この話はつづきです。はじめから読まれる方は「壁(改)1~悪夢~」へ
朝、ゴミ出しで石川さんと会った。
「恵子から聞いたんですけど、今度遊びにそちらへお邪魔してもいいですか」
「ええ、ぜひ。今度の土曜日とか私ん家で飲みませんか」
ちょっと意地悪で訊いてみた。
(土曜は彼氏とSEX三昧のはず。当然そっちが優先よね)
「えっ、いいんですか?じゃあぜひお邪魔させていただきます。恵子にも
来るように伝えておきますね。あの子、高瀬さんとお話できるの楽しみに
してたから」
(あれ?)
「あっ、はい。では土曜の8時頃に。準備してますから」
(その日は彼氏来ないのかな。ま、いっか)
コンコン
「どうぞ」
「お邪魔しまーす」
「あれ、由香里ちゃんだけ。恵子ちゃんは?」
「ごめんなさい。恵子、急に用事が入って、少し遅れるって。すみません」
「いいよ、いいよ。あ、紹介するね。もう会ってるよね、友達の佐藤一美」
「一美です」
「じゃあ、お近づきのしるしに、かんぱーい」
お酒も入り、ほんのり酔って、話も盛り上がってきた。
「私実は最近悩んでることがあって、相談に乗ってくれます?」
突如由香里ちゃんが神妙な顔をして泣きそうな顔で訴えかけてきた。
「もちろん、私達でよければ」
「実は私つきあってる人がいるんですけど、最近マンネリ気味で、お互い昔ほど
ときめかないっていうか、燃え上がらないというか」
「ふ~ん、つきあってどれくらい経つの?」
「2年半です」
「結構危ない時期かも」
「大好きな気持ちは変わらないのに、このままじゃいずれ喧嘩が増えて
別れてしまうかもって、最近不安なんです」
「わかるわ~、そういう時ってお互いの意識が大事なのよ。何かイベント的な事を
企画したり、サプライズ入れたりして二人で工夫していくのがいいと思うわ」
一美が珍しくまともな事を言い出すので、吹き出してしまった。
「ぷっ、一美が言っても説得力ないわね。何たって貴女が一番
長続きしないじゃない」
「うるさい!」
由香里ちゃんの表情も明るくなった。
「イベントか~。そうですね。ちょうどおねえさん達にお願い出来ないかなあって
思ってることがあって」
「えっ、なあに?」
その時だった。
・・・あっ、あんっ・・・
いつも土曜日に聞こえてくる喘ぎ声が壁の向こうから微かに聞こえた。
(えっ、なんで?)
私と一美は驚きの表情で目を合わせた。
・・・あ~ん。いいっ・・・
今度ははっきりと聞こえた。
(どうして?だって彼女ここにいるのよ。えっ、誰?)
今、何が起こっているのか解らず困惑している私達に由香里ちゃんが悪戯っぽく
言った。
「あれ~。この壁、私の部屋が丸聞こえなんですね」
ドキッ
(気まずい。別に悪い事していたわけじゃないけど)
「ふふ、おねえさん達、もしかしてこの声盗み聞きしながら、
レズってませんでした?」
「そ、そんなことするわけないじゃない」
一美がしどろもどろに否定する。
「って、否定してもバレバレでしたよ。音楽でカモフラージュしてた
みたいですけど、二人とも声が大き過ぎて丸聞こえでしたから」
返す言葉が無かった。私達は顔を真っ赤にして押し黙ってしまった。
「あ~あ、ショックだなあ。私いつの間にかおねえさん達のオカズに
されてたんだ。隣人のH声を盗み聞きしながら二人で盛り上がってレズるなんて、
あまりいい趣味とは言えませんねえ」
「私達にどうしろと?」
私は恐る恐る訊いてみた。
「そんな身構えないでくださいよ。別に脅すつもりなんて無いですから。
ただほんのちょっと、私達のマンネリを克服するのに協力してほしい
だけですから」
「・・・」
「じゃあ、OKととってもいいんですね。ところでこの声、ずっと私と
思ってたんですか?じゃあ、今隣にいるのはだ~れだ?」
「そ、そうよ。いったい何がどうなっているのか?」
ドンドン
由香里ちゃんは壁をこぶしで2回叩き合図を送った。すると喘ぎ声は止み
静けさが戻った。
「迎えにいってきますね」
そう言って由香里ちゃんは玄関の方に歩いていった。暫くすると誰かが入ってくる
音がした。
(まさか?)
ある人物が頭に浮かぶ。というか該当する人物といえばその子しか
思い浮かばなかった。部屋の入口に白いコートを羽織った子が立った。
(やっぱり)
相沢恵子だった。その後ろで恵子ちゃんの肩を両手でしっかり抱え込んで
ニヤニヤしている由香里ちゃんがいた。
「もうわかります?こういうことなんです」
そう言うと二人はキスを交わした。
「ええ~?でもこの間会った男性は?」
「ああ、あれは健二、私の弟です。実家から届け物を持ってきてくれたんです」
「な、なんだ。そうだったの。私はてっきり彼氏かと」
「あれが?まさか~、私、男性恐怖症なんです。だからずっと女子校だったんです。
この子も同じ。女子校育ちで、私の子ネコちゃん」
「へえ~、じゃあ二人とも男知らないんだあ」
一美がまるで他人事のように好奇心の眼差しで二人を見た。
「別に知りたくもありません。おねえさん達も似たようなものじゃないんですか?」
「まっ、まあ~私達は、ね、ねえ~」
「う、うん、そうね、それなりにいろいろと~」
貴女達がきっかけでレズに目覚めたなんてそれこそ言えなかった。
「・・・?まあ、いいわ。そこで本題」
由香里ちゃんが恵子ちゃんのコートを脱がせた。
「あっ!」
なんとコートの下は何も着ていなかった。まるでヴィーナスのような恵子ちゃんの
裸体が現れた。
「どうです?ビアンカップル同士、私達としてみませんか?」
「・・・」
「はっ?何を?」
「ですから、SEX」
「ええええええ~!!」
つづき「壁(改)6〜女神たちの宴〜」へ
コメント