ヴァギナビーンズ症候群「17」_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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ヴァギナビーンズ症候群「17」

15-06-14 10:30

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「ヴァギナビーンズ症候群「1」」へ

ドアをノックする音がして、「はい」と琴美が言う。
そこから現れた大男は琴美の方を一瞥すると、なにも言わずに全裸の千佳に向かって歩み寄る。
血が騒ぐ、というのは不適切かもしれない。
しかし彼から出るオーラが千佳を魅了するまでに、それほど時間は必要なかったみたいだ。

「あなたが……お姉ちゃんの……」

「画家の、河原崎郡司先生よ。私は彼とは仕事のお付き合いをさせていただいているの」

姉からの紹介があって、妹は覚悟した。琴美と郡司のあいだには仕事以上の信頼関係があり、今度はそれを自分にも求めているのだ、と。
姉から婚約者を奪った側からしてみれば、どんなに淫らな誓約でもサインを拒むことは許されないだろう、とも思う。

「式場では遠目に拝見させてもらったが、こうやって素肌を晒したきみが見れて、わたしは寿命の延びる思いがするよ。ほんとうに美しい娘だ」

彼が千佳の柔らかい髪を撫でてやると、彼女は横を向いて自分の両肩を抱いた。

「ぜひともきみを描かせてほしい」

いやらしく迫る雰囲気がないことを知って、千佳はゆっくりと頷く。

「ただし、キャンバスに描き写すわけではない」

彼がそう告げた横から、「ボディペイントよ」と琴美は付け加えた。
芸術家の考えていることは常識者には理解できないと思ったが、それでも千佳は豊満な妄想をふくらませて、彼の提案に前向きになることを決意した。

彼は筆を手に彼女の正面を見下ろし、時間をたっぷりかけて、色とりどりの絵の具を配合した液体をそこに盛っていく。
郡司が上になり、千佳は下で──あひん、あひん──と顎をしゃくっている。
ボディペイントと同時に、二人の下半身は結合していた。
激しく体を揺すって挿入のみのセックスに興じる老人と娘。
どれだけ気持ちいいことになっているのか、千佳の表情を見ればそのパーセンテージは予想しやすい。
琴美もただ指をくわえて見ているだけでは、体の疼きに負かされそうになっている。
彼女は妹に勝るとも劣らないすべての肌を露出させ、千佳の顔に跨り、クンニリングスを要求した。
答えはすぐに返ってきた。女の性器に女の唇が合わさって、ローションよりも滑らかに舌とクリトリスを摩擦させ、ときどき指で膣の奥を掻き乱してくる。

「やだ……すごい……、はん……いき……そう……」

三つの体がそれぞれ違う行為をしているのに、感じていることはただ一つ。
膣は精液で満たされ、もう一つの膣は潮を吹き、射精を終えた陰茎はもう勢いを失って下を向いている。

「はあ……はあ……お姉ちゃん……、私……いっちゃった……」

「千佳……大好き……はあ……はあ……、私も……おまんこ気持ち良かった……」

「女の子同士って……、なんか興奮する」

「今日だけの特別授業なんだから……、もうおしまい」

琴美に言われ、「そんなのだめ。ねえ、もう一回しようよ。ねえ?」と譲らない千佳。

「こうやっていても絵になるというのは、なかなか、世の中は不公平にできておるのかもしれんな」

ほかの誰よりも素敵な女性だということを、河原崎郡司は二人に言いたかった。

「キャンバスならいくらでもある。きみらの性欲すべてを、ここに置いていきなさい」

橘姉妹は彼の熱血な口ぶりにまた体を熱くさせて、お互いの乳房をあっちとこっちで分け合い、愛撫して、乳首が捻れるほど吸い付く。夢中になれるものがそこにあるかのように。
二つの膣に指の束を入れて、割って、愛液で全身を洗っていく。
シャンプーの香りも、デオドラントスプレーの効果も、ボディクリームの被膜さえも落とされる。

「あん……そこ……ふうん……もっと……中まで……ああっ……」

「いい……あいい……いくいく……いっ……ちゃ……ううん……ああいく……」

指の動きに腰を振って、どんなメイクよりも色気がのった紅い頬は変に吊り上がり、恥ずかしそうにヴァギナを踏ん張る。

「ひっ……くっ……」

「んっ……はっ……」

子宮はどこかに吹き飛ばされ、膣のつづきがなくなったような切なさだけが残る。
心地良い痙攣がつづく。めんどうなこと、目を背けてきたこと、避けては通れないこと、ぜんぶ忘れて快感だけを体に刻んでおきたい。
ヴァギナとビーンズ(クリトリス)は女性の特権なのだから、時にはひとりでオナニーに耽ってみたり、時には誰かとセックスで繋がってみたり、女性としての幅をどこまでも広げてくれる。
男性よりも優位に、彼らよりも深いオルガズムで、心と体をときめかせながらトリップできるのも、女性器が成せるいたずらだろう。

「三角関係だね」

千佳が呟いた。

「誰と誰が?」

琴美は尋ねた。
異性を愛する自分、同性を愛する自分、自分自身を愛する自分。三種類の自分がいつもどこかにいて、どの自分も憎めない──なんて偉そうに唱える気はないけれど、とびきり甘い表情をして千佳は言った。

「女の子の心のかたちは、いつだってショートケーキみたいに三角形なんだよ」

つづき「ヴァギナビーンズ症候群「18」」へ


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