「あ、勇治くん!一緒に帰ろー」
日が沈みかけて真っ赤になった放課後の教室。幼なじみで恋の想い人である真奈美が一緒に帰宅しようと声を掛けてきた。
「あー?1人で帰れよー」
勇治は真奈美に面倒くさそうな声をあげる。
「えぇっ?どーして?勇治くん一緒に帰ろうよぉ?」
しかし、真奈美はそんな勇治の腕に組み付き、まるで、恋人同士の様にして歩き出す。
「たく…やめろよ、恥ずかしい」
勇治はこんな風に真奈美を邪見に扱ってはいるが本当は嬉しかった。勇治のこの態度は単なる照れ隠しである。その証拠に、勇治は口では言っていても、いつも真奈美のやる事に抵抗をしなかった。
「ねぇ、覚えてる?」
「あー?」
学校の校門を出て、いくつかの信号を渡った帰りの道中、真奈美が勇治にそんな問い掛けをしてくる。
「昔、勇治くんが真奈美を将来のお嫁さんにしてくれるって言ってくれた話」
勇治の腕に組み付きながら、勇治を見る真奈美の瞳は真っ直ぐだ。二人の距離はいつも近い様でいて遠かった。だからこそ、真奈美がそう問い掛けて来たのだろう。
「…あぁ、覚えてるよ」
だから、勇治は呟く様に答えた。少し遠くの方を見ながら、その言葉を意識してやや頬を赤らめ、真奈美に自分の本当の気持ちが伝わる様に。
「ふふっ…」
真奈美が笑みを浮かべた。何故なら、それは事実上の告白であったからだ。勇治は、腕に組み付く真奈美をそっと自分の方へと引き寄せる。真奈美もそれに満足して、勇治の腕に頭を寄せてきた。
その日、初めて勇治と真奈美は夕日に焼けたいつもの道をいつもとはちょっと違う関係で歩いたのだった。
…それが、昨日の出来事。
そして、今日、それは遥か遠い昔の出来事となってしまう。
「く、くふふっ…やぁ、石倉さん。どうだい、意識があるのに動けない感じは?」
知らない部屋でじっと佇む真奈美。そんな真奈美を上の名前で呼び掛ける一人の男。
真奈美は知っている。
男の名前は山椎 猛郎。真奈美のクラスの同級生で、何だかいつも自分に不快な視線を送ってくる男だ。
「ぐふ、やっと…やっと、二人っきりになれたね…真奈美」
「!?」
でっぷりと肥った猛郎の肉厚な顔が真奈美に近付いて来る。しかし、真奈美は、何故だか動けない。いや、それどころか、真奈美は何故だか猛郎の近付けて来た唇に、自らが求めてキスをしてしまう。
頭の中では拒否している筈なのに、体が、唇が、何故だか猛郎の醜い唇を求めてしまっていた。
つづく「寝取られ催眠2」へ
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