春眠の花[11]_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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春眠の花[11]

15-06-14 10:39

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「春眠の花[1]」へ

ずっしりと重たい快感、もうそれしか言えない。

「それでいいんです、力の抜き方がすごくいいですよ。これを何度かくり返せば、出産時の会陰切開を回避できるかも知れません」

「せんせい……、せんせい……」

「うん、どうしました?」

「はぁ……はぁはぁ……、私……妊娠できます……か?」

「もちろんです。今あなたの子宮を触っているかぎりでは、どこも問題なさそうですから」

出海医師はそう言いながら拳をぐりぐりと動かし、子宮口や膣壁の粘膜を細かく調べている様子だ。
私の中に溜まった汁をびちゃびちゃと外に撒き散らし、クリトリスにも興味の意思を示してやさしく撫でてくれる。
乳頭から滲む母乳を吸い取ることも忘れない。

「おっぱいが梅肉なら、あそこは桜肉みたいで、とても美味しそう」

つねに冷静だった佐倉麻衣さんが私の有り様を見て、興奮気味にそう言った。
ジェラシーに似たものを瞳に浮かべ、ここにいる誰よりも私のことを色目で見つめている。

「妊娠しているとわかっていても、我慢できないものは我慢できない。だって……、女だもの」

美麗そのものの顔を紅く火照らせた彼女が手に取ったもの、それがコンドームであることはすぐにわかった。
そして「お願い……」と私に懇願し、それを私に握らせた。

「これを指にはめて……、私を慰めてください」

彼女が何を言っているのかはすぐに理解できた。
私は出海医師の拳を子宮に実感したまま、人差し指と中指と薬指をまっすぐそろえ、そこにコンドームを被せていった。
白いストッキングとマタニティショーツを下ろし、両脚を肩幅ぐらいにひらく、彼女の準備はそれだけだ。
私は彼女のスカートの中を3本の指で撫でまわし、確かな手応えを感じる部分で手を休める。

「はっ……はふっ……」

熱いものを口に含んで火傷したように、佐倉麻衣さんは息を引きつらせた。
そこにはもう粘液の膜ができあがっていて、私の指は彼女の性器の表面をスリップばかりしている。
ハイドロプレーニング現象──まさしくそんな状態。

佐倉さん、失礼なことしますけど、いきますよ。

私は心の中で一言ことわったあと、禁じられた遊びに手を染めようとしている自分に酔いながら、妊婦の膣をまさぐった。

「あうぅ……、あっ……あぅ……ぅん」

彼女が喘ぐ。

「んいぃ……いぃ……、あっ……っふぅ」

私も喘ぐ。それもそのはず。私が彼女の芯をいたずらに責めれば、出海医師のごつごつした拳が的確に私の急所を突き上げるのだから。
3人それぞれの体温がひとつに繋がって、喰うか喰われるかというハイペースで抜いては入れ、入れては抜く。
世の中にはまだまだ私の知らない快楽が埋もれていて、それを見つけられないまま女を終えてしまうことだってあるだろう。
でも私は見つけることが出来たのだ。今この瞬間こそが女性としての絶頂期であって、生きる喜びを感じられる営みなのだ。
そう思うとまた無性にセックスがしたくなる自分が、いやらしい動物でしかないと思い込み、その熱烈な愛撫に溺れる体を力ませるのだった。

「ああっ、もうっ、あっあっ、だめあっ、うっうんふっ、はぁん、あんぅん」

欲求不満、猥褻(わいせつ)、淫乱、浮気、それらはすべて女にあってはならないものだと思っていたのに、気がつけばいつも私の中にあった。
膣を貫いて子宮をつつけば、そういう不潔な言葉はいくらでも出てくるような気がした。

「あわっ、はわっ、はっはっ、はあぁん、あはぁ……いっ、いいっ、あイク……あぁ……イクっ、ふっ、イっ……クっ……」

そろそろ佐倉麻衣さんの身にも峠が迫ってきたようだ。
彼女の膣の締めつけに負けないくらいの回転を指にあたえ、私は彼女を楽にしてあげた。

「……っ、……うっ、……うんっ」

重たい瞼、据わらない首、痙攣する腰つき、それでいて恥じらいがある。
私が彼女にしてあげられることは果たしたつもりだった。
妊婦の膣から指をスローモーションで抜いてあげると、彼女は力尽きてしゃがみ込み、少量の失禁と大量の愛液で床を汚した。
そして目に溜めた涙を指で払った彼女は、さっきまで自分の恥部をもてあそんでいた私の指を悩ましくうかがい、そこに被さってしわくちゃによれたコンドームを自らの口でしゃぶった。
ねっとりと絡まる汚物を舐める仕草にも、なんとも言えない雰囲気がある。
そうしてコンドームの端をくわえて私の指から脱がせると、飴玉でも転がすかのような扱いで、はぐはぐと舌の上で吟味するのだ。

それを私にちょうだい……。

私の目が彼女にものを言う。絶頂の後味を振り払って彼女が私に寄り添う。

「こっちのほうが口に合うと思いますよ」

そう言ったのは男性スタッフだ。男が上で女が下だと言わんばかりの口調で、彼もまた右手に使用済みのコンドームを持っていた。
私や佐倉麻衣さんの色物狂いした様子を眺めながら、彼はすでに射精を終えていたようだ。

「不妊にはよく効きますよ、これ」と彼が差し出す避妊具の中には、まだ出たばかりの精液が濃厚な色をよどませている。
淫らな食欲が湧いた。私が口をあけて舌をのばしたところに、彼は精液のしずくを垂らしてくれた。
ふわっと生温かいものが味覚を狂わせていくのがよくわかる。

そんなもの美味しいわけがないでしょう。

いいえ、よく味わってごらんなさい、あなた好みの味がするから。

駄目よ、それはただの排泄物なんだから吐き出して。

どうかしら、女はいつだって男に飢えているものよ。

2種類の私がいて、どちらかが嘘をついている。
まどろっこしく舌をまわしている私の口の中に、彼のコンドームが落ちてきた。
臭いものに蓋をするように、佐倉麻衣さんの唇が私の口を塞ぐ。
ゴム臭く生臭いディープキスだ。何と何が混ざり合っているのかわからないほど複雑に絡んだ行為を、まわりの人たちは誤解の目で見ているに違いない。
私は同性愛者ではないし、もちろん彼女もそうだろう。けれどもどうにも止まらない。
妊娠したい女のそばで、妊娠できた女のレズ行為が今まさに行われているのだ。

「くちゅん……はぁ……んぐん、あっ……はぅんむ……んっんっ……ちゃぷっ」

口うつしで交換される唾液と精液と愛液が音をたてて、二人の唇にグロスの艶をあたえていく。
どうしてもモザイクをかけなければいけないとしたら、女性器のまえに、卑猥にぶつかり合うこの二つの唇の方がふさわしい。そう思えるほどに、見られたくないところを見られてしまった背徳感がある。

「もっとアダルトな女性ホルモンを出してみましょうか」

すでに私の子宮を捕獲している出海医師はそう言い、次の手を打とうとしていた。
彼の手首から先は私の膣圧を跳ね返し、まだまだこれからだともがきながら私を「あちらの世界」に連れて行こうとする。
そう──、オーガズムの中へと。
その瞬間、脳が揺れた。彼は男らしく腕の筋肉をもりもりと太らせて、私の体の内側をその拳で子宮に向かって突き上げる。

「……ふ、……は、……ん」

この快感を彼につたえたいのに、息苦しくて声にならない。
私はコンドームを吐き出し、そして佐倉麻衣さんもコンドームに飽きて今度は私の乳首を口でむしる。
自分はこのまま消えてしまうのではないか、そんな感覚が背中をはしって子宮と乳房をつないだとき、間抜けな格好で私は果てた。

あっという間の出来事だった。
佐倉さんは離れ際に私の瞼にキスを、そして出海医師は膣から腕を引き抜いて、白く変色したその手を評価する眼差しでまじまじと見ていた。

つづき「春眠の花[12]」へ


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