朝から調子の悪かった腰の具合が、昼近くになってさらに痛みを増してきた。
…こりゃ、ダメだな…
アキオは資材を運んでいた腕をおろし、深いため息をついた。
…今日は早退だ、
昼で仕事を切り上げたアキオは、作業着を着替えることもできずに家へと急いだ。
歩くたびにズキンズキンと腰が痛む。
昔から腰痛持ちだったが、ここ数年は時々、突発的にこんな強い痛みがアキオをおそうようになっていた。
家の前でポケットからカギを取り出す。
妻のキョウコが買い物にでも出てるかもしれない。
玄関先にあるわずかな段差でさえ、アキオの腰にはつらかった。
…痛っ…!
ドアを開け、ズキンときた刺激に顔をしかめた時だった。
「…はぁんっ!」
かすがだが、ハッキリと女のあえぎ声が聞こえた。
「?!」
思わず動きを止め、耳を澄ませてみるともう一度、
「…ああっ…!」
とやはり聞こえる。
…キョウコかっ?!
続いて聞きなれたパイプベッドのきしむ音。
あれは普段、アキオが使っている1階の和室のパイプベッドの音だ。
1年前にひどい腰痛に襲われた時、2回まで階段で上がることができずに階下の和室に安いベッドを入れたのだ。
今はそこがアキオの寝室になっている。
…浮気かっ?!
アキオは腰の痛みも忘れて思わず足元をみた。しかし、キョウコの靴が1足出ているだけで、他のものは見当たらない。
知らないうちに足音を立てないよう慎重になったアキオは靴を脱ぎ、廊下へ1歩踏み出した。
廊下の左側にある和室まで、アキオはゆっくりと進んだ。
そして開いたままになったふすまから、そっと中を覗き込んだ。
…あっ!!
思わずそう叫びそうになった。
ベッドの上にはなんと全裸のキョウコがいた。
こちらにほぼ背を向けた姿で、大きくあぐらをかき、左手を腰の後ろにつき身体をささえている。
そして右手は身体の前へと回されているようだった。
…キョウコ!!
こんな昼間からキョウコが全裸でいることに、アキオはわけがわからなくなった。
キョウコは普段、大人しい類に入る女だ。
アキオがあっけにとられていたその時、ベッド横に置いてある小さなテレビからまた女の声が聞こえた。
はっとしてそちらを見ると、確かに隠しておいたはずのいやらしいDVDの映像だ。
キョウコとの寝室が別になったころから、アキオが何度も見た女優らしき女が黒肌の男に突き上げられて声をあげているのだ。
「ああんっ!ああんっ!」
ボリュームは絞ってあるが、静かな昼下がりの家の中にはその声がよく響いている。
ゴクリ、とアキオは生唾を飲んだ。
…キョウコ…!
つづき「昼間の和室 2」へ
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