春眠の花[20]_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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春眠の花[20]

15-06-14 10:38

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「春眠の花[1]」へ

外の景色がよく見える。ということは、外からもここが少なからず見えているはずなのだ。
この病室は上層階にあるようだが、全裸の男女の上半身が絡み合う様子は、特定の場所からならば肉眼でも確認できるだろう。
私と彼は向かい合わせで窓辺に立ち、彼が私の乳房にしゃぶりつくと、私の背中は窓ガラスに張りついた。

「やっ、先生……、こんなところで……、誰かに見られたら……、はうあん……んふん……」

「いいじゃないですか……、この方がお互い興奮できて……、完全燃焼できるのだから……」

出海氏は何度も私にキスをしては、左肩に私の右脚を引っ掛けさせ、つり上がった陰唇にサンドイッチされたバイブレーターを、ごしごしと出し入れさせる。
恥ずかしいくらいに愛液が匂う。もう潮を吹かずにはいられない。
窓の外から背中に感じる視線も私を犯している。

「こんな淫らな行為が、罪に問われると思いますか?」

全裸の医師はそう言って、私の応えを待った。

「い……いいえ、あんもうだめえん……、先生だめぇ、イクぅ、ひイクぅ、イぃ……クぅ……」

「どこがどうイクのか教えて欲しいですね、ほら」

彼の突きの強さに子宮も圧しつぶされる。

「おねがい……します……、く、クリトリス……が……、イク……ん……」

「女性の秘密を教えてください、もっと、もっと」

「はぁ……あう……、ゆ、ゆるして……、お……お……まん……こが……、だめに……なっちゃう……んっ」

「奈保子さんが言うと余計に色っぽい。言わせたこっちが照れてしまいますよ、まったく」

彼はまたその脂ぎった顔面を私の胸にうずめ、左手で背中を引き寄せ、右手のバイブレーターで女性器の深いところを物理的にいじくりまわす。
いつまでも終わらない、二度と引き返せない、一度目を上まわる肉体の絶頂が、失恋に似た未練とせつなさを私にあたえた。
もしも今日が桃の節句ならば、お内裏様に見初められたお雛様は、言い寄られるままに女の杯を男の甘酒で満たし、あれよあれよと夫婦(めおと)の契りを隠密に交わす。
そんな物語があってもいい。お雛様だってセックスもするし、オナニーもするだろう。なぜなら、女性は誰もがお雛様なのだから。

「なかなか派手にイク女だ、君って人は。安全日や危険日なんてものは存在しない。今日は君と私の記念日になるんだよ、奈保子」

出海森仁の態度が微妙に変わった。彼は私からバイブレーターを引き抜いて、無造作にそれを投げ捨てる。それから私を床に這わせた。
『orz』の格好にさせられた私の背後から、獰猛な生殖器が飛びかかる。

じゅぱん、びちゃん、ねちょ、ねっちねっちねっち──。

腰と腰が衝突して、ペニスはヴァギナを掘り進む。
彼が唸れば私が喘ぎ、首を左右にいやいやさせる。
彼の骨盤が私のお尻を揺すれば、性器のつなぎ目からは熱い体液が糸をひいて飛び散った。
夢の中で味わったどの快感よりも、現実のそれは容赦がなかった。
私は何度も絶頂し、何度も許して欲しいと懇願した。
彼は何度も射精し、何度でもやらせろと威張った。
そして、愛しているとも言った。
私はもうだめだ。気絶から立ち直ったとしても、彼はまた私を失神させようとするだろう。それだけのものを彼は持ち合わせている。
膣がはちきれそうな性的ストレスを感じ、大量のザーメンは子宮口を塞いでいる。
そんな時だった──。

病室のドアの鍵がガチャリとはずれ、開け放たれたそこから誰かが飛び込んできた。そして私たちを見つけるなり、こう言うのだ。

「パパ、もうやめて!」

そこにいたのは、夢の中で出会った女子高生、愛紗美ちゃんだった。
出海森仁医師の狼狽(うろた)えようを見れば、彼と彼女が親子の関係にあることは疑いようがなかった。全裸の私もとうぜん狼狽えた。

「愛紗美、ここには来るなと言ったはずだ。はやく出て行きなさい!」

「なんでそういうことをするの?その人にひどいことしないで!」

少女は父親に向かって興奮気味に訴えている。

「違うんだ。彼女は、小村奈保子さんは不妊治療をするために私を頼ってきたんだ。私だって一応産婦人科の医師だからね。愛紗美にはまだ理解できない世界かもしれないけど、大人には大人の事情があるんだ」

「事情事情って、結局セックスがしたいだけじゃない!そうやってあたしのこともレイプしたくせに……。ひどいよ……、パパ……」

彼女は涙で顔を濡らしながら、こちらに歩み寄ってくる。そして私をかばうように彼から離すと、その清純な制服に自ら手をかけていく。

「愛紗美ちゃん……、なにしてるの?」

「奈保子さんはあたしの夢を見たんでしょ?あたしも奈保子さんの夢を見たんだ。あたしを痴漢から助けてくれた。だから今度はあたしが──」

あどけない下唇を噛んだまま俯いて、順調に発育した体をさらけ出すように、彼女は下着姿になってはにかんだ。
ふわっと、若いホルモンの匂いがした。私の代わりに、実の父親である出海森仁に抱かれようというのだ。

「だめよ、愛紗美ちゃん。あなたはもうこれ以上汚れちゃいけない」

しかし彼女は私の声を聞き入れようとはしない。花瓶のように白い肌から白い下着がすべり落ち、かつての自分たいな淡麗な理想肌がそこにあった。

「私は愛紗美をレイプしたつもりは一度もないよ。だって、あんなに愛し合ったじゃないか」

彼は異常な目で言う。彼から受けた淫らな治療のせいで、私の体はもうくたくたに疲れ果てていた。いまの私では彼女を止められそうにない。
その初(うぶ)な乳房と、くびれた股間の割れ目を、彼はその肉親の手で溺愛するのだった。

「可愛い愛娘をレイプする父親がどこにいるというんだ。そうだろう?どうなんだ?こうして欲しいのか?」

出海森仁は愛紗美というかけがえのない存在を、自分の思い通りの色に染めていく。彼が愛撫した部分は明らかに火照って、生々しく紅潮していった。

「先生、やめてあげてください。彼女はまだ高校生です。もっと別な愛し方があるんじゃないでしょうか?」

「どんな愛し方をしようが私の勝手だ。それとも奈保子さん、君が私の新しい妻になってくれると言うのなら、愛紗美を許してあげてもいいのだが」

「そんな……」

私が絶句するそばで、彼の指は未成年の膣をぐずぐずとこねている。そこから透明な液がたらたらと滴り、彼女は細い体をよじってすすり泣く。

「それならこうしよう。もう一度だけ、君なりの言葉で私を誘うんだ。私が奈保子さんを諦められなくなるくらいの台詞を」

出海森仁は筋肉を汗で光らせながら、私を見下ろした。しかし、なにを言ったらいいのかわからない。果たして彼の望むものが私の中にあるのだろうか。
私は床にお尻をついて両脚を外側に開き、左手で乳首をまさぐり、右手で性器に乱暴した。
そして──。

「私……、私は……、無理矢理犯されてもイクし。ええと……あれは……その……、フィストファック……だと思うんですけど、それも経験済みで。可愛い雑貨だって……、オナニーに使ってしまいます。だから──」

「だから?」

「私は自分で、お……、おまんこを濡らしてひろげていますから、だから、私のおまんこを貰ってください、先生」

「そうですかそうですか。クスコやペンライトにも興奮しますか」

「はい、先生……」

「着せ替え人形の手足で、ひとり遊びするのですね?」

「はい、おもちゃにします……」

「いつでも膣に触っていたいのですね?」

「はい、おまんこだけ変態なんです……」

「生理から解放されるなら、私の子どもを妊娠してもいいのですね?」

「え……と、それは……」

私はそこで口ごもってしまった。彼の洗脳に流されてしまいそうになるところで、ある人物の顔が浮かんだからだ。

「篤史さん──」

もうずいぶんと久しぶりにその名を口にしたような気がする。
そう、あれは夢の中で会ったのが最後だった。
片方の夢では、私と風間篤史は恋人の関係にあった。
もう片方の夢では、私は彼との結婚と離婚を経験し、人生の歯車を狂わされてしまっていた。
そして今、現実の彼はどうしているのか。それは私の左手薬指で光り輝いていた。
いや、私たちは入籍と挙式を目前に控えながら、彼だけが不運な事故の被害者になったのだった。

つづき「春眠の花[終]」へ


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