タチとネコの関係 2_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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タチとネコの関係 2

15-06-14 11:01

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「タチとネコの関係」へ

「く、くだらない?くだらないとは失礼ね。こんな下品なものを作る
貴女こそくだらないわよ」
「これはれっきとした我が社の商品です。貴女にとやかく言われる筋合いは
ありません。貴女も営業なら足だけじゃなくて頭も使うことね」
坂口初音と一の瀬凛は衝突から始まった。

「このカマトト女!」
「何よ。脳ミソ筋肉女!」
最後には自らの主義主張ではなく、けなし合いになり、周りが慌てて止めに入った。
お互いこんなにムカつく女が今まで同じ会社にいたとは思わなかった。そんな二人が
何の因果か、あるプロジェクトチームのメンバーに抜擢されたのだ。当然お互い異議を
唱えたが好き嫌いでどうこうなるわけもなく、渋々同じプロジェクトメンバーとして
協力し合うことになった。だが実際仕事を進めていってみると、さすがメンバーに
抜擢されるだけのことはあって、お互いがお互いの仕事ぶりを認めざるをえなかった。
そんな時、凛はある噂を耳にした。初音がレズではないかという噂だった。駅前の
噴水の所で綺麗な女性と抱き合っていたとか、初音らしき人が女性と手をつないで
ホテルに入っていくのを見たとか。確かに初音は髪はショートで、いつも男っぽい
格好をしている。スカート姿なんか見たこともない。プライベートの事を話す程仲が
良いわけではないから、男がいるかどうかなんて全くわからないが、そういう甘えた
ような雰囲気は確かにない。ただ凛にとってはそんな噂自体、興味なかった。でも
レズじゃないかというだけで、周りの初音を見る目が陰湿になるのは気に食わなかった。

ある日の終業後、忘れ物をしてオフィスに戻ってきた凛の目に映ったのは、机に伏せて
一人シクシクと泣いている初音だった。初音は凛に気付くと慌てて涙を拭って、又
いつものようにキリッとした顔立ちで机に向かった。しばらく沈黙が続く。凛は何か
見てはいけないものを見てしまった気持ちになり気まずい雰囲気がオフィスに流れた。
「私、忘れ物取りに来ただけだから」
そう言って急いで机の引き出しを捜す。初音は無言のままだ。
(何で泣いてたんだろう。普段はあんなに勝気で気が強そうなのに)
忘れ物を見つけて立ち去ろうとした時、凛はふと立ち止まった。
(えっ、私、何言おうとしてるの?どうして立ち止まっちゃったの?)
凛は初音の方に振り向いた。不思議そうな顔で初音がこちらを見ている。
「ねえ、もしよかったら、これから二人で飲みに行かない?」
自分でも意外なセリフだった。特に仲良くしているわけでもない。どちらかと言うと
苦手なタイプ。だが第一印象が極端過ぎたのも間違いない。ここらで何らかの
きっかけが欲しかったのかもしれない。
「・・・どうして?」
「ん?何が?」
「どうして私が貴女と仲良く飲みに行かなくちゃならないの?」
凛は当然と言えば当然だが初音の冷たい言葉に恥ずかしさを覚えた。だって自分でも
訳がわからないのだから。
「えっ、ほら、明日休みだし、なんかこうパーッと憂さ晴らししたいなあって」
初音がスッと立ち上がった。
「わかった。行こう」
初音は返事をしたかと思うと足早に凛の横を通り抜けていった。
「へっ?ちょっ、ちょっと待ってよ」

バーのカウンターでは二人の笑い声が絶え間なく響いていた。
もう日付けも変わっている。初音と凛はまるで昔からの親友のように談笑していた。
今までの敵対心やわだかまりが嘘のように一気に流されていた。
「あっ、いけない。もうこんな時間。私、終電もうない」
「いいじゃん。終電なんて。朝まで飲めばいいだけよ」
「・・・」
凛が困った顔で眉間にしわを寄せる。
「じゃあさ。私ん家に泊まりなよ。せっかくこうして仲良くなれたんだからさ。二人で
タクシーつかまえて。そうしよ。そうしよ」
いつまでも陽気な初音は名案とばかりに早速お勘定を頼んだ。

「あ~疲れた~。ただいま~」
誰もいないはずの部屋にふざけるように初音が挨拶をする。
「お邪魔しま~す。意外、初音ちゃん、結構小奇麗にしてるのね」
目をパチクリとして驚きを隠せない凛が突っ立っていると
「あ~、これ私のだけどよかったら着てみて」
初音が自分のパジャマを手渡してくれた。初音はもうスーツをさっさと脱いで着替え
始めていた。凛はドキッとした。ブラとパンティだけになった初音の体のラインが妙に
艶かしく写った。ふと社内で噂になっている事が頭に浮かんだ。
『初音はレズかもしれない』
(もしかして私、ヤバイ状況にある?)
一旦そう意識してしまうと頭がそっちの方ばかりに向いてしまう。飲んでる時は、
レズの噂の事、オフィスで泣いていた事、それらは一切口にしなかった。
聞かれたくないと思ったから。モジモジと立っていると初音に声をかけられた。
「どうしたの?早く着替えなよ。あっ、それよりサッとシャワー浴びる?」
「えっ、いい、いいです」
思わず声が裏返って変な言い方になってしまった。
「・・・あっそ。なら私シャワー浴びてくるわ」
しばらくの沈黙の後、初音は無愛想にそう言うと、さっき着たばかりのパジャマを
脱いでその場で素っ裸になり、さっさと浴室に消えていってしまった。気分を悪く
させてしまったかもしれない。凛はあまりの自分のうろたえた様子を後悔した。あれだけ
無関心を装っていたのに、いざ自分がその立場になってみると簡単に噂に
踊らされてしまった事を恥ずかしく思った。初音は自分の急な態度の変化を見て敏感に
感じ取ったのかもしれない。それでわざとこの場で裸になり急にシャワーを浴びに
行ったのかも。
(はあ~、せっかく仲良くなれたのに。私のバカ)
初音がシャワーから出てきた。相変わらず全裸のままだ。
「あっあの、さっきはごめん。せっかく気を使ってくれたのに。私別に意識するつもり
なかったんだけど」
「いいよ、別に。気にしないで。それより私はソファで寝るから凛ちゃんベッドで
寝なよ」


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