この話はつづきです。はじめから読まれる方は「歪曲愛」へ
貴史は舐めるように妻を品定めした。
「狭い所ですけど・・どうぞ」
「失礼します」
私達夫婦と貴史の三人でリビングのソファに腰掛けて乾杯をした。妻が席を離れると、その妻の後ろ姿を追いかける貴史の視線に私は恐怖すら感じた。後に知った事だが、妻も貴史の痛い程に突き刺さる視線を感じていたという。
そして妻が、何度目かの立席から戻り元に居た私の隣りに座ろうとした時だった。
「理沙さん、そろそろ私の方へ来て頂けませんか?今夜は私と理沙さんが夫婦なんですから・・」
突然の言葉に妻は固まった。そして、私の心臓は口から飛び出してきそうな位、激しく鼓動し始めた。
妻は私に視線を投げかけた。そして、私は何も言わずに首を縦に振った。
その瞬間、妻も半信半疑でいた気持ちに決心がついたという。
妻は何も言わずに貴史の横へ座る。すると貴史の身体の大きさが強調された。
「理沙、今晩はたっぷり愉しもう・・」
と言って妻の華奢な身体を抱き寄せた。
肩幅のある貴史の腕に抱かれ、寄りかかる妻を見て私は胸が締め付けられる気がした。
数分の緊迫に満ちた時間がリビングを支配した。
「貴史さん、シャワー浴びます?」
意外にも沈黙を破ったのは妻の意外な一言だった。
「そうだね・・じゃあ借りようかな」
妻が先に立ち上がり貴史をバスルームへ案内していく・・。
その後ろ姿を私はただ見つめる事しか出来なかった。
妻はバスルームからリビングへ戻ってくると
「いいの・・?このままだったら私、本当にあの人に抱かれるのよ・・」
私は少しの間を置いてから妻に語りかけた。
「僕は大丈夫だよ・・理沙は必ず僕の元へ戻ってくるから・・一杯愛されるように貴史さんに尽くしてあげるんだよ」
私がそう伝えると妻は無言でリビングを去り、自分の部屋へ消えて行ってしまった。
数分もするとバスローブを纏った貴史が現れた。
「準備はよろしいですか?ご主人・・」
その言葉はまるで私の気持ちを試しているかのような言葉だった。
「私は大丈夫ですよ」
つづく「歪曲愛4」へ
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