ピアノコンチェルト第3楽章『アレグロ・スケルツァンド』_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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ピアノコンチェルト第3楽章『アレグロ・スケルツァンド』

15-06-14 10:05

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「ピアノコンチェルト第1楽章『モデラート』」へ

街の外れの古い映画館で、いつの間にかオナニーという行為に導かれてしまったあや。しかも、その口には自らの蜜が絡まった男の指先を含んでいる。あやと男を囲む座席に観客がいない訳ではない。特に後列の観客は映画のストーリーとリンクするかのように繰り広げられる出来事に何かを感じているかも知れない。座席ひとつ分あけて目の前に見えた二つの頭が、今やぶつかるほど至近距離にある。

あやは、耳許で囁かれる男の言葉が現実のものなのか映画のセリフなのか解らなくなるほど、自らの行為に没頭していた。

「感じてる?周りに人がたくさんいるのに。。。。」

あやは、返事をする代わりに男の指先を強く吸った。男はあやの口から指先を抜くとあやに身体を預けるように少し左に傾けると、右手の親指あやのクリトリスに回転運動を加えながら、中指を深く沈めた。

『初めてあった男に。。。こんな恥ずかしいことをされて。。。』

あやは、意識が遠退きそうな意識の中で自分の大胆な行動を考える。男に対する嫌悪感も、自分に対する嫌悪感や罪悪感もなかった。

『あなたは、こうなることを予測していたの?それとも、こうなることを望んでいたの?』

自問自答をすること自体が、より自らの快感に繋がっている気がした。

やがて、クリトリスへの回転運動とシンクロした乳首への感覚は、乳房全体を包まれる感覚に変わっていく。柔らかく、そしてまるで乱暴に鷲掴みされれように強く、指の間で突起した乳首を強く挟まれながら。

耳に男の熱い吐息を感じると、耳たぶに歯が立てられる軽い痛みを感じる。声を漏らしてはいけない
と思うと余計に感じてしまう。あやは、右の手のひらで自身の口を塞ぐと、中指に自らの歯を立てる。男の指先の動きに時折身体を仰け反らせてしまう。耳たぶと中指に感じる痛みすら脳とクリトリスへ直接信号を送っているかのように。

目を開けていることができない。スクリーンでどんなシーンが繰り広げられているか解らない。それでも主人公がオナニーで切ない喘ぎ声を上げているのは、館内スピカーの大音響から伝わってくる。まるで、あや自身の喘ぎ声が脳の中で鳴り響いているかのように。

「我慢しなくていいよ。。。声を出しても。いってごらん」

その言葉にあやは一瞬戸惑う。

『ああぁん、声を出してしまいたい。。。。でも、こんな場所で。。。』

男の言葉に反応し身体を仰け反らせたあやの反応を楽しむかのように、男の指先の動きが加速される。クリトリスを弄ぶ親指は激しい回転運動のスピードを上げ、クレバスを押し分けて浸入する中指は更に奥深くを目指して進む。

「おれの。。。。どうなってる?確かめてごらん」

あやは、口を塞ぐ右手を下げ男の位置を確認してみる。チノクロスの生地の感触を通し、固く熱いものを手のひらで感じる。指先でなぞると男の分身の形がはっきりとわかる。

『ああぁん、固い。。。嬉しい、わたしのためにこんに。。。。』

あやの心の声を聞いたかのように男は乳房を強く鷲掴みにすると、その左手を離しあやの右手に被せる。男の右手は一瞬動きを止めると、溢れる蜜を絡めた小指を花びらのようなあやのアナルに刺し入れる。クリトリスに回転運動を与えていた親指はその動きを止め蜜が溢れたところへ。

『もうだめ。。。。壊れてしまう。。。。』

ほんの少し残った理性が喘ぎ声を抑えるが、脳はあやに腰を突き出すことを指示したのか、男の小指は更に奥深くに入り、壁を挟んで親指と輪を作る。

あやも男も映画のストーリーは解らなくなっていた。スクリーンでは中年の男が奴隷を解放し部屋を出るところだった。残された奴隷と奴隷に恋をした男の会話が始まる。

「もう映画が終わりそう。。。感じてくれたかな?」

あやの耳許で男が囁く。あやは、男を見ると声も出せずに、頷きながら微笑みを見せる。

「楽しかった、ありがとう。もう仕度しないと。。。」

映画のエンドロールが映しだされる中で、あやはブラを元の位置に戻し終えると、自らが腰を浮かせて脱がすのを手伝ったストッキングとパンティを引き上げた。

「この後、少し話をしない?」

初めて会った見知らぬ男によってオナニーに導かれ、更に何度も快感の波を迎えてしまった淫らな顔を見られるのは恥ずかしい。

「ごめんなさい、明日の朝早いので帰ります」

男が微笑んで頷くのを確認するとエンドロールが続く中、暗いままの映画館の出口に向かった。トイレに立ち寄り下着を整え直そうとも思ったが、それでは明るいロビーで男と鉢合わせになる可能性がある。それより、一刻も早く家に帰りたいと思った。

帰りの地下鉄は意識が朦朧としていた。周りの乗客にはほろ酔いしている女に見えているのかも知れない。それより気掛かりだったのは自らが発しているかも知れない淫乱な雌の匂いだった。幸い隣の駅で乗り込んで来た飲み会帰りのサラリーマンのグループの発するアルコールの匂いや水商売の女たちが発する強めの香水の匂いがカバーしてくれた。

家に到着するとバッグと買い物の袋を無造作にテーブルに置くと、冷蔵庫をきミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。喉が渇いていたため500mlボトルの半分を一気に飲み干す。全身に水分が回る感覚が心地良かった。先程の映画館での出来事がまるで夢の中での出来事に感じ初めていた。

ふとテーブルに置かれたファッション誌が目に入った。朝買ったその雑誌のページの中程には見覚えのないメモ書きが挟み込まれていた。

『思い出?それとも、きっかけ?』

薄い水色のポストイットに青いインクのペンで書かれたメモにはブラックベリーのドメインを持つメールアドレスが書かれていた。

『いつの間に?身だしなみを整えているときね。。。』

夢から引き戻された現実は、一枚のメモによって再度夢の中に戻されてしまった。あやは沸き上がる感情を抑えることが出来なくなってしまった。ベッドルームに行くとニットの上下を乱暴にベッドに投げ捨て、姿見の前に椅子を置いた。薄手のニットのセーターを脱ぐと下着姿になる。特にパンティは映画館の余韻を残したままだった。。。。鏡でも溢れた蜜の洪水がはっきりと確認できるほどの余韻を残していた。

あやの、身体にも記憶と余韻が残ったままだった。初めて会った見知らぬ男によって思いもよらず導かれたオナニーも、男の両手で弄ばれた身体に残る感覚をまるでリプレイするかのように自らの両手で再現してしまった。今度は目を閉じることもなく、鏡の中の自身をしっかりと見詰めながら。。。。映画館のスクリーンに映る主人公を見るように。

身体を駆け回るあやの指先、それはまるで、『アレグロ・スケルツァンド』、速く戯れるかのような動きだった。

第3楽章『アレグロ・スケルツァンド』完

つづき「ピアノコンチェルト第3楽章特別編『アジタート』」へ


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