この話はつづきです。はじめから読まれる方は「痴漢師」へ
全ての痴漢行為が自分の思い通りに出来る訳ではない。
勿論拒まれる事もあれば、手を捕まれる事も有った。
素直に謝罪し許してもらった事も有れば、駅員に通報され警察沙汰に成る事さえ有った。
しかし彼は警察沙汰になろうと痴漢を止める事は出来ない程、痴漢と云う行為にのめり込んでしまっていた。
最初の頃は、自分の好みのタイプの女性をターゲットにしていたが、なかなか成果が上がらず、自分が思う様な行為が出来なかった。
次はおとなしそう女性をターゲットにしてみた、しかしこのタイプの女性には時限爆弾が居るのだ。
そして彼は成功と失敗を繰返し、経験を積み重ねて行く内に、彼にしか解らない感覚的なものだが、OKっ娘を見分ける目とかぎ分ける臭覚を身に付けて行った。
それは彼の中では宝探しと同じ行為だった。
一握りしかいない、痴漢を望んでいる女性に巡り会えた時は、彼にとって至極の一時であった。
そして彼は、自分のしたい行為をするのではなく、望んでいる女性の望んでいる行為をする様に変わって行ったのだ。
自ら獲物を狙いに行くライオンタイプから、蜘蛛が巣を張り獲物を待つ様な蜘蛛タイプに変わったのだ。
つづき「痴漢師 第五章」へ
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