毒牙:序章_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

ホームページ 戻る 

毒牙:序章

15-06-14 09:53

「すみませんが、社員証をご提示願えますか?」
それが美沙と大石の出逢いだった。

専務の大石は普段は顔パスで受付を通っていた。美沙は通常は総務部勤務だが、この日は受付が人手不足で臨時で駆り出されていた為、じぶんの前を通ろうとした男が専務だとは気づかなかったのだ。
隣の受付嬢がお詫びをした。大石は笑って
「なかなか頼もしい受付だな。本来なら僕も社員証を見せなければここを通る事は出来ない決まりなんだ。彼女はいい仕事をしてるよ。」
美沙はホッとした。
「紳士的ないい人だなぁ。こんな人の下で仕事が出来ればやりがいもあるんだろうなぁ。」
これが美沙の大石に対する第一印象だった。

数日後…

終業時間になり帰宅しようと美沙は会社を出た。しばらく歩くと後ろからクラクションが聞こえた。振り返ると運転席で手を振る大石が見えた。
「これから何か用事でも?」
「いえ、家に帰ります。」
「それは良かった。良かったらちょっと付き合ってくれないかな?友達にパーティーに誘われてるんだけど、男1人だとねぇ、華がないからついて来てくれないかな?」
「私なんかでいいんですか?」
「駄目なら誘わないでしょ?」
「でもパーティーって言う格好してません。」
「ああ、それは道中で調達すればいいよ。僕が無理矢理誘うんだから、気にしなくていいよ。暇つぶしだと思って誘われてくれないかな?」
「どうなっても知りませんよ?マナーとかもよくわからないし…」
「大丈夫だから。ほら、乗って乗って。」
美沙は半ば無理矢理に誘われるままに車に乗り込んだ。

高級洋服店に車が滑り込んだ。美沙は今まで見た事がないような豪華なドレスに目を丸くする。
「高いんだろうなあ。私にこんなの似合うのかな?」
そう思いながら店内を見渡す。店長らしき女性と相談している大石。1枚の赤いドレスを美沙に手渡した。
「着てみて。きっと似合うよ。」
「うわあ、派手だなぁ。こんなの本当に似合うの??」
戸惑いつつ、大石と話していた女性と共に別室に入った。
「体のラインが出るから今着てる下着は外してね。ドレスにカップが付いてるからブラはなしで。ショーツはそこにあるからそれを付けてね。」
「これが下着??」
横が細い紐のTバックを見て美沙は戸惑ったが、ノーパンよりましか、とショーツを付け、ドレスを身に纏った。
「やだ、恥ずかしい。何か露出がすごいんだけど…」
「このままだとちょっとおかしいけど、髪とかメイクとかちゃんとしたら大丈夫。土台がいいからすごくいい女になるよ」
そんな事を言いながら、メイクをする女性。
「よし、出来上がり。」
女性と共に大石の前に出る。
「おお、いいねぇ。やっぱり思った通りだ。いい女が出来上がったね。」
大石は目を細めて少し恥ずかしがる美沙を見る。
「これなら皆に自慢できるな。」

パーティー会場に着くと、大石は美沙に
「堂々と振る舞うんだよ。細かな事は気にしなくていいから。美沙ちゃんは十分いい女だから自信持ってね。」
パーティーは企業の重役級が集まるもので美沙にとっては何もかもに戸惑った。

「大石さん、ご無沙汰ですね。」
恰幅のいい男が声をかけた。そして、何やらヒソヒソと話し出した。
「えらく美人を連れてますね。もしかして今の?」
「いえいえ、うちの会社の子でね。無理矢理ついて来てもらったんですよ。」
「それじゃ、まだ?」
「ですね。」
「大石さんに目を付けられたらもう逃げられないのにね。かわいそうに…でもまあ、楽しみにしてますよ。近いうちに。」

美沙はまだ気が付いていなかったのだ。自分が大石の毒牙にかかっている事を。これから起こる地獄のような苦痛と極楽のような快楽を…


コメント
お名前:
気持ち:

コード:

お知らせ

なし

小説を検索