トライアングルラブ 9(幸子)_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

ホームページ 戻る 

トライアングルラブ 9(幸子)

15-06-14 11:09

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「トライアングルラブ」へ

コンビネ-ションはボロボロだった。この部1のペア、山下・飯田ペアは見るも無残に1年生ペアの中島・橘ペアに敗れた。言葉は無かった。結花がはしゃいで喜んでいた。

いつもシゴかれている先輩ペアに奇跡的にも勝ったのだ。うれしさを隠せなかったのだろう。私は正直テニスどころではなかったのかもしれない。無言で引き上げるミサを目で
追っていた。その日はコ-チに呼ばれてさんざん説教された。当然だろう。私達二人だけ居残りで特訓を受けた。練習の後、二人っきりしかいないシャワ-室で思い切って聞いてみた。
「この間、ミサはなんであの店にいたの?」
「・・・」
頭のテッペンがかろうじて見える、板1枚で仕切られた隣のシャワ-ボックスからは、返事が無い。
「あそこがビアンバ-だって知ってたの?ミサは昔からレズだって、結花が言ってた。本当なの?一緒にいた人がミサの恋人?」
「・・・」
隣のシャワ-が止まりミサがボックスを出た。と思った時
ギイ-
私のボックスの扉が開き、裸のミサがそこに立っていた。
「キャッ、なっ何」
私は慌ててシャワ-を止め、バスタオルで胸を隠す。髪から顔から体からビショビショのミサがボックスに入ってきた。狭いボックス内で私は壁にもたれかかるようにミサから
距離をとろうとする。すると突然ミサが私の唇を奪った。
(えっ!)
私は体が固まってしまい、気が動転した。(ミっミサ。どうしたの?何してるの?)
「んんっ、んっ」
突然のことで私は持っていたバスタオルを落とし、ミサのオッパイが直接私のオッパイに触れる。
「いやっ、止めて」
私は戸惑うようにミサを突き放した。ミサはよろけながらも悲しい表情で私を見つめていた。

「どうして?なんでミサがこんなことするの?なんで?」
私は腕で前を隠しながら、叫んだ。
「・・・」
すると、ミサが私を抱きしめてきた。私達は二人とも真っ裸だった。私はボ-ゼンと動けなくなった。終始無言だったミサがポツリと耳元で囁いた。
「好き。ずっとサチが好きだった。サチが誰よりも好き。誰にもとられたくない」
突然の告白に頭が混乱する。(そんな、ずっと親友だと思っていたのに・・・)
ピクッ。ミサが首筋にキスをしてきた。手で私の胸を優しく撫でる。ミサはさらに首筋を強く強く吸う。
『キスマ-ク見えてますよ』そこは、結花と初めて過ごしたホテルの前で、ミサに見られたキスマ-クのあった場所だ。ミサの切ない気持ちが私の心に流れてくる。涙が込み上げてきた。
「あああ、ミサ、ああん、どうして?あああ、私、私貴女のこと・・・」
ガタッ
その時近くで物が倒れる音がした。二人はビクっと体が止まる。頭にハッと結花の顔が浮かんだ。
「ダメ-ッ」
私は今度こそ思いっきりミサを突き放した。ミサはシャワ-で濡れた顔がくしゃくしゃになっていた。私はその場でしゃがみ込んでしまった。
「もう遅いよ。遅いのよ。私は、私は貴女に応えられない。私、結花のことが好きになってしまったの。身も心もあの子に奪われてしまったの。何もかも遅いのよ。わあああん」
濡れた床に向かって大声で泣き叫んだ。友達として大好きだったミサの心の痛みと、結花なしでは生きていけないほど彼女を愛してしまった想いが交錯して、小さな子供のように
思いっきり泣いた。
「ごめん。忘れて」
とだけ言ってミサはシャワ-室を出て行った。

つづく「トライアングルラブ10」へ


コメント
お名前:
気持ち:

コード:

お知らせ

なし

小説を検索