ほとばしる欲情と迷走する魂 10_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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ほとばしる欲情と迷走する魂 10

15-06-14 09:49

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「ほとばしる欲情と迷走する魂 1」へ

「ぐゎあああ~、くわあああ~」
一戦終え、静寂の中に男のイビキだけが鳴り響く。
「ムードも何もあったもんじゃないわね。少しあっちで休む?」
そう言うとママはグラス2つを片手に持って、
蒟蒻の様に力の抜けた千穂の肩を抱きかかえた。

テーブル席の赤いソファに千穂を少し斜めに座らせると、
後ろからそっと包み込むように抱きしめた。
「そう言えば同じ名前ね。千穂ちゃん」
背中には自分と同じ、ふくよかな胸が当るのがわかる。
信じたくはないが、千穂は改めて先程の快感が同性の手によって
導かれたものだということに動揺を隠せなかった。
しかもあんなに乱れて、何度も何度も昇りつめたのだ。
起こった現実にまだ頭がついていけず、
ただ茫然とだるい体をママにもたれかかるしかなかった。
「女は初めて?」
「・・・当然でしょ・・・」
千穂は無表情に遠くを見るような目で小さく答えた。
「フフっ、意外と初心なのね、あなたって。
・・・初めて見た時から欲しいと感じたわ。
私の食指が動くってことは、あなたも多少なりとも
こちら側の素質があるってことよ。
私、そういう勘だけはすごく働くの」
「それって、私にレズっ気があるってことですか?
そんなはずありません。だって今まで女の人を
好きになったことなんて一度もないもの」
千穂は驚いたように振り返って反論した。
「今まではね。でも私に言わせれば20年、21年
気付かずに生活してきた女性なんて山ほどいるわよ。
あなただってさっきはどうだった?
私の指に素晴らしい感度で応えてくれた」
自分の痴態を思い起こして急に恥ずかしくなり、
千穂は顔を背けた。
するとママの鼻先をスッと長いストレートヘアーがかすめた。
それをきっかけにママは丁寧に髪を左手で解かし始め、
千穂の指に女を知り尽くした魔法のような指を絡ませながら、
妖しげな笑みを浮かべて言った。
「ねえ、そんなに知りたいなら、今から私の家にいらっしゃい。
朝までたっぷりと本当のあなたをわからせてあげるから」
「・・・」
千穂は思わずゴクリと唾を飲んで絡まる右手を握ってしまった。
その言葉に興奮し期待する自分が心の片隅にいた。

「千穂・・・ちゃん・・・何処・・行くの?」
突然重さんが起き上がって、寝言にしてはタイミングドンピシャで、
緊迫する二人に割って入った。
またすぐカウンターに臥してうるさいイビキをかき始めたが、
二人、特に千穂にとってはすっかりと糸が切れてしまった。
「あの、私やっぱり今日はこれで・・・」
「・・・そ~お、残念ね。まあ、無理にとは言わないわ。
でも行き詰って新しい自分を見つけたくなった時には、
またいつでもいらっしゃい」
千穂はドキドキしながら店を出ると、ようやく帰路についた。

つづき「ほとばしる欲情と迷走する魂 11」へ


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