同愛4(四)_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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同愛4(四)

15-06-14 10:23

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「同愛」へ

甘い酸っぱいんや。
知らんかった。

キスってこんなにも口の中を唾液でいっぱいにするんやね。
あの人がうちの頭を片手で支えてぐっと自分の方へと近付ける。
キスやった。
あの人の唇とうちの唇がぶつかる。
そしたら、あの人は何度も何度もうちの唇をなぶっていった。
滑るように吸出すように甘く噛むように。
うーうん、ほんまに噛みよった。
うちの下唇を歯先で優しく甘く噛よった。
鼻と鼻とが交差して、目と目が出逢って見詰め合う。
うちは恥ずかしくなってぎゅっと目を瞑る。
それでも暗闇の向こうにあの人が居て、あの人の顔がある。
目尻に少し涙を浮かべてしまうんのも仕方無しやった。

それから、唾液がな。
キスをされたその瞬間から口の中から溢れ出してた。
酸っぱい蜜柑かグレープフルーツを食べた時みたいにいっぱい出てきよったんや。
せやから、あの人がうちの口の中に舌を入れてきた時にはもう気が気じゃなかった。
恥ずかしくて恥ずかしくて、瞑った目蓋をもっと瞑らなあかんかった。
でも、関係あらへんかったわ。
あの人はそれどころか自分の唾液もうちの中に流し込んで、うちのも自分のも一緒くたに舌を絡ませてきたんや。
あの人の太い舌がうちの小さい舌を縦に横にと凌辱しよる。
溢れる唾液がうちの口の中に貯まっていく。
現金なものであの人の唾液が入ってきよると思うだけで、うちは自分の口の中の唾液が愛しくて愛しくて堪らんようになった。
アホやな。
ほんまにアホや。
でも、絡めて絡めてうちはあの人の舌と唾液を口内全部で感じて一生懸命に貪った。
やり方もよう知らんくせに本能のままに、欲望のままにあの人に凌辱される為に貪った。
ぴすぴすとうちの鼻から漏れる息。
小さな穴からじゃ酸素が足りんようなっても、うちは唇を離さない。
あの人が満足するまで。
うちを堪能してくれるまで。
されるがままに、うちはうちを差し出す。
初めての事やから、どうしたらいいのかも分からん。
だから、あの人が満足するまで待った。
それで、気が遠くなりそうな狭間でやっと解放されたうちの顔はきっとだらしなくふやけきった顔やったと思う。
たった一回のキスでうちはもう全てを征服されてしまっていた。
ピクッピクッと痙攣するように無意識に動く身体の節々がその証。
荒く息づく胸も、外へと放り出した舌も、あの人を求めてさ迷う腕もその証。
涙の滲む向こうであの人が笑みを浮かべる。
うちの下半身が腰を浮かせた。

つづき「同愛4(五)」へ


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