タチとネコの関係 4_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

ホームページ 戻る 

タチとネコの関係 4

15-06-14 11:00

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「タチとネコの関係」へ

「ライバル企業であるXXXから、この度、縁あってこちらの会社にお世話になる
ことになりました田所道代です。こちらに入社したからには、このプロジェクトの
為に貢献出来るよう身を粉にしてやっていきますのでよろしくお願いいたします」

プロジェクトの総責任者が変わった。新しいリーダーはヘッドハンティングによって
ライバル会社から引っ張ってきた田所道代部長だ。年齢は40才。キリッとした
目つきが一切の妥協を許さない感じで、正にやり手であることを想像させる。
実際、ライバル会社からこの若さにして部長待遇で迎えられるのだから
超エリートなのだろう。社運をかけるこのプロジェクトの総責任者として、会社も
かなり彼女を高く評価していることがわかった。
「水野主任、後で資料を持って私の部屋まで来てください。現状を細かく知りたいわ」
「はい」
水野主任とは旧姓柴田。初音や凛達、後輩から常に頼りにされている、結婚3年目に
突入したばかりの七海先輩のことである。まだ子供はいない。よく旦那の両親の
愚痴を面白おかしく言っては周りを和ませている。チームの指導的立場でもあり
よって田所部長に最初に呼ばれたのだ。
七海のサポートもあり、新部長の手腕は早くも成果を出し始めた。徹底的に無駄を
省き、効率的に仕事を進めることによって、いくつかの難問をクリアにしていった。
凛はその仕事ぶりに早くから尊敬の念を持ち始めていった。それとは対照的に初音は
その豪腕なやり方にいまいち馴染めずにいた。

田所が入社して1ヶ月程経った頃、体制が整い遅ればせながら新部長の歓迎会が
行われた。宴は大いに盛り上がり2次会が終わって皆てんでバラバラになっていった。
凛と初音も二人っきりで行きつけのバーで飲んだ後、そのまま近くのホテルに
入ろうとホテル街を歩いていた。凛がふと路地に目をやった時、意外なカップルを
目にして、その場で立ち尽くしてしまった。
(えっ!?あれは・・・)
田所部長と七海先輩だ。凛の少し前を歩く初音は気付いていない。ホテルの前で辺りを
見回す田所部長と目が合った気がした。
(ヤバっ)
咄嗟に横を向いて顔を隠した。しかし気付く様子もなく田所部長はふらつく七海先輩の
手を引っ張るように素早くラブホテルに消えていった。
「凛、どうかした?誰かいたの?」
「あっ、ううん、何でもない」
凛は初音には何故か二人の事を言えなかった。
(えっ、どういうこと?部長と七海先輩って付き合ってたの?不倫?ていうか
部長も七海先輩もビアンだったの?)
頭が混乱して何がなんだかわからなかった。ただ尊敬する二人が不倫していることが
悲しかった。
「ここ、入ろう」
その夜、凛は初音に抱かれながら、田所部長と七海先輩の背徳のSEXを想像して
深いエクスタシーに達した。

話は数時間前に遡る。
2次会で一旦お開きになった歓迎会は、ここ、道代の馴染みのバーで、七海と
二人だけによる3次会がひっそりと行われていた。二人は既にかなり酔っている
風だった。
「もう、うちの人ったら、親にばっかり甘くて、私の言うことなんて一っつも
気にかけてくれないんですよ。なんだか、あの家で私だけ他人扱い・・・。
はあ~結婚当初はあんな人じゃなかったんだけどなあ」
七海の不満を道代はうんうんと頷きながら聞いている。
「男なんて、結婚しちゃったら妻のことなんて召使い程度にしか思ってないのよ。
飽きっぽい生き物なんだから。だから水野さんもここは割り切って、恋の1つや
2つぐらいしてみなさい。女は如何なる時でも恋愛してなきゃだめ。旦那に
ときめかないんだったら、外で羽伸ばせばいいのよ。その年で旦那や親の愚痴ばかり
言って老け込むなんて悲しいわよ。まだ若いんだから」
道代は過激だが、その雰囲気からか妙に説得力のある提言を七海にした。
「羽かあ~。とは言っても、周りにこれといった素敵な男性なんていないし。
ましてや知らない男の人と浮気する勇気なんて・・・」
「あら、浮気相手は男とは限らないわよ。女同士だってSEXはできるんだし。
むしろ女同士なら浮気の内に入らないから、初めて遊ぶ水野さんにはそういった
お相手の方がいいかも。女性同士の経験は今までないの?」
「あるわけないじゃないですか。確かにうちの会社、女ばかりでそういった噂は
あちこちにありますけど、私にはそういった趣味はありません」
七海は驚いたような目で道代を見てシラフに戻ったように答えた。
「あら残念。でももしかしたら、それは今までそういった機会に
巡り会わなかっただけで、食わず嫌いなだけかもしれないわよ。現にそう言う私だって
以前は男しか知らなかったけど、いろんな経験をして今は女とだって寝るわ。
むしろ女性の方が好きかも」
「えっ、部長って、そっ、そうだったんですか?」

意外なカミングアウトに七海は一瞬怯んだ。
「そうよ。こんな事、割と簡単に出来ちゃうものよ。妊娠もないし。要は経験ね。
水野さんはとにかく、日頃の鬱憤を晴らす為にも思い切った行動に出なきゃ。
枯れていくばかりよ。そうだ、もしよかったら、今から、私と予行演習してみない?
いきなり知らない男の人と浮気じゃ水野さんも抵抗あるでしょ。私だったら遊び感覚で
気軽に出来るわよ。秘密は守るし」
いつしか道代の手が七海の膝の上に添えられている。七海は困ったような顔をして
「えっ、でも、やっぱり旦那に悪いし。そこまでして私遊ぼうとは・・・」
「ちなみにつかぬこと聞くけど、旦那さんとの夜の生活は満足させてもらってる?」
道代の手はさらに際どく太ももを摩りながら妖しく微笑んだ。
「それは・・・」
正直このところ夜の夫婦生活は上手くいってない。旦那が急に淡白になったというか、
自分の女としての性欲が増したというか、おそらくその両方なのだろう。ここ半年は
満足したことがなかった。
「ふふっ、充分満足してますって顔じゃなさそうね」
本音を読まれて顔がカーっと熱くなる。そして太ももを摩っていた手はいつの間にか
背中を妖しく這い回っていた。七海はその手の動きに何やら言い知れぬ戦慄を覚えた。
道代はそんな七海の葛藤を熟知しているかのように、さらに追い討ちをかける。
「少なくとも私なら、今夜1回は確実に貴女を満足させてあげれるわ。
自慢じゃないけど私、そこ等辺の男なんかよりずっとテクニックには自信あるの。
少しだけ証明してあげる」
そう言ったかと思うと突然七海の唇を奪った。七海が妖しいボディタッチでボーっと
していた中、突然の出来事に拒否する間もなく、舌が入ってきた。初めての女性との
キスは七海がそれまで知るキスとは明らかに違った。蕩けるような柔らかい感触。
思わず人恋しくなるような切ないキスにいつしか七海は夢中になっていった。道代が
唇を離した時には、糸引く口を半開きにし、とろ~んとした眼差しで道代を見上げる
七海がいた。もう新妻は事の成り行きに身を任せるしかなかった。
「どう?証明になった?」
七海は小さく頷いた。
「決まりね。期待してていいわよ」
道代はスッと立ち七海の手を引き店を後にした。

つづき「タチとネコの関係 5」へ


コメント
お名前:
気持ち:

コード:

お知らせ

なし

小説を検索