けられた槙雄の素直な言葉に遂に我慢が出来なくなってしまう。
美味かった。
たったそれだけの言葉なのに、晶の心は理性を捨てる覚悟を決めてしまったのである。
今日、予ねてから計画していた件の事を実行しようと晶は決意する。
自分と槙雄の二人しかいない家で、いつかはしようと思って、いつも尻込みをしていた件の計画。
もしかしたら槙雄が困るかもしれないと、時には我慢して取り止めたあの計画。それを実行する。悪いのは自分の理性を奪った槙雄なのだ。
「お風呂…沸いてるけど?」
「ん…ありがと」
自然な流れて言えたかどうか、晶は食器を洗いながら槙雄にお風呂を進めた。
たぶん、大丈夫。槙雄は何の疑問も持たずに立ち上がり、お風呂場まで移動して行く。
洗い物を終えて、少しして晶も槙雄の居るお風呂場まで移動する。
ドア一枚挟んで晶は中の音を聞く。
「うん…入ってる」
確かに槙雄がお風呂に入っている音が聞こえてくる。
ゴクッと晶は唾を飲み込み、静かにドアを開いた。
ジャージャーとシャワーの音とワシャワシャと槙雄が頭を洗う音が耳に入る。
絶好の機会であった。
晶は急いで服を脱ぐとバスタオルを身体に巻き付ける。
やっぱり、いきなり全てを見せるのは恥ずかしいみたいだと自分の心臓の鼓動を聞いて晶は思う。
でも、もう後には引けない。
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