この話はつづきです。はじめから読まれる方は「トライアングルラブ」へ
私達のテニス部はそんなに強くはない。が、私達のペア、山下・飯田ペアはそんな中でかなりいいところまでいく。優勝経験も幾度となくある。だから部にはコ-チもいるが、
私達もよく下級生の指導を任される。
ミサは親切丁寧に指導するが、私はその立場では鬼コ-チになる。手加減しないし、スパルタ教育でよく特訓する。
「こら!結花、休むな」
「ヒ-、体がもう動かない」
「まだまだ。あと100本」
「本当もう許してぇ~」
「こんなもんじゃないよ。暗くなるまでやるからね」
「もう、だめ~、死んじゃうよ~」
別にいじめている訳ではない。試合に勝つために、強くなってもらいたいから心を鬼にして厳しく教えるのだ。私達も歩んできた道だ。
「ああ、きつかった~。今日の練習。お腹ぺこぺこ。サチ先輩、何か奢ってくださ~い」
「こら、結花、何甘えてんの。サチは自分の練習時間削ってでもあんた達の指導してんのよ。少しは感謝しなさい」
ミサはいつもわかってくれる。誰が好き好んで鬼コ-チになるもんですか。全ては後輩の為。でも今はいいの。これは私達の合図。今夜デ-トしようという結花のサイン。だからいいの。
「しょうがないなあ。結花もがんばったんだから、しょうがなしだよ」
「はい、ありがとうございます」
私は早くも期待で胸が高鳴った。
夜になると昼間とは立場がみごとに逆転する。
「ヒィィィ、もうだめぇ~死ぐう、死んじゃううう、あああああ」
「あはは、こんなもんじゃないわよう、幸子。その証拠にまだ指すら入れてないのよ」
「はあ、はあ、はあ、もう、もう許して、結花~、おかしくなっちゃう」
「何言ってんですかあ。夜はこれからですよ。今夜は幸子を朝まで寝かせないんだからあ」
「あっあっあっ届く、奥まで届くう、結花~、いっいっいっちゃっていいい?」
「ふふまだまだよ。もう少しがまんして。そうしたらもっと深いエクスタシ-味わえるから。後100回は突いてあげる」
「はあ、はあ、体がバラバラになったみたい。こっ腰が抜けた。快感で腰が抜けるってことあるのね。ちょっちょっと助けて結花」
半年前の私からは今の自分を想像すら出来なかった。私がレズにこんなにもはまるなんて。後輩の女性に抱いてとおねだりをする、はしたない女になるなんて。私はもう結花に
ぞっこんだ。それでも良かったと思う。誰が私をこんなにも感じさせてくれるだろうか。誰が私をこんなにも長く濃密に愛してくれるだろうか。女であることの本当の喜びを
教えてくれたのはまぎれもなく結花なのだ。例えそれが女性だろうが後輩だろうが。
「結花、明日町にショッピングに行かない?」
「うん、行く!」
結花は夜とは違い、普段は本当に10代そのもの、子供っぽくはしゃぐ。
「幸子見てあれ、おもしろ~い」
「キャ-、これかわいい!」
そんな姿を見ていると、夜の姿とどうしても重ならず別人と付き合ってるかという錯覚に陥る。
「ねえ、久々にホテルに泊まらない?」
「ヤッタ-、じゃあその前に幸子と行きたかったお店があるの。バ-なんだけど幸子もきっと気に入ると思うよ」
私は結花に誘われるままそのバ-に入った。
「ママ、空いてる」
「あら、珍しい客が来た。久しぶりねえ、結花ちゃん」
「ごめん、なかなか来れなくて、私の彼女、幸子よ」
「ちょっと、結花?」
「平気平気、ほら周りよく見てみて。女性ばっかりでしょう。いたるところにカップルも」
確かに店はほぼ満杯で全員が女性だった。
「ここはレズの人達がくるビアンバ-なの」
「えっ?」
驚いた。話に聞いたことはあってもはじめて来たそれは、こんなにもレズの人達がいるのかと思うばかりの盛況振りだった。
バ-の片隅でこんな会話がされていることを私は知る由もなかった。
「ねえ今来たあのカップル、背の低い方、かなり可愛いじゃない。タイプだわ」
「やめときな。痛い目みるよ。あんた最近ここに来だしたから知らないのも無理ないけど、ああ見えて、あの娘、バリバリのスカダチだよ。それもかなりのテクニシャン。あの娘と寝た子はみんな骨抜きにされて、挙句の果てには飽きられてポイさ。捨てられた子の悲惨さは相当なもんだったって話さ。連れの彼女かなりの美人だけどいつまで持つことやら。
あんな子が捨てられて絶望の淵に立たされると思うと不憫だよ」
「あれ!京子さん?京子さんだよねえ。やあ~ん。久しぶり」
「(ちっ)あら、久しぶり結花じゃないの。最近見かけないと思ってたらどうしたの?また新しい彼女?」
「京子ちゃん・・・」ママがたしなめた。
「いやだあ、京子さん、まっ私の彼女の幸子。よろしくね」
私はここでは完全に浮いていた。というより結花が浮いていた。私は結花の過去を知らない。どうも常連だったらしいことは分かるが、どういう人間関係なのかは皆目見当が
つかなかった。
「京子さんこそ相変わらず一人?」
「結花ちゃん・・・」再びママが結花をたしなめる。
「京子ちゃんは待ち合わせだよ」
しばらくすると扉が開いた。
カランカラン
「京子さんすみません。電車が止まってしまって遅くなっちゃいました」
「京子ちゃん、来たようよ」
「ママ、水割り」
私はガタッと席を立ち上がった。
「ミサ!」
「えっ」
京子という女性の待ち人は親友のミサだった。(なんで?)
つづく「トライアングルラブ7」へ
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