[1]_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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[1]

15-06-14 10:45

サトコは久しぶりに袖を通した自分の姿を鏡に映して、ほっとため息をついた。

着物を着るのは数年ぶりだったが、昔通った着付け教室のおかげで何とか一人で帯まで締めることもできた。
…よかった、

時計を見ると息子の入学式までまだ少し時間がある。
先にスーツに着替えリビングでくつろぐ夫ナオトに、サトコは照れた様子でその姿をお披露目した。
「うまく着れたね。」
読んでいた雑誌をテーブルに置き、ナオトは久々に目にする妻の和装姿に微笑んだ。
「じゃあそろそろ行こうか」
今日は隣町にある私立中学へ入学した一人息子の、最初の晴れ舞台だ。
生徒は先に登校することになっていたので、夫婦は学校近くの駅まで車で移動することにしていた。
いつもどおり、ガレージからワゴン車を出してくれたナオト。
隣の助手席にサトコは乗り込む。…が、不注意で着物の裾がパックリを割れ、その白い膝頭が丸見えになった。
「やだ…っ!」
慌てて裾をあわせるサトコにナオトがまた優しく微笑んだ。
「おいおい、学校では気をつけてくれよ。誰かにサービスしちゃうのか?」
冗談まじりに意地悪を言う夫に、照れ隠しで怒ってみせるサトコ。
ワゴン車はスムーズに発進した。

入学式は滞りなく終わった。
学校から直接塾へ行くという息子にナオトはあきれ、サトコは初日に配られたらしい大きな紙袋の荷物をうけとって、息子を見送った。
家に着くと二人は着替えるために寝室へ向かった。
固くしめたネクタイを外しながら、ナオトが呟いた。
「誰に似てあんなに勉強好きになったんだろう?」
「さぁ、誰かしらね?でも好きなことをしてるんだからいいじゃない。」
サトコには有名私立中学に合格した息子が、自慢でかわいくて仕方なかった。
…晩御飯はあの子の大好きなグラタンにしようかしら?
ボンヤリそんなことを考えながら、鏡の前で固く締められた帯締めをほどこうとしている時だった。
鏡の中にナオトが現れた。
振り返ろうとしたサトコの胸元に、ナオトがサッと手を差し込んだ。
「…あ…」
とっさにサトコが胸元を押さえる。着物の襟から手を入れたナオトと、それを止めようとしている自分の姿が鏡に映し出されている。
それはサトコには十分に刺激的な姿だった。
…やだ…っ!
自分の身体の中心に火がついたことを感じたサトコは、恥ずかしさのあまり鏡から目をそらせた。
「ダメよ、あなた…」
やんわりとナオトの手を引き出そうとすると、ナオトはさらに奥へと手を進めその固くなった乳首を襦袢の上からとらえた。
…ぁぁ…!
「朝のサービスの続きをしてよ…」
ナオトが背後から耳元でささやいた。
ささやきながら、サトコの乳首を指先でまわしはじめる。
「こんな昼間から…あっ…ナオトさん…っ!」
ナオトの指先で乳首をつままれたサトコは、思わず前かがみになった。サトコが乳首をこうされることに弱いのを、ナオトは十分に知っている。
「着物のサトコは、ほんとうにキレイだよ…」
胸元に差し込んだ手とは反対の手を、今度は足の間に滑り込ませた。
「…!」
やわらかく白いサトコの内股を、ナオトの手が這い回った。
「あん…!ナオトさん、まって…」
まだ帯もといていないこの姿で、サトコはこれから起こるだろう熱い時間を思い浮かべた。
乱れた着物を腰まで捲り上げられ、後ろから激しく腰を打ち付けられる自分。
その情景はまだ一度も経験したことのないことだっただけに、サトコ自身も普段よりいっそう期待に身体を熱くした。
だが、サトコはやはり主婦なのだ。
欲望に燃えた夫よりはるかに現実主義だった。
「まって、ナオトさん…!」
内股をまさぐるナオトの手を必死に押さえながら事をとめようとする。
…着物が汚れると大変!!
サトコは今そんなことを考えてしまう自分に嫌気がしたが、とにかく着物が汚れることは避けたかった。着物は洗うことができない。クリーニングに出すのも、体液で汚れていると受付に申し出ることなんて到底できっこない。
「着物を脱いでしまうから…っ」
サトコは自分でも十分に承知しているとおり、感じ始めるとその愛液が半端なく流れ出てしまうのだ。
すでに熱くなったその部分が、どくんどくんと脈打ってる気がする。
「お願いナオトさん!着物をとって…」
いつになく強情にナオトの手を止めるサトコに、ナオトは急に冷めたようにカラダを離した。
「…わかったよ」
鏡にはすねたようなナオトの顔が映し出されている。
「…ごめんなさい…」
サトコはとても申し訳なさそうに呟いた。
決してナオトを嫌がったわけではない。
でも今さら着物が汚れるのがいやなのだとは言葉に出しては言えなかった。
ナオトは無言のまま、スーツを脱ぎ捨てた。

つづく「[2]」へ


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