我が姉 4_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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我が姉 4

15-06-14 11:04

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「我が姉」へ

「っお?ふぉおっ!?」
真っ二つに割れたDVDと姉を交互に見上げる。まるで、信じられないものを見た様に、いや、実際信じられないものを見たんだけども。
「いやぁ、雪斗って本当にお姉ちゃんとの想い出を大事にしてくれるよねー?」

割れたDVDを胸に抱き締め、姉が思い出す様に瞳を閉じる。
「ちっちゃい頃によく行ったレンタルビデオ屋さん。毎週金曜日は半額デーだったから」
うんうんと頷きながら姉は涙を拭う様な仕草をする。涙など微塵も出ていないが。
「ちっちゃい雪斗を手に連れながら、お姉ちゃんのお小遣いで1人1本ずつ。雪斗は男の子だからロボットアニメか特撮ヒーローか…ぐすん」
と続ける姉の瞳に一筋の涙…など流れもしない。
「でも、それが雪斗をこんな道に進ませることになるなんて」
ギュッと握ったDVDをペッ!と地面に捨て去る姉。
「雪斗ったら子供がてらにアニメのセリフを連呼するからお姉ちゃん間違って覚えちゃって学校で白い目で見られるし」
いや、知らんがな。

「雪斗は雪斗で現実よりアニメの女の子に興味持っちゃうし!」
いや、二次元よりは現実の方がいいけど?
「まったく、お姉ちゃんがこんなに現実の女の子は素晴らしいよっ!てアピールしてるにも関わらずっ」
そうだったのか?
「それを無視するとわ、なにごとかーっ!」
ガシッと姉が俺の頭を掴む。
「さぁ、目覚めなさい雪斗!」
「てゆーか、金返せ」
「……」
「……」

一瞬の沈黙。
姉は俺のやっとの言葉に驚きの表情を隠せない。
「…えっ、逆ギレ?」
なんでだよ。

「なんて、酷い弟なの?」
ヨヨヨッと体を崩れ落とす姉。どっちが酷い奴なんだよ。俺は倒れる姉を無視して、割れたDVDを拾い上げ、とりあえず自室に戻ることにする。もはや、姉になど構っていられない。今回の被害は酷すぎる。限定ボックス中の一枚が割れてしまったのだ。これは個別に買い直せという訳にはいかない。
まったく、馬鹿。
まったく、あほ。
まったく、どーしようもない。
「…あれ?あれ?雪斗?雪斗?」
まったく…。
「!」
途端、目の前の光景が大きくなる。いや、体が床に倒れて視線が下がったのだ。
「な、なにすんだ馬鹿!」
「馬鹿でもいい!アホでもいいっ!」
いい加減堪えかねて激昂を飛ばすが、姉もそれと同じくらいに叫ぶ。
「怒ってもいい、呆れてもいい…でも、でも、無視だけは…嫌だよぉ」
そう言った姉の頬には今度は本当に涙が流れいた。


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