十二月も残すところ、あとわずかとなってきた。
不景気だといいながらも、なんとなく町は活気づいてきたし、人の足取りも慌ただしくなってきた気がする。
今年の正月もまた一人か・・・・と、朝の出勤時、コートのエリを立てて駅につづくアーケードを歩いていた前岡拓也は、空にむかって白いため息を吐いた。
ノーネクタイで、セーターのうえにコートをラフにはおっていたが、見るものが見れば、身につけているすべての物が上質であることは一目で見抜くであろう。
それもそのはずで三年前まで一流商社の課長だった前岡は、同期入社のなかでは一番の出世頭で、肩で風を切ってブイブイいわせていたのである。
いつでもヤレる若い女子社員を常にふたり以上はキープしていたし、飲み屋にも複数の女がいて、まさに我が世の春とばかりに人生を謳歌していた。
そんなある日、以前からなにかとソリの合わなかった部長に呼び出されてとつぜん解雇を言い渡された。わけがわからないまま呆然として家に帰ると、なんと、たった二行の書き置きを残して妻までが消えていたのであった。
拓也をクビにした部長と妻が以前からデキていたことを、のちに家族ぐるみで付きあっていた同僚から聞かされて愕然とした。
おそらく、妻に入れこんだ部長が嫉妬して拓也をクビにし、それを知った彼女はいたたまれなくなって出ていったのだろう。
社内や飲み屋の女たちも潮が引くように消えて行き、会社と妻と、そして付きあっていた女たちからもリストラされた前岡は、失意のどん底に落ちた。
半年ほど失業保険でブラブラしたあと、今の小さな町工場に勤めるようになったが、そのころからようやく気分が持ち直してきた。
なぜかというと、工場に行くようになってから毎朝、ショートヘアーがとてもよく似合った可憐な女子高生とすれ違うようになり、年甲斐もなくその少女を意識するようになったからだった。
まだ、どの商店もシャッターを閉じていたが、長さが50メートルあるかなしかの、このアーケードの、ちょうど真ん中あたりで毎朝彼女とすれ違う。
幅が3メートルにも満たないこの道を、パンティが見えそうな短いスカートで、真正面から自転車をこいでやってくるのである。
前方に、はつらつとした少女を認めたとたんに胸がときめく前岡は、彼女が数メートル手前にくるまで素知らぬ顔をする。そして、直前まで来たころを見計らって、さりげなく顔をあげるのであった。
ムチムチした太ももの根元がスカートに見えかくれする様はとても悩殺的で、今日こそはパンティを見てやろうと目を皿のようにして身構えるのに、一度も見たことがなかった。
「やっぱり。ここだとおもってた。きのう間違って良子の携帯をもって帰ってしまった
の」
「えっ? 」
「ははーん、ひょっとしたら良子のメールを見て何か勘違いしたんでしょ。ダメだよ拓也さん、人のメールを見ちゃあ」
「え・・・ええーっ、リサの携帯じゃなかったのか? 」
「うん、おなじ機種だからよく間違ってもって帰ったりするの」
「その良子って子、オヤジとつきあってんのか? 」
拓也は自分でいって、おかしかった。 「うん、みたい。そんなことよりも、ねえ今日はお泊まりしてもいいでしょ? ママにウソをつくのはイヤだったけど、友達と初詣でにいくって家を出させてもらったの」
拓也がバネのように首を縦に振っている。
「昼間、用事があるって帰ったのは、このオデンを作るためだったの。拓也さんに食べさせてあげたくて、ママに教えてもらいながら作ったんだ」
といったリサが、パジャマやら、おそらく着替えの下着であろうが、そんなものでパンパンに膨らんでいた大きなトートバッグから、オデンの入ったタッパーを取りだして見せる。 ウットリするような笑顔だった。
母親の香水をつけてきたみたいで、官能的な香りをほのかに漂わせていたリサは、まえを開け放した仕立てのいいコートのなかに、尻の肉がはみ出そうなジーンズの短パンをはいていた。
こんなに寒いのに、平気でこんな格好ができるピチピチした娘が自分の女なのだと、しみじみと実感と愉悦が込みあげてきた拓也は、ホカホカしたリサの身体をギュッと抱き締めて耳元でささやいた。
「そのフアッションもいいけど、わたしはやっぱりどっちかというと、セーラー服にパンティが見えそうな短いスカートの方がいいな」
「うふっ、じゃあ卒業しても捨てずにとっといて、結婚しても時々着て見せてあげるね」
クラッ、となった。
拓也は、いまのリサのことばを頭のなかで何度もリピートした。
短パンを脱がされ、ちょっぴり背伸びして買ったピンクのハイレグパンティの股間に鼻をうずめられていたリサは、快感にたゆたいながら、いつ拓也さんに教えてあげようかしらと考えていた。
毎朝拓也と会えるように苦労してタイミングを計っていたことや、きっかけを作りたくて、ワザと自転車でぶつかったことなど
を・・・・。
ステレオから大音量で、ストーンズの「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」が流れていた。
三年間、まったく音楽を聞く気になれなかったのに、リサと会ってからまたロックが聞きたくなってきて、クローゼットにしまいこんであったCDを引っ張り出してきたのだった。
スピーカーのうえに十枚ほど出してあったが、それをじっくり聞きかえしながら、ひとりで年を越そうと思っていた。
携帯が鳴っているような気がしたのでステレオの音をさげてみると、リサが忘れて帰った携帯に着信が入っているようだった。メールのようだ。
なにげなく手にとって、見るともなしに見ていた拓也の顔から、みるみる血の気が引いていった。 《またオヤジと付きあってんの? はやく取れるだけ取って捨てちゃいなよ。ケンジをほったらかしにしてるから、アイツ、わたしに襲いかかってきそうだよ》
メールをよんだ拓也は愕然とした。
はなしがデキすぎだとは思っていたが、あんな可憐な顔をしてダマそうとたくらんでいたなんて・・・・。
彼女のおかげで人生が変わりそうな気がしていただけに、どん底に突き落とされたような気分だった。
明かりもつけずに真っ暗な部屋で茫然自失としていた拓也は、目が回りそうなほど腹が減っていたが、食べる気力すら無くしていた。
さっきからチャイムが鳴っていたが、出る気にもなれなかった。放っておいたら、しつこくノックするしノブをガチャガチャ回してうるさいので、仕方なく立ち上がった拓也はフラつつきながら玄関にゆきドアを開けた。「どうしたのっ? びっくりしたじゃないの。明かりもついてないし、チャイムを鳴らしても出ないから、もぉう」
彼女らしからぬ大きな声で一気にまくしたてながら明かりをつけたリサは、憔悴しきった拓也の顔を見て驚いた。
「ねえ、一体なにがあったの? 」
リサの顔を見たとたんに怒りが込みあげてきた拓也は、返事もせずに投げてあった携帯をもってきて、
「なんだこのメールは? 」
と、憮然としてリサに手渡した。
「やっぱり。ここだとおもってた。きのう間違って良子の携帯をもって帰ってしまった
の」
「えっ? 」
「ははーん、ひょっとしたら良子のメールを見て何か勘違いしたんでしょ。ダメだよ拓也さん、人のメールを見ちゃあ」
「え・・・ええーっ、リサの携帯じゃなかったのか? 」
「うん、おなじ機種だからよく間違ってもって帰ったりするの」
「その良子って子、オヤジとつきあってんのか? 」
拓也は自分でいって、おかしかった。 「うん、みたい。そんなことよりも、ねえ今日はお泊まりしてもいいでしょ? ママにウソをつくのはイヤだったけど、友達と初詣でにいくって家を出させてもらったの」
拓也がバネのように首を縦に振っている。
「昼間、用事があるって帰ったのは、このオデンを作るためだったの。拓也さんに食べさせてあげたくて、ママに教えてもらいながら作ったんだ」
といったリサが、パジャマやら、おそらく着替えの下着であろうが、そんなものでパンパンに膨らんでいた大きなトートバッグから、オデンの入ったタッパーを取りだして見せる。 ウットリするような笑顔だった。
母親の香水をつけてきたみたいで、官能的な香りをほのかに漂わせていたリサは、まえを開け放した仕立てのいいコートのなかに、尻の肉がはみ出そうなジーンズの短パンをはいていた。
こんなに寒いのに、平気でこんな格好ができるピチピチした娘が自分の女なのだと、しみじみと実感と愉悦が込みあげてきた拓也は、ホカホカしたリサの身体をギュッと抱き締めて耳元でささやいた。
「そのフアッションもいいけど、わたしはやっぱりどっちかというと、セーラー服にパンティが見えそうな短いスカートの方がいいな」
「うふっ、じゃあ卒業しても捨てずにとっといて、結婚しても時々着て見せてあげるね」
クラッ、となった。
拓也は、いまのリサのことばを頭のなかで何度もリピートした。
短パンを脱がされ、ちょっぴり背伸びして買ったピンクのハイレグパンティの股間に鼻をうずめられていたリサは、快感にたゆたいながら、いつ拓也さんに教えてあげようかしらと考えていた。
毎朝拓也と会えるように苦労してタイミングを計っていたことや、きっかけを作りたくて、ワザと自転車でぶつかったことなど
を・・・・。
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