美優夫人の飼い犬
この話は続きです。はじめから読まれる方は「美優夫人の飼い犬」へ いったい‥ 自分がこうして拉致されてから何日位経ったのだろうか‥ 来る日も来る日も,肥溜めの底にいる様に女の糞便を浴びせられるだけの日々が続いた。 ギーッ‥ この部屋の壁の一部が開き,屈強な男が入ってきたのは祐一が捕らわれて3日目の事だった。 「ひでぇ匂いだな。」 顔中を覆う夫人の糞便と自らの漏らしたものが祐一の体臭の様に,男は顔をしかめてビニールの手袋を嵌めた手で,手足の拘束具を外した。 「立てるか?」 男に手を引かれて身体を起こすと背中が軋んだ。 「かわいそうにな。諦めるんだな‥」 消毒薬の匂いが鼻をつくシャワー室へ連れて行かれた。 足にも力が入らず立って歩くのもやっとの思いだった。 頭から熱いシャワーを浴びて身体中の毛穴を覆っていた様な糞便から解放されると呼吸さえも楽になった。 野菜ジュースとミネラル水を与えられて,やっと生きている実感を感じたのだった。 「ゆっくり休め。」 男が姿を消すとテーブルの上に残されたピッチャーの中に残ったミネラル水とバナナの味のする栄養剤を口に入れた。 改めて部屋を見回すとどこかのスポーツ施設のミストルームの様だった。 腰掛けている白い椅子とテーブルをガラス張りの壁が囲み,初めてシャワーを浴びたままの裸でいる事に気付いた。 「落ち着いたか?行くぞ。」 先ほどの男が顔を出し声を掛けた。 「どこへ?」 またあの暗い肥溜めの底の様な部屋へ戻されるのかと思うと恐怖に包まれる。 男も察してか 「安心しろ。」 と言葉少なにドアを開けたまま顎で出る様に促したのだった。 奇妙な建物だった。 壁も天井も真っ白なペンキで塗られ,窓もない廊下を男に続いて歩いた。 突き当たりのドアを開けて男が振り返る。 「入るんだ。」 明かりの漏れる空間に3日間閉じ込められた場所と違うのを見て安心した。 入るとモニターに映っていた女がソファーに足を組み座っていた。 「あ‥!」 どこかで見た気がしていた女の顔をようやく思い出したのだった。 テレビで時折見る,中年の女優‥ 「あの‥沢口真理枝さんでは?」 つづく |
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