トライアングルラブ 42(美佐子)_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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トライアングルラブ 42(美佐子)

15-06-14 10:49

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「トライアングルラブ」へ

「今日、結花に私達のこと話したわ」
「!・・・そっ、そう。それで?」
「それだけ」
「・・・」

サチは何か聞きたそうだったが、私は敢えてそれ以上語らなかった。実際、結花は深く
突っ込んでこなかったし、サチに話すようなこともなかった。ただサチの落ち着かない
様子が私を不安にさせた。
「ねえ、キスして」
「・・・」
私はテーブルを拭いているサチに後ろから抱きつき、甘えた声で誘う。それに
応えるサチ。私達はキスをしてそのままベッドへ。お互いそれぞれ秘めた想いを胸に。
「ああっ、ひゃあん、はあんっ、あああ~」
「好きよ、サチ。離さない。チュッ、チュッ、チュッ、チュッ」
その時、サチの携帯が鳴った。私は嫌な予感がした。昼間の結花の顔が思い浮かんだ。
サチも携帯の方をじっと眺めるだけで、固まって聞いている。静寂の中でその音だけが
鳴り響いた。

「ど、どうするの?」
サチは私の問いに答えるように起き上がり、音の鳴る方へ歩んでいった。
(出ないで。お願い。出たら終わってしまう。そんな気が)
携帯を手に取ったサチの表情で、相手が誰か容易にわかった。
「もしもし」
「・・・」
しかし電話の向こうは何も語らなかった。
「もしもし、結花?どうしたの?もしもし」
次第にサチの声が高くなる。私もその異常にようやく気付き始めた。
「どうしたの?結花?」
あの結花が嫌がらせの無言電話なんかしてくるだろうか。私は必死に呼びかけてる
サチから携帯を取り、代わりに呼びかけた。私が出たら何か喋ってくれるかもしれない
と思いながら。

「結花?どうしたの?結花!応えなさいよ」
「・・・」
「変ね。あの子がこんな嫌がらせするとは思えない。何かあったのかしら」
私はそう言って一旦携帯を切りこちらから掛け直してみた。
プルルル、プルルル、プルルル
(出て、結花)
良からぬ事が起こっていそうで、願うような思いで待った。サチは今にも泣きそうな
顔でこちらを見ている。しかし結花が出ることはなかった。
私達は裸のまま、ただ無言でじっとベッドで時を過ごした。まるで何かを待つように。
そして再び携帯が鳴った。結花からだ。すかさずサチが出た。
「結花?」
「あ~私は警察の者ですが。貴方、幸子さん?」

私達は今、大学病院の集中治療室の前にいる。警察の話では、結花はホテルの一室で
背中からナイフのような物で刺されたらしい。血まみれの女性がホテルから
飛び出していくのを従業員が目撃して、結花が発見されたと言っていた。幸い急所は
外れていたが、かなりの出血のため今も結花は生死の境を彷徨っている。
「神様お願い。結花を助けて。*lぱ・?#~」
サチはさっきからうな垂れて、手で顔を覆ったまま泣き崩れて、言葉にならない。
(私は・・・)
私は結花の生還を祈りながら、こんなことになってしまった責任を感じていた。
(私が結花にあんなに冷たく伝えなければ。ううん、それ以前に横取りするような
形でサチとこんなことにならなければ。とにかく今は結花の手術が成功することを
祈ろう)
永遠に続くかと思われる時間が流れ、手術室の扉がようやく開かれた。
「手術は無事成功しました」


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