by 井上林檎
1
溜息が聞こえたので、山賀俊輔は視線を上に向けた。テーブルの向かい側に座っている川村真理は、シャープペンシルの先で自分のこめかみのあたりをたたきながら、助けを求める様な視線を俊輔に送っている。困って眉を寄せているときの真理もかわいいなと思いながら、
「わからないの?」と俊輔は尋ねた。
「この問題、どうしても解けなくて。教えてくれない?」
「どれどれ。あ、これね。ここに補助線引けばすぐできちゃうよ。」
俊輔は、図形の中に一本の補助線を引いて、解き方を説明した。
「なんで解かるの?ほんと数学得意だよね。あたしにもその頭を分けてほしいな」
「そんなことないって」俊輔は照れ笑いをした。
俊輔と真理は同じ進学校に通う高校三年生だ。高二のころから、付き合い始め、そろそろ一年になろうとしているが、キスまでしかしていない。俊輔がそれ以上を求めても、そのたびに真理はきっぱりこういうのだ。
「俊輔のことは大好きだけど、あたしたちは受験生でしょ。大学に受かるまでは勉強に集中したいの。それまでがまんして」
初めてのキスは、付き合い始めて半年後だった。日曜日のデートで遊園地の観覧車に乗ったときだ。一番高いところに達しようとする直前、それまで向かい側の席で少しずつ開けていく景色に目をやっていた俊輔は、真理の隣に移動し、肩に手をかけると抱き寄せた。ありったけの勇気を振り絞り、真理の唇に自分の唇を近づけた。真理は覚悟を決めたように目を閉じ、俊輔の唇を受け止めた。二人はしばらくの間、唇を押しつけ合っていた。やがて、真理がそっと俊輔を押しのけ、二人の淡い初キスは終わった。
次のデートで二回目のキスをしたときは、俊輔が舌を入れた。拒否されると思ったが、意外にも真理は俊輔の舌を受け入れた。夢中になって舌を動かすと、真理も控えめにそれに応じた。舌を絡め合っている間、俊輔の包皮が剥けたばかりの肉幹には、かつてない激しさで大量の血液が送り込まれ、痛いほど硬くなった。しかし、それまでだった。俊輔が舌を絡めながら、真理の胸に手を当てると、真理はすぐにそれを払いのけた。払いのける手の力には強固な意志が感じられた。
「これ以上はだめ。大学に合格したらね。わかって」
欲望の火種が燃え上がろうとする手前ですごすごと退却するしかなかった。
それから一週間たったゴールデンウィークの二日目、俊輔と真理は真理の家のキッチンのテーブルで仲良く勉強していた。真理は一人っ子で、両親と三人暮らしだった。その日、真理の両親は買い物で出かけていて、家の中には真理と俊輔だけだ。二人は並んでテーブルに座って問題集とノートを広げ、学校から出された宿題をやっていた。数学が得意な俊輔と英語が得意な真理は互いの苦手を教え合えるため、二人で勉強するのは効率的なことだった。宿題が半分ほど片付いたところで真理が言った。
「もう今日はこのくらいにしておこうか。紅茶でも飲む?」
真理は問題集を閉じ、お湯をわかすためキッチンに立った。真理の腰のくびれとそれに続くヒップラインを見ているうち、俊輔の肉幹はむくむくと硬くなりはじめた。俊輔は立ち上がり、そっと真理の後ろから肩に両手をかけた。
「何、どうしたの?」
体の向きをくるっと自分に向かせ、俊輔はすばやく真理の唇を塞いだ。三回目のキスで俊輔には余裕ができていた。唇で真理の上唇を軽くはさんだり、下唇をつついたりした。香織はじっと目を閉じてされるがままにしていた。拒否されるのを恐れて胸をさわることはせずに、両腕でしっかり真理の体を抱きしめた。しばらくやわらかい唇の感触を楽しんだあと、真理の歯のすきまから、舌をいれた。舌の上や側面、そして歯ぐきに舌を躍らせた。やがて、互いの唾液が口の中に溢れ、俊輔はそれを飲み下した。
(真理のつばを飲んじゃたんだ)
そう考えると頭がくらくらするほど甘美な喜びに包まれた。それまでにないほど真理のことをいとおしいと感じた。肉幹は痛いくらいに勃起し、すでに透明な液が先端からあふれ出ていた。
(ああ、もうがまんできない。真理だってきっと興奮してるにきまってる。よし、もう一押ししてみよう)俊輔は心の中でつぶやいた。俊輔は硬く反り返った肉幹を、真理の下半身に押し付けた。その瞬間、真理は夢から覚めたように閉じていた目を開けると、はじかれたように体を離した。唇をはなすとき、二人のまじりあった唾液が一瞬糸を引いて離れた。
「もう俊輔ったら。今紅茶いれてるのよ。座って待っててね」
(やっぱりキスまでしかだめなのか。まあ、そうだよな。受験が終わるまでって言ってたもんな)
がっかりしながらも、俊輔は無理やり自分を納得させるしかなかった。
2
自転車に乗って家に帰ると、玄関に見慣れない靴が置いてあった。鮮やかなグリーンののパンプスが、見慣れた姉の香織の靴に並んできちんと揃えてあった。
「あっ、俊輔が帰ってきたみたい。連れてくるね」
姉が奥のキッチンから出てきて、こっちこっちと手招きをした。「おかえりなさい。今日はね、友達を連れてきたの。私の大学の同級生で原田絢(あや)美(み)よ。あいさつして」
「こんにちは。山賀俊輔です」
「こんにちは。原田絢美っていいます。よろしくね。いつもお姉さんから話は聞いてるわ。確か高三だよね。香織の弟さんだけあって、なかなかイケメンじゃない」
いきなり容姿のことに触れられて、俊輔は顔を赤らめた。実際、俊輔はイケメンといってよい整った顔立ちをしていた。姉に似て肌の色が白く、きりっとした二重瞼で鼻筋が通り、どこか中性的な雰囲気があった。同じクラスの女子はもちろん、下級生の女の子の中にも、俊輔に好意を寄せる生徒は少なくなかった。
「かわいいーっ。赤くなってる。」
原田絢美は、大学で香織と同じダンス部に所属していた。学部は違うが、大学に入学当初
からの姉の友人であることは、俊輔もたまに姉の話に絢美の名があがることからその存在は知っていた。
初めて会った絢美は、とびきりの美人というわけではないが、二重の大きな眼が印象的な顔立ちで、少し茶色がかった髪に浅黒い肌がよく似合っている。何より、俊輔が度肝を抜かれたのが、胸の大きさだった。襟ぐりの大きく開いたサマーセーターを着ているせいで、谷間がはっきりと確認できる。こんなに大きな胸を見たのは初めてだった。
「ちょっと絢美、あんまりからかわないで。あたしのかわいい弟なんだから。それに、これでも彼女がいるのよ」香織が言うと、
「へえー、そうなんだあ。ということは、もう童貞じゃないの?」
「絢美ったら、質問がストレート過ぎだよ。でも、実は、あたしもそれ知りたかったんだ。ねえ俊、もう真理ちゃんとしちゃったの?」
突然の問いかけに、俊輔は顔をいっそう赤らめてうつむくだけだった。
「まあ、そんなこと急に聞かれても困っちゃうよね。一緒に食べようと思ってケーキ買ってきたの。今コーヒー入れるから座って。」
香織の言葉にほっとしながら、俊輔がキッチンのテーブルに座ると、真向かいには絢美が座った。香織が三人分のインスタントコーヒーをカップに注ぎながら言った。
「あさってから絢美と伊香保温泉に行くんだ。一泊二日なんだけどね。絢美は実家が山形だから、とりあえずうちに泊ってもらって、あさってあたしの車で行こうってことになったのよ。あたしたちが出かける日にお父さんたちが帰ってくるからね。」
俊輔の両親は山歩きが好きで、ゴールデンウィーク初日から二泊三日の予定で北アルプスの白馬岳に出かけている。
「今日は絢美に手伝ってもらって晩御飯作るの。楽しみにしててね」
「俊輔君は連休中はどう過ごすの?」
絢美が、俊輔の目をまっすぐ見ながら聞いた。姉以外の年上の若い女性にこんなに間近で接した経験はあまりない。二重の大きな目でじっと見つめられ、思わず視線を下に向けると、今度は絢美の胸の谷間が目に飛び込んできた。浅黒い肌に二つある大きなほくろが生々しい。
俊輔の肉幹が、にわかに硬くなり始めた。胸元を見られていることに気づいた絢美が、にやりと意味ありげに笑みを浮かべ、右手をそっと胸にあてた。俊輔の心臓がドクンと音を立て、顔がカーっと熱くなった。あわてて視線を絢美の顔に戻し、
「連休中は部活と勉強です。」とかろうじて質問に答えた。
「受験生だものね。勉強しなくちゃね。でもゴールデンウィークなんだし、真理ちゃんとデートもするんでしょ。」と香織が口をはさんだ。
「でも、一緒に勉強するのが、デートみたいなものだから」と俊輔が答えた。
「彼女と一緒に勉強なんていいわね。でも、勉強している間にムラムラしちゃうこととかないの?」と絢美が聞いた。
「それは……。」俊輔は少し口ごもったあと、意を決したように絢美の方を向いて、話し始めた。
「それは、僕も男ですから、ムラムラすることもあります。でも、真理、あっ、彼女のことですけど、真理が大学に合格するまではだめって言うんです。真理は真面目な子だし、僕は真理のことが好きだし、大事にしたいと思ってるんで、合格するまではがまんするつもりです」
「俊輔くん、えらいっ。真理さんことが本当に好きなんだね。私も君のような優しい彼氏がほしいな」
絢美は俊輔の顔を見ながら、うらやましそうにつぶやいたあと、好奇心を露わにしてこう言った。
「でも高校生の男の子なんだから、がまんできないときもあるんじゃない?そういうときはやっぱり自分でするの?」
もちろん、オナニーはしている。中学一年のとき、性に関する知識が豊富な同じクラスの友達にやり方を教わって以来、毎日のように励んでいる。特に翌日休みの金曜や土曜には必ず二回はする。
最近は、真理とのキスシーンを思い浮かべながらオナニーすることが多い。真理と舌を絡め合い、互いの唾液を飲み合う場面を思い出すと、俊輔の肉幹は、自分でも驚くほど硬くなり、あっけないほど早く白濁した樹液を放出してしまうのだった。
「はい、まあ、それは……。」俊輔が困惑しているのを見て、香織が助け舟を出した。
「絢美いい加減にして。俊が困ってるじゃない。いくら友達の弟っていっても、初対面の男の子に聞くことじゃないでしょ。」
「はいはい、ごめんなさーい。俊輔くん悪く思わないでね。」絢美が俊輔に手を合わせて、こくりと頭を下げた。
「そろそろ夕飯の準備始めましょう。なんてたって今日はビーフシチューとミネストローネを作っちゃうんだから。絢美に手伝ってもらうんだけどね」香織はにっこりウインクしながら、俊輔に笑いかけた。
「えっ、本当に?どっちも僕の大好物だ。やったー。絢美さんもよろしくお願いします」
「晩御飯の話になったら、急に元気になったわね。絢美は自炊してるから、あたしと違って料理得意なんだよ」
「俊輔くんにおいしいって言ってもらえるように頑張るね」絢美が白いきれいな歯並びを見せてにっこりほほ笑んだ。
その日の夕食は、にぎやかなものとなった。俊輔はコーラ、香織と絢美はビールで乾杯した。ビーフシチューは上出来で、俊輔はあっという間に平らげた。女二人の話は、尽きることなく続き、俊輔はしばらく話に加わっていたが、やがて勉強があるからと二階の自分の部屋に引き上げた。
3
俊輔がふと目を覚ますと、すでに夜中の一時を過ぎていた。夕食を食べたあと、しばらく姉と絢美と話しをして過ごしたあと、自室で勉強をしているうちに、いつの間にか机に突っ伏して寝てしまったらしい。強い尿意を感じて、部屋のドアを開け、二階の奥に備え付けてあるトイレに向かおうとしたときだった。姉の部屋から、すすり泣くような声が聞こえてきた。俊輔はぎょっとして立ち止った。次の瞬間、香織の叫ぶような大きな声がはっきり聞こえた。
「ああーっ。気持ちいい。そこ、もっとぉ」
(姉貴の声だ。ていうことは、あの二人レズなのか?ええーっ。)
俊輔はもう少しで本当に声を出して叫びそうになった。もちろん高校三年の俊輔にも、レズビアンの知識はあった。しかし、実の姉がレズビアンとはそのときまで、ただの一度も思ったことはない。俊輔にとって、それは衝撃的な事実といってよかった。それと同時に、二人が今部屋の中で何をしているのか知りたいという激しい欲望がわき上がった。姉の部屋の前まで行き、ドアにぴったり耳をつけた。
「あらあら、こんなにシーツが濡れちゃったじゃない。香織のおまんこって本当にいやらしいわね」
部屋の中からは、ウィーン、ウィーンというモーター音が聞こえてきた。
「あうーっ、すごい感じる。あっ、あっ、あっ、気持ち良すぎてどうにかなりそう。」
俊輔の肉幹に激しく血液が集結し、下腹につくほど硬くそり返った。俊輔は我を忘れて、ジーンズのジッパーを下し、これ以上ないほど硬くなった肉幹を取り出した。すでに、先端の割れ目からは、カウパー氏腺液がにじみ出ている。ドアに耳を当てながら、いつもそうするように、ぬるぬるした透明な液を潤滑油にして肉幹をしごいた。
「ああー、もうだめ、いくっ、いくっ、いっっちゃう、ああーっ。」
香織が叫んだ。ふだんのしっかりものの姉からはとても想像することのできないアクメの声を聞いたとき、俊輔の興奮もまた頂点に達した。目もくらむほどの快感とともに、赤黒く膨張した亀頭の先から大量の白い樹液が吹き上がり、勢いよく姉の部屋のドアにかかった。白濁液がドアをつたい、廊下の床にも白っぽい半透明な楕円を描いた。
「はあ、はあ」俊輔が息を整えていると、ドアの向こうが急に静かになった。
(あれ、もう終わりなのかな……。)
しばらく気配を窺っていたが、物音ひとつしない。
(姉貴がイっちゃったからもう今日はこれでおしまいなのかも。あ、ちゃんと拭いておかないと。ばれたら大変だ)
俊輔はあわてて、太ももまで下ろしていたジーパンを上げ、足音を立てないように気をつけながら、自分の部屋からティッシュを箱ごと持ってきた。ドアと廊下に着いている精液を急いで拭き取った。
トイレに行ったあと、部屋に戻りベッドの上に寝転がると、耳には姉が絶頂に達したときの声が響いてきた。
(あの二人はいつもあんなことしてるのかなあ。温泉に行くって言ってたけど、もしかして旅館であれをするのが目的なのかもしれないぞ)
そんなことを考えているうちに、俊輔の肉幹は再び硬くなりはじめた。パジャマに着替え、布団に入ると、ズボンをひざまでずり下げ、香織と絢美が全裸で絡み合っている姿を想像しながら,右手で肉幹をしごいた。イクときの声を耳にしたことで、絢美に責められ、快楽に溺れて身もだえする姉の姿を思い浮かべずにはいられなかった。
香織の肌は、テニス部の部活で健康的に焼けている真理や、浅黒い絢美と全く違い、透き通るほど白い。俊輔は子供のころから、親戚や近所のおばさんたちの、香織の肌の白さに対する称賛の声を何度も耳にしてきた。ただ白いというだけでなく、新雪のようにキメの細かいもち肌なのだ。夏の暑い日に、タンクトップに短パンといった肌の露出が多いときなど、つい白く輝く太ももに目をやってしまい、どこをじろじろ見ているのかと姉からたしなめられることもあった。
俊輔は、姉が足を大きく広げ、絢美にバイブレーターで責められているところを思い浮かべながら、肉幹をしごいた。しかし、実際の女性の性器をまだ実際に見たことがないため、バイブを咥えこんだ女陰の細部を想像することはできなかった。
(ああ、女のアソコを見てみたい。どんなになってるんだろう。入れたら、すごく気持ちいいんだろうな)
「姉貴のおまんこ、香織姉ちゃんのおまんこ」と小声でつぶやきながら、しごいていると、さっき出したばかりにも関わらず、あっけないほど短い時間で肉幹から白い樹液が放出された。俊輔の気持ちの高ぶりはその後も収まらず、結局寝たのは、外が明るくなり始めたころだった。
4
次の朝、俊輔が目を覚まし、眠い眼をこすりながら、一階のキッチンに行ってみると、すでに香織と絢美は朝食を食べているところだった。
「おはよう。朝ごはん食べてるんだけど、俊も食べる?」
香織が聞いた。俊輔はうんとうなずいて、キッチンテーブルの香織の隣に座った。斜め向かいの席には絢美が座っている。
「おはようございます」
俊輔は絢美にあいさつした。
「おはよう。ゆうべは、あれから早く寝ちゃったみたいね。それにしてはずいぶん寝むそうだけど」絢美がほほ笑みながら、話しかけた。
確かに机に突っ伏して寝たのは早い時間だったが、その後に眼を覚ました後からは、眠るどころではなかった。しかし、絢美さん達のせいで眠れなかったんですとも言えず、はい、まあ、ととぼけるしかなかった。
「トーストでも食べる?飲み物はオレンジジュースでいい?」
香織が、俊輔に聞いた。
「うん、それでいい」
俊輔は、答えながら、姉の顔をじっくり見ずにはいられなかった。絢美に責められ、高い悦びの声をあげた香織と、今、目の前にいる香織が同一人物とはとても思えなかった。しかし、いくら姉の顔を見ても、いつもと変わらなかった。
「どうしたの?あたしの顔に何かついてる?」
そのとき、電話が鳴った。
「誰からだろう。お父さんかな」
香織は、玄関にある電話のところに行き、受話器をとった。二、三分話をした後、キッチンに戻ってきた。
「バイト先の店長からだった。今日、バイト出てくれだって。急に、熱出して来れなくなった子がいて、代わりに誰か出ないと、店が回らないらしいの」
「それで、出ることにしたの?」絢美が聞いた。
「うん、出るって言っちゃった。あたしも忙しいときに、旅行のために休みもらっちゃってるからさあ。店長も本当に困ってるみたいだし。俊は今日、どんな予定なの?」
「今日は真理は部活だし、僕は部活休みだから、家で勉強するつもりでいるんだけど」
「それじゃあ、家にいるってことか。あっ、そうだ、俊は英語苦手だったよね。絢美に英語教わりなよ。絢美は英文科なんだよ。絢美、お願い。弟に英語教えてやってくれない?」
「うん。いいよ。俊輔くんが良ければ」絢美は俊輔の顔を横眼で見た。
「お願いします」俊輔がぺこりとお辞儀をしながら言った。
「これで決まりね。十一時には来てほしいって店長が言ってたから、もう支度始めなくちゃ。お昼ごはんは、適当に二人で済ましといて。夕方の六時くらいには帰れると思う。」
香織は急いで準備をし、愛車のピンクのマーチでバイト先に出かけていった。
「意外な展開ね。でも、英語の勉強、あたしなんかでいいの?」
「僕、すごく苦手なんで、ぜひお願いします。でも、その前に少し聞きたいことがあるんですけど」
「何かしら。勉強のこと?それとも、大学のことかな?」
「ゆうべ、絢美さんと姉がしていたことです」
絢美の顔色が変わった。
「声を聞いたのね。香織、結構声大きかったからね。そうか、香織とあたしの関係、知られちゃったのね。」
「姉がレズなんだと思うと、ちょっとショックで」
「そうかもしれないわね。でも、あたしは香織のことを心から好きなの。まあ、心も体も好きと言ったほうが正確よね。大学のダンス部で知り合ったんだけど、あたしは一目見たときから、香織に目をつけたの。あたしは、高校のときに部活の先輩にレズを仕込まれたんだけど、もともと男の子とも普通に付き合ってたのよ。でも、先輩にレズを教えられて、女にも興味を持つようになって、大学に入ったら香織を見つけたわけなの」
「ということは、絢美さんの方から誘ったんですか」
「そうよ。だから、お姉さんが生まれつきレズとかそういうことではないから安心して。あたしが、香織をレズの世界に誘ったということ。そのことで俊輔くんがショックを受けたのなら、ごめんなさい」
「そんな。でも、絢美さんは姉貴のどんなところが気に入ったんですか」
「まず色の白さね。あたしは、全然白くないからああいう白い肌ってあこがれなの。それに香織の肌はすごくキメが細かくて、女のあたしでも嫉妬するほどきれいなの。俊輔くんも同じ家の中で暮らしてるんだから、そう思ったことあるでしょう」俊輔はうなずいた。
「それに美形だしね。二重の切れ長の目が涼しげで、鼻筋が通っていて、唇が少し厚ぼったいところが少しアンバランスなんだけど、またそれがそそるのよね。あっ、ごめん。そそるなんて、おやじみたいよね」
「はじめてレズの関係になったのは、いつ頃からですか」
「去年の夏から。ダンス部の練習のときにね、みんなが練習を終わったあと、難しい振付けを練習するから付き合ってと二人きりになる口実を作ったの。練習を終えて、二人で並んでシャワー浴びているときにうしろから香織を抱きしめて、キスをしたわ。もちろん香織はびっくりして、あたしの体を押しのけた。でも、あたしはどうしても香織を手に入れたかったし、それくらいであきらめるつもりはなかった。自分の気持ちを素直に打ち明けて、もう一度体を抱きしめたの。香織の体は肌が透き通るように白くて、今まで見た誰よりもきれいだった。抱いているだけで、あたしはぐしょぐしょに濡れちゃったわ。香織は、あたしに抱きしめられたまま動かなかった。それで、そっとキスをして、舌を入れたの。そしたら、香織は!
否るどころか、自分も舌を出して絡めてきたの。思い切って香織のあそこに指を入れてみて、あたしびっくりしちゃった。香織もすごく濡れてたの。そのあと、あたしのアパートで初めてプレイしたってわけ」
俊輔の肉幹は、話の途中から、痛いくらいに勃起していた。
「そのときから、姉貴との関係が続いているんですね」
「そうよ。でも、あたしとは関係してても、香織はまだ処女なのよね」
「確かに、姉に彼氏ができたという話はまだ聞いたことありません。母もたまには、彼氏でも連れてくればって、言ってます」
このとき、絢美の中に一つの考えが浮かんだ。
(この子は彼女にさせてもらえなくて、セックスしたくてたまらないはず。妄想ばかり膨らんで、勉強に集中できないなんてかわいそうだわ。あたしが女の体を教えてあげようかしら。)
「ところで、きのうの話の続きだけど、俊輔くんは彼女いるけど、まだキスまでなんだよね」
「ええ、そうです。」
絢美は、俊輔の目をまっすぐ見つめながら言った。
「今から、あたしとHしてみる?」
突然の言葉に、俊輔の心臓がドクンと大きく音を立てた。絢美の大きな瞳が妖しい輝きを帯び、口元には笑みが浮かんでいる。
「えっ、まじですか」
「そうよ。きのう、あたしの胸見てたでしょ。違う?」
「すいません」俊輔は、自分でも分かるほど顔がカアーッと熱くなった。
「別に、謝らなくてもいいのよ。高校生の男の子なら女の体に興味を持つのは自然なことよね。初体験があたしとじゃ、いや?」
「いやだなんて、そんなことないです」
「あたし、俊輔くんに女の体を教えてあげたいって思ったの。男の子にとって、初めての女性ってすごく大事でしょう。あたしが君の初めての女になれたらうれしいな。なんていっても、私の大事な香織の弟さんだもんね。それに、妄想ばかりしてるのは受験にとってもよくないでしょう」
「僕、絢美さんに教えてもらいたいです」
俊輔の声は、興奮のため上ずっていた。怒張した肉幹がジーンズを押し上げ、痛いくらいに硬くなっている。
「それなら、今からシャワー使わせてもらっていい?一緒に体洗いましょう」
夕べ、香織と快楽を貪った残滓が残ったままの体に俊輔を迎えることはできない。
脱衣所に入ると、絢美は無造作に服を脱ぎ始めた。あっという間にサマーセーターとジーンズを脱ぎ、ベージュのブラジャーとパンティーだけになって俊輔の方に向き直った。思わず見下ろすと、ブラジャーからあふれるほどの量感のある二つの乳房の間にはくっきりとした谷間ができ、きのう見た二つのほくろがまるであいさつでもするかように目に飛び込んできた。
「ブラ外して」と絢美が言った。
ブラジャーのホックを外すのはもちろん初めてだ。緊張で震える両手を背中に回そうとすると、絢美がその手を止め言った。
「このブラね、フロントホックなの」
ブラジャーのホックは後ろにあるとばかり思いこんでいたので意外だった。震える指先で何とかホックを外した。
「とっていいよ」
絢美は俊輔の目を覗き込み、微笑んだ。俊輔は、ゆっくりブラジャーを胸から外した。二つの乳房は前方に大きく隆起し、ほぼ完全な半円を描いている。茶色がかったピンク色の大きな乳輪の真ん中に、小ぶりな乳首がちょこんとついている。今見ているのは、紛れのなく本物の生おっぱいだ。極上といってよい絢美の胸に我を忘れて見とれていると、
「あんまり見ないで。恥ずかしいじゃない」両腕を交差させて、絢美が胸を隠した。
「絢美さんの胸、すごいです。見とれちゃいました」
「そう言ってくれるとうれしいな。胸は自信あるかも。じゃあ、シャワー浴びようか。俊輔君も脱いで。」
浴室に入ると、二人は全裸で向かい合った。絢美は、俊輔の胸のあたりを撫で回した。
「服着ているときは分からなかったけど、意外にたくましいのね。肌もすべすべしてきれい」
絢美は、これからこの年下の美少年の体を自由にできることを考えると、淫靡な悦びが込み上げ、女陰に愛液がじんわり湧き出てくるのを感じた。
「もう、こんなになっちゃってるのね。ずいぶん立派じゃない」
天井を向いて硬く反り返っている肉幹を、絢美は握った。濃いピンクの亀頭からは、すでに透明なぬるぬるした液が滲み出ている。絢美は、指先で先端のぬるぬるを撫ぜ回した。
「ああう、僕もう出ちゃいそうです」
「それなら一回出しちゃおうか」
絢美は、膝をついて俊輔の肉幹を指でいとおしげにさすったあと、裏筋に舌を這わせた。唾液を溜めては、亀頭の上に注ぎ、それを潤滑油にしてはちきれそうに怒張した先端部を舌を左右にすばやく動かし舐めまわした。オナニーとは比べようのない快感が俊輔の体中を駆け巡った。幹の裏側全体に舌を何度か上下させると、絢美は肉幹をがぶりと口に含んだ。喉の奥まで深く呑みこむと、カリ首や竿に舌を這わせる。口に含まれたことで、肉幹は湿った温かさに包まれた。じゅぽっじゅぽっと音を立てて肉幹全体を口に出し入れしながら、袋を手のひらの上で弄んだ。俊輔の感じている顔を覗き込もうと顔を見上げる絢美の唇から、唾液まみれの肉幹が出たり入ったりしている。とろけるような快感をもっと味わいたかったが、もう限界だった。
「絢美さん、もう駄目です。ああっー。出るうー。ああーっ」
のどの奥をめがけてドロっとした温かい白濁が、勢いよく噴出した。俊輔は、絢美の頭を両手で抱え、激しいオルガスムスに腰をガクガク震わせた。絢美は、のどを鳴らして、ゴクリと白い樹液を飲みほした。はあはあと息を整えている俊輔の顔を見上げながら、絢美が言った。
「いっぱい出たわね。俊輔君の感じてる顔すごくかわいかったわよ。あたしも感じちゃった。ひさしぶりにおちんちんを味わったな」
「こんなに気持ちよかったの初めてです。感激しました」
「なに言ってんの。これからが本当の初体験でしょう。さあ、シャワー浴びるわよ」
絢美は、俊輔の全身にシャワーのお湯をかけると、ボディソープを手にとり、俊輔の体をくまなく泡立てた後、股間に手を伸ばした。左手の親指と人差し指で輪を作って、その中に肉幹を通し、根元を抑えると、右手で竿を握ってしごいた。俊輔は快感を伴う強い刺激に身をくねらせた。続いて絢美の手は、竿の下でだらんと垂れ下がっている袋に伸び、睾丸の存在を確かめるように手のひらでもてあそんだ後、肛門に指の腹をあてると、入念に洗い始めた。
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