妄想具現(3)_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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妄想具現(3)

15-06-14 10:24

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「妄想具現」へ

予想の斜め上を行く絵美さんの言葉に俺はますます混乱する。
「はい、おかげさまで?」
とりあえず、当たり障りのない所で返事を返す。

「そう…ですか」
それなのに絵美さんはそのおっとりとした若干タレ目な瞳を薄く開き、睨むような視線でこちらを伺ってくる。
いつもとは違うそんな彼女の奇妙な視線に俺は頭の中がごちゃごちゃになっていた。
いつもニコニコと笑みを絶やさず、俺にさえ向日葵のような眩しい笑顔を見せてくれる筈の彼女が睨むような視線を向けて来たのだ、そうなるのも仕方がない。
「ご飯はちゃんと食べてますか?」
「い、一応は…」
しかし、一々、彼女の発言と表情が一致しない。責めるような視線で気遣うような言葉。絵美さんが何を言わんとしているのか、その中身が分からない。
ゴミの出し間違いを責めているようには見えないし、俺が他に何かをしたということなのだろうか。
「このゴミ…燃えるゴミですよね」
キタッ!
やはり、出し間違いについてだったか。
俺は遂に言及された問題にどう対処するべきか脳をフル回転させる。
「少し…ティッシュの量が多いです…よね」
「はっ?」
しかし、そのフル回転が空回りした事を俺ははっきりと自覚する。
一体、彼女は何が言いたいのだろう。
果たして、俺は何に対して考えればいいのだろう。
要領得ない絵美さんの一言、一言に俺の思考は掻き乱される。
あまりにも掻き乱され過ぎて、そういえば、さっきは絵美さんにいきなりアレの処理をして貰えるっていう馬鹿げた妄想でシコってたなぁ、と、あまりこの状況に関係のない事も考えてしまう始末。
「大串さん、余計なお世話かもしれませんけど…この近所には年ごろの子とかいるので…あまり、その…そういった物が近く大量にあると、その子たちに良くないかと…」
そこでようやく、俺にもピンッと来る物があって全身から一気に汗が吹き出す。まさか、それを咎められるとは、思っても見かなった。
「ですから…」
絵美さんが続けて何かを言っているようだが、俺の耳には入ってこない。
大方、するな、捨てるな、もしくは、引っ越せなどの内容だろう。
俺は予想もしていなかったまさかの理由で絶望の淵に立たされてしまったのだ。
「あまり体にも良くないですし」
しかし、こうなったのも大体が俺だけのせいでは無いだろう。
なのに、何故、俺だけを責める?
俺は未だに何かを話す絵美さんを余所に立ち上がる。そして、おもむろに彼女に抱き着いた。

つづき「妄想具現(4)」へ


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