会社を出ると、いつも通りに駅に向かう。
ホームに上がるとちょうどやって来た電車に乗った。
ぎゅうぎゅう詰めの電車の中でかろうじて吊り革につかまる事ができた。
このまま自宅マンションの最寄り駅まで20分、今日も疲れたなぁとか思ってるうちに車内アナウンスが降りる駅名を告げる。
が、今日は水曜日なので私は降りない。
二つ先の駅まで行くからだ。
そしてその駅に着くと人の波に乗って改札を出る。
そのまま大通りを5分ほど歩き、小さな交差点を曲がって一本裏の通りに入る。
その通りに面した一つのビルに入る。
用があるのは6階にある店だ。
エレベーターを下りて店のドアを開ける。
「おはようございまぁす」
「ああ、かすみちゃん、今日は混んでるからすぐ出てくれる?」
「はぁい、了解でぇす」
そして奥にある控え室に入る。
「おっはよ〜」
そこにいた何人かの女の子が声をかけてくれる。
そう、ここは俗にヘルスと呼ばれる風俗のお店。
私は週に3日、月水金だけ会社が終わったあとバイトしてるの。
別にお金に困ってるわけではない、恋人もいない寂しいOLの暇つぶしだ。
もっとも、どちらかというと気の弱い私がこの仕事を始めたきっかけはお小遣いが欲しかったからだが、お店の人も女の子もお客さんもいい人ばかりで居心地が良く、目標の貯金が貯まったにもかかわらず続けている。
ちなみにかすみというのはもちろん本名ではない、お店で使う源氏名だ。
荷物を空いているロッカーにほうり込むと手早く制服に着替える。
制服と言ってもパンティー一枚の上に薄いキャミを着るだけだからあっという間だ。
その間にも次々に女の子が呼ばれて行って誰もいなくなった。
こんな事は滅多にない、こりゃ本当に忙しそうだ。
「かすみちゃん行ける?」
従業員が顔を出す。
「大丈夫です」
「じゃあ早速頼むわ、だいぶ待たせちゃってるから。3番さんフリーね」
「はぁい」
…3番というのは広い部屋を仕切った3番目の個室で、フリーは指名客ではないフリーのお客さんという事だ。常連さんと違って、どうしたら喜んでくれるのかわからないので、あたりさわりのない入り方をするしかない。
私は薄暗い廊下を進んで③と書かれたカーテンを開ける。
ベッドにはラフな恰好の優しそうな男性。
歳は私より少し上の30ぐらいかな、イケメンではないが嫌いではない顔立ち。
私はすっと彼の隣に座る。
「お待たせしました、かすみです、ずいぶん待たせちゃったみたいでごめんなさい」
「いや、そうでもないさ、それにかすみちゃんみたいな可愛い子が来てくれたから、待ったかいがあったってもんだ」
そう言われて嬉しくない女の子はいない。
「ほんとですかぁ、じゃあ今日は特別サービスしちゃう」
そう言われて嫌がる男の人もいない。
私は彼の首に手を回すとディープキスをする。
彼の手がキャミの上から私の胸を触る。
ぞくっとした。
嫌な感じではない、電流が走ったというか、うまく言えないが初めての気持ち良さだった。
しばらく舌を絡めると唇を離し彼の体を押し倒した。
ベルトをはずしズボンを脱がせる。
そしてパンツに手をかけた時、私の手がつかまれ彼が体を起こした。
「?」
「…」
「こういうのは嫌いですか?」
「あ、ごめん、そうじゃないんだ、実は…」
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