この話はつづきです。はじめから読まれる方は「同愛」へ
あー、あの人が来よる。
臨時やけど町内少年サッカークラブの監督さんやからな。
なーんや、眠そうな顔しとる。
でも、練習が無い日も一応、町内の人達と話し合いをせなあかんらしいからなぁ。
ほーんま、ごくろーさんや。
へへっ、しかし、ラッキーやったな。練習無い日もあの人と会えるなんて。
昨日、親父に聞いた通り朝からプレハブ事務所に来よった。
待ち伏せ成功や。
一応、設立した親父の顔を立てて息子のウチも練習には出とるけど、ほんまサッカーなんて興味無いんやウチは。
直ぐに辞めるつもりやった。
やったのに。
あの人が監督で、あの人と会う内に。
あ~っ、かろうじてポニーテールは死守したんやけど…。
あぁ、あかん。
緊張しよる。
お股がなんかギュって緊張しよるわ。
落ち着け。
落ち着くんや、自分。
あいさつや。
あいさつだけすればえぇねん。
さりげなく。
さりげなく、こんにちはや。
…と、くそぅ。
無駄にでけぇなこの人。
気付いて無いし。
ウチの存在に気が付いて無いし。
ちっ、このデカ助めっ。
こら、こっちや、こっち向け。
こっちや言うてんやろ、このデカす、あっ。
目が。
目が合ってもーた。
あ、と、えっ、なんや、なんやったけ。
う~、あかん。
恥ずかしい。
なんや、全部見られとるみたいや。
そないじっーと、見らんといてぇやぁ。
恥ずいわぁ。
う~、火が出とる。
顔から火がボウボウや。
どーしよ。
変なんかな?
…やっぱ、あかんのや。
これはキモい思うとる顔や。
いつもの服で来れば良かった。
もう、もう、この人の目の前には現れられへん。
最悪や。
今日は最悪の…え?
…うそ。
うそや。
そんなん、うそや。
いやや。
やめてよ。
あかんよ。
そんなん言わんでよ。
あかんて。
ウチ、そんなん言われたら…。
どーしよ、なんでや、なんで可愛いなんて…。
もしかして、この人はわかっとるん?
もしかして、この人は見えとるん?
いややっ!?
あかんよっ!?
見られとる。
ウチの心の中、見られとる!?
恥ずい…。
どーしよ、昨日の変な妄想とか。
いつもする時のやらしい想像とか。
うぅ、違う。
見えとらん。
偶然や。
ただこの人はお世辞で可愛いって言うとるだけや。
だって、あらへんもん。
ウチが可愛いなんて、あらへんもん。
でも、なんでや、お世辞てわかっとる。わかっとるのに、っあ!?
おま、お股が…
つづき「同愛4(参)」へ
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