麻莉子[11]_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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麻莉子[11]

15-06-14 10:18

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「麻莉子[1]」へ

鍋にお湯を沸かし、パスタを茹で、フライパンで具を炒める。そしていよいよサラダに取りかかろうというところで、背後に人の気配があった。

「毒でも盛られたら洒落にならないからね」

「そんなことしない」

「なら安心だ」

そして彼は私の陰に身を潜め、何やらごそごそと始めた。

「その包丁で僕を刺すことだってできるのに、何故やらない?」

「あなたとは違うから」

振り返らず、野菜を刻みながら私はそう答えた。

「賢いのか、そうじゃないのか、君という人がよくわからないな」

「あたしのことなら何でも知ってるんでしょ?」

「時に女性は化けるからね」

「人を悪霊みたいに言わないで」

「穏やかじゃないな」

このまま会話を続けていてもメリットがなさそうだったので、私は黙って包丁を振った。すると自分の両足首に手で掴まれた感触があり、それが脹ら脛(ふくらはぎ)を通過して、膝の先の太ももまで到達すると、さらに上ってお尻の肉をまるく撫でてきた。
気にせず私は手元の作業に集中した。その直後に、お尻の穴に何かを塗られる感覚があった。生き物が這っているようにも思える。
不審に思ってそちらを見下ろせば、そこに彼の頭髪が見えていた。私のお尻の割れ目に、彼の顔面が密着していたのだ。

「夜食ができるまでの暇潰しさ」

それだけ告げると彼はまたクンニリングスを続行した。生温かい舌の弾力とか、フェザータッチのような悩ましい動きで、女の割れ目の奥にある二つの穴を舐めまわされる。
私が声を漏らすと、その動きは熱を上げてどんどん速くなる。
べちょべちょ──と湿気った音とともに、キッチンの床には小さな水溜まりができていく。

「甘い蜜がまた垂れてきたよ。いけない子だ。顔は綺麗で大人しそうなのに、こっちはぜんぜん大人しくないじゃないか」

水を含んだような声でそう言って、彼は私の膣に異物を突っ込んだ。

「……あうううん、……はうううん」

それは上下して私の内臓を狂わせた。その青い異物が胡瓜だと知り、そんなもので悦んでしまう自分の体を恨めしく思った。
愛液がおりものの塊になって落ちていく。胡瓜を飲み込む私の結合部分を堪能しながら、彼はひたすらおなじ行為をくり返す。
それが茄子に代わっても飽きることなく、やがてはドレッシングの容器までも入れられ、シェイクによって油と調味液がうまく混ざり合った頃、私はぐったりするほど絶頂して萎えた。

彼が夜食を終えるまでのあいだ、私は食卓のそばで自慰行為をやらされていた。ピンクローターで胸を刺激し、バイブレーターで局部を掻きあさる、それが朝丘の指示だった。
乾電池の寿命が長い分だけ、私の体は快楽の波のうねりに飲み込まれていく。

「ローターはどこを刺激しているのかな?」

「……乳首……です……うう」

「それじゃあ、バイブはどこを慰めている?」

「……クリ……ト……リス……うんん」

「それと?」

「……お……まん……こ……はあ……あっ」

一問一答が子宮に響く。

「僕のおかげで、君もオナニーが好きな女性になったようだね」

「……だめっ……ですかっ?……オナニーを……好きになっちゃ、……あん逝くっ、あっああっ、まだ逝かな……ああ……あ、……っ、……っ」

一人暮らしの女性の部屋を突然訪れた客、その男をもてなすかたちで、私はおもちゃを手放して果てた。
パスタを茹でた匂いがしていた。
アパートのそばを走っていく車の音と、スクーターの音が交差して聞こえる。

「もうすぐ夜が明ける」

空っぽになった皿を前に、朝丘拓実が小声で言った。
日常生活ではあまり使わない音域の声を出したせいか、私は返事もできないくらい喉をすり減らし、彼のことをただぼんやりと眺めていた。

「君が勤めている会社、スワローテイルとか言ったかな」

男が何事かを喋ったので、私は適当に相槌を打った。

「そこの子会社のポニーテイルが扱っている小型モーターと、うちの工場で精製しているエラストマー……これはシリコーン樹脂の一種と思ってもらってかまわないが、その二つが融合して生まれたのが、いま君の目の前にあるバイブレーターというわけさ。少しは勉強になっただろう?」

今度はしっかり聞こえていたが、私は敢えて聞こえないふりをした。雑学で人が豊かになれるとは思えない。

「この素材が膣にいちばんフィットするらしくてね、自分の作った物で女性が活き活きと行為に耽る姿を想像すると、嫌な仕事とは言えないわけさ」

彼は同意を求める目を私に向けてきた。私の視線はバイブレーターに向く。
私はこんな物で彼と繋がっていたのか──と思うと、たまらなく泣けてくるのだった。しかし今度は涙をこぼさなかった。

「アニメ声というか、ロリータボイスというか、君の喘ぎ声もなかなか萌えたよ。あのハーブだって偽物だったのに、よくもまあ、あんな声が出るものだな」

「……嘘」

「女性の自然な生理現象だよ。そんなに恥ずかしがることはない」

「……媚薬じゃ……なかったの?」

「ほんとうの媚薬を使ったら、君はどうなる?」

私は思わず息を飲んだ。どうなるかはだいたい想像できる。

「そんなことより、夕べの君の行動はちょっと計算外だったよ」

「……別にあたしは何もしてないけど」

「残業だよ」

「残業?」

「僕はてっきり、夕べも君は残業をして帰宅するつもりだと思っていた。けど君は定時で退社した。だから僕は仲間に声をかけて時間稼ぎをさせたのさ」

「何のために?」

「この部屋に侵入するためさ。合い鍵くらいは何とでもなるからね。後はベッドの下に潜り込んで、君が帰るのを待てばいい。タネを明かせば単純だろう?」

夕べ、私の周辺にいた彼らの役割がようやくわかり、私はまた頭に血が上ってくるのを感じた。
定時に退社してそのまま帰宅してさえいれば、こんなことにはならなかったはずなのだ。

「どんなことをされたって、玲奈の居場所は教えないから」

「強気な発言だな。それなら望み通り、また相手をしてやるよ。君が済んだら、次は君の友達の歩美ちゃんをレイプする予定だからね。新婚の花嫁はどんな味がするのか、いまから楽しみだよ」

「……そんなの……だめ」

彼なら本気でやりかねないと思い、私は私を抱きしめて縮こまった。妹や友人を売るくらいなら、自分がいくらでも身代わりになってやる気持ちでいた。

「コンドームやピルなんてものは期待するなよ」
と言うと朝丘は私の両脚を力で広げ、だらしなく濡れほぐれた女性器に狙い打ちした。

つづき「麻莉子[終]」へ


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