この話は「貧学生とおかみさん」の続編です。
新しい年度を迎えて学生は恭平と医学生の大田のふたりとなった。
四月のある朝である、玄関に男の声がした。
「おはようございます、三田初枝さんのお宅ですか」
「ハーィ、ただいま・・・そうですけど」
二人の男は背広のポケットから警察手帳を取り出して
「この下宿人の島を昨夜、窃盗と強姦未遂で逮捕しました、家宅捜査をしますので立ち会っていただけますか」
初枝は驚いたが警察の指示に従って一階の島の部屋に案内した。
敷きっ放しの布団に雑誌と飲み干したビールの缶散乱していた。
刑事は白い手袋を付けると小さな箪笥を開いて下着らしきモノを取り出して並べた。
婦人物のパンツやブラジャーが所狭しに並べられた。
すると年配の刑事が黒いビニール袋から何やら取り出す様子だった。
ハッとする思いが初枝によぎった
「島のやつこんな物まで」
あの電動バイブとペンライトである
バイブの先にへばりつく陰毛が見て取れた
刑事はニヤリとしながら初枝の方をちらりと見た。
「三田さん自身は何か被害はございませんか」
初枝は顔を赤らめて否定した
「そうですか、島から問いただすつもりですが、もし被害がありましたら署までご連絡ください」
15分ばかりの短い捜索であったが初枝には随分と長い時間に感じられた。
丁度朝の食事を終えた恭平と大田が刑事の訪問に驚いていた。
「おかみさん、何かあったんですか・・・」
恭平が初枝に声をかけた。
「ええ、島さんが窃盗事件を起こしたらしいの、家宅捜査に刑事さんが来て今帰ったわ」
「そうなんですか」
「島さん女物の下着を集めていたみたい、いやらしいわ」
恭平はドキッとした、それは以前預かった初枝のパンテイが今もって恭平の押入れにあるからである。
初枝は初枝であの島がいろいろと取り調べで話すのではないかと気を揉んでいた。
あの下着には数枚であるが初枝の物が混じっていた、そしてあの晩の情事に使われた小道具、ねっとりと
付着した陰毛は初枝のモノである可能性が捨てがたい。
ああ・・・どうしよう 初枝は動揺を隠し切れないでいた。
しかし、何日たっても警察から連絡もなくいつの間にか忘れて普段の生活に戻っていた。
6月に入ると急に暑い日が続き初枝は体調を崩したのである、暑かったせいでつい下着だけで寝ることも夏カゼ
をひいた症状であった。
夕方けだるそうな様子を医学生の大田が見逃さなかった。
「おかみさん、カゼでも引いたのですか」
「ええ、何だか熱ぽいの」
「後から診てあげましょうか」
大田は医学生でありながら平気でそんな言葉を口に出した。
「まだ学生さんでしょう、大丈夫・・・」
初枝はいたずらっぽい目で大田をからかった。
「何時くらいにお邪魔したらいいですか・・」
「そう、診てくれるの 大田君に任せよかな」
初枝はそう言いながら時計を見上げた
「9時でどう・・・」
「分かりました」
大田は嬉しそうにしながら何か別の楽しみでもあるかのように部屋に帰った。
恭平はそんなふたりの約束など知らぬ様子で夜のバイトに出かけていった。
大田は9時を待ちわびていたかのように裏の通路を通って食堂から初枝の部屋に入った。
「おかみさん、いいですか」
「まあ、時間ぴったりね」
浴衣の寝間着姿で布団の上にちょこんと座っていた
つづき「触診 2」へ
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