ヴァギナビーンズ症候群「13」_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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ヴァギナビーンズ症候群「13」

15-06-14 10:31

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「ヴァギナビーンズ症候群「1」」へ

こんなやり取りをただの『仕事』だとまわりに偽り、実際にレポートとして報告した上で、フリーペーパーに掲載する許可ももらっている。
もちろん個人的な事情で極秘におこなった取材のため、事実とは別の記事を用意しておいたのは言うまでもない。

いまどき枕営業なんてゴシップ記事にもならないと思いながらも、人生で何度目かの大きな決断を琴美はしたのだった。
女の武器を有効利用しただけで、道徳に背を向ける行為をしたという自覚も消え失せていたのだろう。
ただ、見違えるほど女らしさに磨きがかかったことについては、唯一無二の天才に拾われたからにちがいなかった。

「プラチナのペアリング、っていうのはありきたりかな」

隣の彼女の顔色をうかがいながら、三上明徳は賢い笑みをつくって訊いてみた。彼女がどんな申し出をしようと、けして揺るがない経済力が彼にはあるのだ。

「私って、こう見えてけっこう優柔不断なんですよ」

「僕にはその通りに見えるけどね」

「ええ、ひどおい」

二十三歳の誕生日を明日に控えた橘千佳は、彼に向かって思いっきり悪い顔で睨んだ……つもりだ。

「可愛い顔して、それで怒ったつもりかい?」

「もう……」

そんなこと言われたって、幸せすぎてここ最近本気で怒ったことも記憶にない。
千佳の尖った唇がだんだん緩やかなカーブを描き、それはやがて笑顔に変わる。

こちらなんかいかがですかと、ショーケースを挟んだ向こう側から女性店員が提案してくる。
若い上に美人だなと明徳は思った。
そんな彼が彼女に抱いた第一印象を、千佳は女の勘で見透かしていた。
とっさに「あっちも見たいな」と千佳は明徳の腕を引っ張り、半ば強引に移動を促す。

二人の目の前には、エンゲージリングやマリッジリングを扱ったディスプレイが、永遠の光をたたえながらショーケースに収まっていた。
それぞれの頭の中に真っ先に浮かんだのは、橘琴美の存在以外の何者でもない。
こうやって二人きりで会っているときぐらいは、できるだけ彼女のことを考えないようしようと意識していたのだ。

「私やっぱり、ほかに欲しいものがあるから」

そう言った千佳が示した店に二人で訪れることになり、先ほどとおなじようにショーケースのあちこちに視線を送る時間がまたつづく。
それほど広くない店内には甘い匂いが漂っていて、すでに昼食を終えたばかりの彼女の別腹をくすぐっていた。

「ここのカスタードプリン、女の子に人気なんですよ」

洋菓子の表面に浮いたヴァニラビーンズの黒い粒々を見ながら、千佳はいっそう瞳を輝かせる。
それはどんな鉱石よりも純粋に明徳の心を魅了した。

洋菓子店『シュペリエル』の駐車場に一台の車が入ってきた。ピンク色のコンパクトカーは切り返しなしで白線内におさまると、どこのガールズコレクションから抜け出して来たのかと思うほどの風格を備えた若い女性が、運転席側から降り立った。
毎週土曜日には人と会う約束がしてあり、今日は六月の第四土曜日だった。
先方のお気に入りでもあるカスタードプリンを買い求めて、そのまま夜まで一対一のミーティングがつづく予定である。体と体で論議を交わす、面会謝絶のミーティングが。

そんなこととは知らない千佳と明徳は相も変わらず、スイーツよりも甘くのろけ合って、ケーキの『あるある話』で盛り上がっている。

琴美が車を離れようとしたとき、彼女の携帯電話に着信があった。実家の母親からだった。

「これから仕事で忙しいんだけど」と琴美が突き返すと、「あらまあ、休日ぐらい休ませてもらいなさいよ。式までにやっておかなきゃいけないことが、新婦にはたくさんあるんだから」と電話の向こうから聞こえてくる口調はやや呑気である。
とくに用事はないということで、毎度のことながら三上、橘両家の親族にはくれぐれも失礼のないようにと念を押す母に対して、いずれは自分の気持ちを正直に話さなければいけない時が来るのだと、今はそっと謝罪の言葉を飲み込んだ。

「いらっしゃいませえ」

女性スタッフの溌剌(はつらつ)とした声に琴美は出迎えられた。人気店の土曜日の店内は混雑必至である。
人の流れの最後尾にいた彼女は、数秒前に聞いた女性スタッフの声が「ありがとうございましたあ」と言ったので、なんとなく店の出入り口に目を向けてみる。
ちょうど一組の若い男女の客が出て行くのが見えた。
一瞬、見覚えのあるような不思議な感覚に胸をざわつかせたが、彼らの後ろ姿が見えなくなると、それはすぐに治まった。
目的のものはきちんとショーケースの中に陳列されていて、琴美の舌と胃袋を刺激するのだった。

「色気より食い気、なんて言ったらまた怒らせるだけかな」

「知らない」

二人きりで交わす言葉にしては色気が足りないなと、彼は彼女のよく動く口元を見つめながら思った。
三上明徳と橘千佳は『シュペリエル』を出てから彼のアパートに直行して、さっそく戦利品を口に運んでいた。
女の子の匙加減に付き合っていたら、ほんとうに日が暮れてしまうかもしれない。
千佳はスプーンの半分ほどの量のプリンをすくって、またそれを時間をかけて口に入れる。
これさえ食べ終わればセックスの流れに持っていけるはずだった。しかし彼女のペースはなかなか上がらない。

アクシデントは突然おとずれた。すくいきれなかった一片のプリンがスプーンから滑り落ちて、彼女の素足の膝にぽとりとこぼれたのだ。
千佳はティッシュのありかを明徳に訊いたが、彼は「そのまま動かないで」と言って彼女のそばに座った。
そして千佳の膝枕に顔を埋めるようにして、プリンが乗った部分に口を付ける。
味覚が甘くなったのはプリンのせいだけではなく、彼女からつたわってくる円熟の味でもあった。
始末を終えて明徳が顔を上げれば、そこには赤面した千佳の小柄な顔が待っていた。
目は空中で止まり、鼻はひくひくとふくらんでいる。

「大丈夫?」

彼の言葉に反応して、事態の収拾をしようと千佳の脳は再生をはじめる。

「う……うん」

「嘘だ。大丈夫じゃないくせに」

彼はまたプリンをスプーンですくって、それを自分の口に含み、口移しで千佳に食べさせた。とても甘いキスだった。
すぐさま彼女のスカートの中に手を差し込んで、薄い生地のそこをくにゅくにゅと指で押す。
さすって、撫でて、押して、線を描く。キスをしたままだから、喘ぎ声を露わにできないし、息苦しい。
それでも性感帯が密集した彼女のそこは、愛撫のつづきが欲しくて一気に濡れていった。
明徳は一旦キスをやめる。

「もう、突然そんなことされたらあん……ん、服がしわくちゃになっちゃう……ふうん」

股間を責められたまま千佳は強気に言った。
それでも彼は指の動きを休めようとしないため、千佳は自ら着衣を脱いで、水色のブラジャーを見せつけた。
ショーツも揃いの水色なのだが、彼の興味はそこにとどまらず、とうとう女性器の口の内部に到達していた。

「やいん!」

体の奥から泡立つ快感にめまいがしそうになる。
彼はブラジャーをはずし、胸の谷間にプリンを落として、じゅるじゅると舐めた。その口で乳首に吸い付かれ、千佳はまたしてもへなへなと力を失う。
スカートやショーツにしても、もはやおしゃれを楽しむためのアイテムとは言えない姿で部屋中に散らばっていた。
明徳が千佳のヴァギナを覗き込む。

「ヴァイオリンに名器があるように、きみのここも相当な名器だよ」

そしてそこから彼女の両脚をひっくり返して、爪先を向こう側の床にまで押し付けてやる。膣口が天井を向く姿勢だ。
そこにもまた、行列ができるほど甘くて濃厚なプリンを塗りたくり、彼女を知り尽くしたテクニックを披露した。

ずずず……じゅじゅ……ぴちゃくちゅぐちゅ……くちゅんくちゅん……。

砂糖の甘さよりも、愛液の甘さを堪能する。プリンの舌触りよりも、陰唇と陰核の舌触りを追求する。
千佳の反応も普通ではなくなってきていた。
彼はすぐに裸になって、裸の彼女に覆い被さり、挿入をした。
ペニスが擦れる膣壁が気持ちいい。いじくりまわされる乳首が気持ちいい。香辛料をまぶしたように熱いクリトリスが気持ちいい。キスはソフトでもハードでも気持ちいい。
今日という日を記念日にしてもいいと思えるくらいに、オルガズムはつねにそばにあって、一発一発に重みがある。
そのうち千佳自身にも把握できないほど何度も絶頂にいかされて、大量のザーメンは彼女の体の外と中に注がれた。
タイミングが合えば、将来千佳の体に異変を及ぼすほどの激しいセックスだった。

つづき「ヴァギナビーンズ症候群「14」」へ


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