「ただいま」
ある夜、仕事帰りに実家に寄った時のこと
実家にはもう両親も亡くなり兄夫婦が住んでいるだけだが仏壇に手を合わせに来る
山城孝之は玄関の扉を開けるとリビングを窺いながら帰宅の挨拶をするが返事は無かった
静まり返った室内には人の気配も感じられなかった、孝之は不用心だなぁと思いながらも実家だからと兄夫婦の姿を探す
浴室に灯りが見えて孝之は声を掛けようと近付き声を掛けるタイミングを逃してしまう
それは洗面所に兄嫁の服が折り畳まれ置かれていたからだった
兄嫁の恵子は孝之にとって所謂、妄想のオナペットで理想に限りなく近い女性だった
気が付けば孝之の手には恵子のショーツが…微かな湿り気を帯びてしっとりと指先にまとわりつく感触に胸が早鐘を打つ
まだ時間が経っていないのか温もりも汗臭さも感じられる
その時、恵子が「誰?!」と立ち上がり浴室のドアの磨りガラスにぼんやりと恵子の裸体が見えた
「孝之」
「入った所だから待ってて…」
「ちょっと寄っただけだから帰るよ…明日も早いから…」
それから幾日して僕がそんな事も忘れかけた頃、仕事をしていると恵子さんから電話が掛かってきた
仕事中だから長話も出来ずに電話を切ったが僕の頭には意味ありげな恵子さんの声が残っていつまでも艶かしい声が頭を駆け巡った
『孝之さん話があるの…ホテルにいるの…来て』
詳細はわからないが仕事が終わると急いでホテルに駆けつけた
『どうしたの?お姉さんから電話って珍しいね…』
恵子さんから意外な想定外の言葉が飛び出した
兄の浮気が原因で夫婦喧嘩になり家を飛び出してホテルに泊まり宿泊費が無くなりそうだと、長い時間話をしていたが勿論、僕は『帰ってもう一度、兄貴と話し合ったら…』
『取り敢えず今は手持ちしか無いけど…明日、朝一で銀行で下ろすからさぁ…心配しなくて良いよ』
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