この話はつづきです。はじめから読まれる方は「メタルスティック(1)」へ
真由子には同い年の彼氏がいる。同じ高校で二年の時に付き合い始めてずっと彼一筋である。初体験は三年の夏で、その時積極的に求めたのは真由子であった。
彼から告白されて交際を始めて一年間は、セックスへの興味、期待、怖さなど、もろもろの想いが日に日に膨らんでいくのが自分でもわかっていたものの、小さなときめきとして自制の中でまだ硬い蕾のままだった。キスをして、彼の手が胸に触れてくると、もわっと快感が湧いてきて、身を任せたくなることもあったが、不意に制御が働いてその手をさりげなく振り払った。
(いつかは…)と漠然と思い、結ばれるのがいつのことなのかわからないけれど、(まだ早い…)自分に言い聞かせる毎日であった。
新芽が弾けたのは偶然目の当たりにした兄のセックスである。両親が日帰りのバスツアーにでかけた日曜日のこと、帰りは遅くなるから夕飯は自分たちで食べてと言われていたので、真由子もゆっくりデートを楽しもうと思っていた。ところがお昼を食べている時に彼のお祖母さんが亡くなったと連絡が入って止む無く別れたのである。どうしようかと考えたが、友達を呼び出すにも時間が中途半端だし、やりかけのレポートでも完成させようかという気になって帰宅することにした。思えば前夜、「何時頃に帰るんだ?」と兄が何度か訊いてきたことを憶えている。気にも留めずに、
「たぶん夜になる」と答えたのだが、兄は彼女を家に連れ込むつもりだったのだ。そんなことは想像もしない。
玄関の鍵を開けた時に奇妙な声が聞こえて、真由子は動きを止めた。苦しそうな女の呻き声。
「あうう…あうう…」
そして絞り出すように、
「ああ…だめよ…誰か来たら困る…」
「大丈夫、夜まで帰って来ないよ」
「ホテルの方がいいわ。落ち着かない…」
「たまには違った雰囲気もいいよ。俺の家で美香を抱く。昂奮するよ」
「それは、あたしもそうだけど…あう、声が出ちゃう…」
「いいよ。だけど大声はだめだぞ」
「あうん、そんなことすると我慢できない」
高鳴る自分動悸を聴きながらそっとドアを開け、静かに閉めた。
リビングのドアはガラス戸で、玄関から素通しで中が見える。腰を屈めて近寄った。
(!……)
後ろ向きの兄がソファで脚を開いた女の股に顔を埋めている。
「ああ、感じる、ああ」
息も絶え絶えの女の声。乳房も露になっていて波打って悶えていた。
(アソコに口をつけてるんだ…)
そのあられもない淫らな光景に驚いたのはもちろんだが、それよりも自分の局部の変化に慌てた。まるで失禁したように温かい湿り気が滲み出てきたのである。じわっと、はっきり出てくるのが感覚され、同時に熱を帯び、疼いた。セックスのことを考えて潤うことはあったがこんな経験は初めてだった。
さらに強烈な行為が展開された。兄が立ち上がり、
(あ!すごい…)
思わず息を呑んだ。反り返ったペニスが天を向いている。勃起した状態はもちろん、生の大人のペニスを目にするのは初めてである。圧倒された。
(あれを、挿れる…)あんな大きなモノを……。いつの間にかガラス戸に顔を近づけていて、すぐに壁に半身を隠した。
女が起き上った。兄が上になっていよいよなのかと思っていたので、どうするのか見ていると、女はペニスを握り、兄を見上げて妖しく笑った。
(ああ、あれだ…)
口で…。知識はあったが、本当にぱっくり咥えるとは……。
女は恍惚と目を閉じ、だが顔を前後に動かし、あるいは左右に振り、兄の尻を撫でまわした。
「ああ、感じるよ」
「おいしい…」
ぺろぺろと舐めながら女は微笑んだ。
(おいしい?)
味があるのか?真由子は本気で考えたものだ。
やがて床に仰向けになった女が脚を開いて膝を抱える姿勢をとった。兄が膝をついてにじり寄った。手を添えて女の股に宛がい、重なった。
「あううう」
局部は見えないが挿入されたとわかった。
兄の腰が動き始め、女がのけ反って顔を振り出した。
「中に出さないで」
「わかってる…」
(あのペニスが入ってるんだ…)
気がつくと自分の秘部に手が触れていた。ぬるぬるである。(ここに…)あんな大きなものが……。自分では指しか入らないように思える。
高鳴る動悸。彼のものが自分を貫く場面が頭に描かれておかしくなっていく。ずきずきと疼く割れ目。
「くう!いく!」
兄が体を起こして前のめりになって唸った。精液が女の腹のあたりに飛び散ったのが見えた。真由子は後ずさりしながら靴を手に裸足のまま玄関を出た。
つづき「メタルスティック(3)」へ
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