この話はつづきです。はじめから読まれる方は「堕ちた天使 1」へ
気だるさ漂う昼下がり、テレビの画面からはダブル不倫の愛に苦しむ
女性が主人公のドラマが流れていた。
丁度午後の空いた時間を過ごす主婦をターゲットにしたそのドラマは、
あまり有名でない女優が主人公を演ずるも、そのエロティックで過激な
ストーリーが世の中年女性達の話題を呼んでいた。
「ああっ」
久美子はソファに寝そべりながら薬指で露になっている真紅の真珠を
捏ね繰り回していた。
今週はこの時間毎日のようにそのドラマを見るとつい指が
アソコに伸びて一人慰める日々が続いていた。
「真由・・・はあ~」
ドラマでは男と女の不倫だが、愛と官能の狭間で揺れ動く女の心を
過激な描写で映し出してるところが真由との情事を連想させ、
久美子を異常に興奮させた。
真由が学校での情事を提案をしてから、体がどうにも疼いてしまって鎮まらない。
その日を、その時間をこれまで以上に期待してしまっている自分がいた。
「フン~、フン~、ンフンンン~~っ」
左手で乳房を揉み締めながら、クリトリスに神経を集中させる。
テレビの画は主人公の女性がベッドの中で不倫相手に抱き締められながら
恍惚の表情を浮かべている。
愛してはいけない人にどうしようもなく溺れていくそのエロティックな表情に、
真由の指に否応も無く蕩けてしまう自分を重ね合わせるように感情移入して、
久美子は絶頂に向かってより薬指の動きを速めていった。
「はあ・・・ああ・・ああ~~」
薬指は人差し指や中指ほど思うように器用に動かせない分、意外性を呼び、
他人に触られている感が強まるのだ。
そうやって敏感になった真珠を真由の魔法のような指で擦られていることを
思いながら、久美子は達した。
「ふう~」
ぼんやりとした時が過ぎ、溜息が漏れる。
テレビの画面は明るい芸能ニュースを報じる番組に変わっていた。
不毛な愛に溺れる自分を言いようも無い不安がいつも覆う。
それでいて時間が経てば、あの時以来急に性欲が増した四十女の体は
真由を欲して疼き、何食わぬ顔で夫や娘を裏切ってホテルで密会し、
意地悪な愛の言葉に心踊らせ舞い上がるのだ。
久美子はこんな時間がいつまでも続くわけないことを重々承知していた。
「扶美、今週授業参観あるでしょ。お母さん行かないって言ってたけど
折角だから顔出してみようと思うの」
久美子は扶美の部屋に入ると強張った笑顔でそう告げた。
驚いたのは扶美である。
とんでもないといった表情で猛反対した。
「冗談でしょ。マジ高校生にもなって子供の授業見に来る親なんていないよ。
お願いだから来ないで。私皆に笑われちゃうよ」
久美子は思いもよらぬ娘の抵抗に焦った。
邪な考えで急に行くと言ったものの、そんな久美子の思惑など扶美が
知るはずもなく、そこまで拒否されようとは思ってもいなかったのだ。
何としてでも学校で真由に会いたいという思いと、
そこまで親を煙たがらなくてもいいじゃないという気持ちから、
久美子も引っ込みがつかなくなった。
「誰のおかげで普通に高校に行けてると思ってるの。
子供は何でもはいはいと親の言う事をきいてればいいの」
「いつまでも子供扱いしないでよ。お母さんなんて大っ嫌い」
親子喧嘩はエスカレートし、終には下の階にいた父親の達夫が
仲裁に入る程だった。
達夫は冷静だった。
「母さんに何て口のきき方だ。れっきとした学校の行事なんだから
扶美が恥ずかしがるのがおかしい。それにずっと
付きっきりでいるってわけじゃないんだから、
友達の目を気にする程でもないだろ。
ちゃんと母さんに謝りなさい」
扶美はシュンとなって不満そうに黙り込んだ。
「でも母さんも母さんだぞ。母親が売り言葉に買い言葉みたく、
目くじら立てて怒り散らしてどうする?
最近のお前変だぞ。
ボーっとしてたかと思ったら、急に浮かれだしたり。
今も子供の喧嘩みたいにむきになって。
しっかりしてくれよ」
「だって・・・」
久美子はそれ以上何も言い返せなかった。
確かに自分でも浮かれ過ぎていたと反省した。
真由とのことで、関係ない娘まで巻き込んで当り散らしてしまった。
真由のことばかり考えていて、家族に丸っきり目を向けていなかった自分を恥じた。
悪いのは年甲斐も無く若い娘に熱を上げて浮かれている自分なのに。
その夜、久美子は久しぶりに夫の横に寄り添い迫った。
実は夫に抱かれるのは真由との関係を持ってから初めてだった。
夫とのSEXで自分の体がどのように反応するのか、知るのが怖かったのだ。
だから久美子の方から誘うこともなかったし、
ムラムラした達夫が迫ってきても適当な理由をつけて断っていた。
だが今日の一件で真由の事はそれはそれとして、夫や娘に対しては
逃げずにもっと向き合わないといけないと思ったのだ。
それだから達夫は久しぶりの妻とのSEXに発奮し、
いつも以上に情熱的に久美子を抱いた。
だが、夫が情熱的であればある程、心の何処かで本当は
受け入れたくなかった事実が久美子の胸を深く抉った。
彼女の体はもう夫では燃え上がらなかったのだ。
達夫の愛撫でもある程度の快感は得られ、アソコも濡れた。
だから男根もすんなりと入ったし、それなりに気持ちも良かった。
だが興奮はしなかった。
心が濡れないのだ。
女の本当の快楽とその奥深さを知ってしまった今では
どうしても夫との、いや男とのSEXでは体が芯から燃え上がらないのだ。
達夫が一生懸命汗を流しながら愛してくれているのを
どこか冷めた目で見ている自分が罪悪感でいたたまれなかった。
達夫が寝静まった後、悶々とした体で改めて失ったものの大きさに
秘かに肩を震わせすすり泣く久美子だった。
授業参観日の前日、休み時間中にいつものように
女の子達は他愛もない話に花を咲かせていた。
「明日の授業参観、誰も来ないよね?」
「もちろん。高校生にもなって授業参観て、うちの学校も相当ずれてるよね」
「そうなんだよなあ。めっちゃ迷惑なんだよ。うちのお母さん、
急に行くって言い出して。もう子供じゃないんだから」
「ええっ!扶美ん家、来るんだ!」
扶美は浮かない顔して、先日の親子喧嘩を友達に愚痴った。
皆、半分哀れむような顔をして話を聞きつつも、
内心ふき出しそうになるのを堪えているようだった。
「ちょっと、他人事だと思って面白がってない?」
扶美はほっぺを膨らました。
「あはは、ごめん、ごめん。そんなことないって」
扶美の話題で女の子達が盛り上がる中、幸子だけは嫌な予感がして
胸騒ぎを覚えていた。
コメント