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第10話『クリスタル・ティアーズ 』
ブラのホックを外されたことにより、何を求められているか理解した実可子は器用にブラを外した。
「器用に外すんだよな女子は」
「そうですね。レントゲンの時は外さなければならないし」
クスッと笑いながら答えた実可子の乳房は、抑えるものが無くなったせいで上半身のちょっとした動きを瞬時に伝達した。
薄いピンクのランジェリーは自己主張するかのような乳首の突起を吸収できずにいた。ランジェリー越しに薄く浮かび上がる乳首は小ぶりな乳輪と共に淫らな気配をまったく感じさせなかった。
「寒くないか?」
「なんだか熱いくらいです。。。身体中が火照ってしまって」
「それなら熱を冷まさなければ」
玲はアイスバケットから小さめの氷を摘まむと口に含み実可子の首筋をなぞった。
「あぁ冷たい、でも気持ちいいです」
実可子は一瞬身を竦めた後に仰け反った。首筋には実可子が発する熱によって溶けた氷が一筋の流れになった。
玲は新しい氷の塊を口に含むと、そのまま唇を実可子の唇に重ねると自らの舌を実可子の舌と氷にゆっくりと絡めた。玲と実可子は氷が固体から液体に変わるまでの長い時間を掛けてお互いを貪りあった。
「あぁん玲様、わたしダメになってしまいそうです」
「まだまだだよ。。。めちゃくちゃにされたいんだろ?」
そう言って、玲はアイスバケットから掴んだ大きめの氷の塊をランジェリー越しに薄く浮かび上がる乳首に押し当てた。
「あん」
氷の塊を押し当てられた実可子は短く喘ぎ上半身を震わせると、その震えはショックウェーブのように両方の乳房で振動を増幅さた。
玲は熱で溶け小さくなり始めた氷の塊で、円を描くようにうっすらと浮かぶ乳輪をなぞりはじめた。氷の塊がどんどん小さくなるのに反比例するようにランジェリーの生地は透明度を増し、そして素肌にまとわりつくように張り付いていった。
その場所だけが真夏のスコールに打たれてしまったかのようにびしょびしょに濡れたランジェリーは実可子の乳首を鮮明に際立たせていた。そして、左右の乳首は一層突起を強め固く、大きくなってしまった。
「見てみな、こんなに」
「あぁん玲様、なんかいやらしい」
「そう卑猥だよな、モロ出しより。。。それに芸術的だろ?」
「芸術的?嬉しい」
「実可子自身は?」
「実可子自身?」
「わかっているくせに」
「玲様の意地悪っ。。。熱いものが。。。溢れて。。。自分でもわかるくらいたくさん」
「見せてごらん」
「恥ずかしい」
自らの意思でカウチから立ち上がると実可子はランジェリーの裾に手を伸ばし、ゆっくりと捲り上げる。それはアンサンブル・カーテンコールにより幕が開かれるようだった。
白い太股の付け根に現れたショーツは、さっき外したブラやランジェリーとセットなのだろう。薄いピンクにサイドには花びらの刺繍が施され、大切な実可子の花びらを覆う部分はシルクのような滑らかな生地をしているようだった。中心はまるでマーブル模様であるかのように薄いピンクと深く濃いピンクの混じり合いを見せていた。
「白い肌と濃いピンクのコントラストが眩しい」
「濃いピンク?」
「わかるだろう?薄いピンクが濃いピンクになってしまった理由を」
「恥ずかしい。。。」
「いつから?」
玲は、実可子の瞳を見つめたまま意地悪な質問をした。
「カフェでお話しているときにも、少し溢れてしまったのがわかりました」
一瞬だけ自身で薄いピンクが濃いピンクに変わっていると指摘されてしまった部分に視線を落とし実可子は答えた。
「由紀にMと指摘されて、おれがSと知ったときだろ?」
無言で頷いた実可子に更に意地悪な質問を投げ掛けながら、玲は実可子の手を引き部屋の壁際のライティングデスクの横に立たせた。アームチェアを引き出すと窓際を背に起き直した。
「その椅子に座ってごらん」
実可子を座らせると行儀良く整えた両脚を持ち上げ、左右のアームを跨がせた。
「いい眺めだ。薄いピンクの部分が無くなってる」
アームを跨いだ両足は膝から先が不安定に宙ぶらになり、実可子の両脚は正面から見るとアルファベットのMの文字を型どっていた。
アームチェアに座らせた実可子の背後に廻ると、帯状にしたハンカチで実可子を目隠しした。
「何も見えなくて不安で怖いか?」
「玲様の気配を感じますから怖くありません。それに、不思議と感性が研ぎ澄まされていくみたい」
アイスバケットから小さめの氷を摘まむと口に含み、実可子の正面から首筋に氷を滑らせた。
「ああぁん玲様」
脚をMの形に開かれた実可子は、両手でアームを強く握ったまま上半身を仰け反らせた。そして、その動きは両方の乳首を更に突き出すことになった。それはまるで両方の乳首が玲の唇を求めているようだった。
玲は実可子の体温によって小さく溶けた氷の塊を実可子の口に押し込むと、新たな氷の塊を口にくわえた。
「玲様ぁあ、ああぁん」
玲から口移しされた氷の塊を呑み込むと実可子は甘えた声で喘いだ。
玲が氷の塊を実可子の左の乳首に押し当てると、実可子は両腕で玲の頭を抱え強く引き寄せた。
実可子の柔らかい乳房の感触を感じる玲の耳には、実可子の心臓の鼓動が聞こえるほどだった。
「そろそろ由紀が来る頃かな。こんな姿を見られるのは恥ずかしい?」
「恥ずかしいです。でも見られたい気持ちもあります。だって、玲様がこうしてくださった姿ですから」
「驚くだろうね由紀は」
「はい、驚くと思います」
「じゃあ、もっと驚かせてみようか?」
「えっ?」
実可子の反応に安心し、玲はベッドの上に無造作に置かれた二本のマフラーを手にすると、実可子の足首をアームチェアのアームにきつく縛りつけた。首に巻かれ覚えのある感触を足首に感じた実可子は甘えたような喘ぎ声を溢した。
「ああぁん玲様ぁあ。。。マフラーですね?嬉しい。。。お揃いのマフラー。。。」
「よくわかったね、マフラーだと」
「わかりました。。。大好きなマフラーですから。。。」
そのときアイスバケットの横に置いた玲のブラックベリーがメールの着信を知らせた。
「由紀からのメールだ。電話しなかったのは気を効かせたからかな?」
「えっなぜですか?」
「おれと実可子がセックスしていると思っているんだろ、たぶん。『玲様、ロビーに来ました。お部屋の番号を教えてください。由紀』だって」
「そうですね、玲様が全裸でロビーに行けないと思っているんですね」
「迎えに行って来る」
そう言うと玲は、クローゼットに行き、バスローブの帯だけを取り実可子が座るアームチェアの背後に回り、両手首を後ろ手に縛り上げた。
「あぁん玲様ぁあ。わたし淫らに見えますか?」
「実可子の白い肌には赤い縄の方が映えると思うけど、仕方ないな。今の姿も綺麗だよ」
「嬉しい」
「じゃあ、行って来るよ」
三十三階から十五階のロビーフロアまではノンストップだった。雪が降る深夜の時間帯は人の動きがないのだろうと思った。エレベーターの扉が開くと目の前に眼鏡を掛けた小柄な少女が立っているのが見えた。
「玲様ぁあ。迎えに来てくださったのですね」
「由紀、いつもと雰囲気が違って驚いた」
「眼鏡のせいですかね?普段はコンタクトレンズなので」
スーツを着こなし、ハイヒールで闊歩するキャリアウーマンの姿はなくカジュアルな装いにブーツ姿の由紀は普段より若く見えた。
エレベーターを降りることなく由紀を迎えた玲は由紀に尋ねた。
「由紀は、おれと実可子がセックスでもしてると思っただろ?だから、電話じゃなくメール。それに部屋まで来るって」
「半々です。もしかしたらとも思いました」
「それなのに、よく部屋に来るって行ったよな。そういう趣味があるのか?」
「女の子向けのエッチなAVもあるんですよ。画面で観るか、目の前で見るかの違いはありますけど。。。。ちょっとだけ関心ありました」
「女の子向けのAV?由紀はそんなの見ているんだ?」
「だめですか?」
「いや、だめじゃないけど。どんなのを観てるんだ?」
「それは内緒です」
エレベーターはノンストップで三十三階に到着した。
「右に行って、廊下を左に曲がった正面の部屋だよ」
エレベーターを降りて、少し緊張した素振りを見せ始めた由紀の背中をそっと押しながら玲が言った。
「玲様、ドキドキしてます。落ち着くように『いい子いい子』してください」
並んで歩きながら由紀の願いを叶えると、直ぐに部屋の扉の前に着いた。玲がカードキーを差し込み扉を開くと、由紀は不思議そうに尋ねた。
「あれっ実可子さんは居ないんですか?」
実可子が内側から扉を開くと思っていたのに玲がカードキーを使ってドアロックを解除したことで疑問を感じたのだろう。扉を開くながら由紀の疑問を察した玲が優しく答えた。
「中に居るよ。中で由紀のことを待ってる」
由紀は大きく深呼吸をすると玲に続いて部屋に入った。
「由紀が来てくれたよ」
実可子は緊張からか返事をすることは出来なかったが、玲はそのままアームチェアに拘束された実可子の前に立った。
玲に続いた由紀は実可子の姿を見て言葉を失なっていた。
「由紀、驚いた?」
無言で頷きながら実可子を凝視する由紀の視線は玲に向けられることはなかった。実可子の姿に釘付けの由紀の視線は、嫌悪感はまったくなく、どちらかと言えば羨望やあるいは嫉妬さえも感じさせるものだった。
「実可子さん。。。お綺麗です」
そう言いながら実可子の全身に視線を注いだ。目隠しされた顔、ランジェリー越しに浮かび上がった胸元、溢れる蜜を隠せないほどの実可子自身、そしてマフラーで縛られた足首、由紀は実可子の隠された表情を見たかった。
「とても素敵です」
「あぁん、由紀ちゃん恥ずかしい。でも見てくれて嬉しい」
「玲様、目隠し外していいですか?実可子さんの表情が見たいです」
「いいよ、外してあげて」
由紀は実可子の後ろに回り込むとハンカチをほどき、また正面に戻って実可子の顔をまじまじと見つめた。
由紀と玲が見たのは、間接照明の柔らかく暖かい光により水晶のような輝きを見せた実可子の涙の滴だった。
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