春爛漫_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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春爛漫

15-06-14 11:22

「ねえ、もう一軒行こう」

私はこの春から大学4年になった。
2人の進級記念、と称して、同じ学科の拓真(たくま)と私は居酒屋をはしごしていた。

「はぁ? まだ飲むの?」

拓真は呆れたようにため息をついた。

「うん。まだ飲むの」
「しょうがねぇなぁ……。って言っても俺もうお金無いよ」

拓真は自転車を押しながら、時折ふらつく私の足下を見ている。

「私も無いの」
「じゃあ帰ろうぜ。もう1時回ったし、明日も講義あるだろ」
「ええー」

あからさまにがっかりして見せた。
確かに平日だけど……、もう4年生だから講義も多くないし、1日ぐらい休んだって大丈夫よ。

そう言おうとしたとき、

「じゃあさ、俺んち来る?」

拓真が眉をしかめて、嫌々そうに呟く。

「行く!」

私は小学生みたいに手を挙げて、拓真に向き直った。

「飲むだけだからね、飲むだけ」
「分かってるって」
「どうだかなぁ……」

拓真の苦笑を横目に見ながら、すでにカラダの中心が火照り始めるのを感じていた。

* * *

「ねぇ拓真、またセックスしよう?」

腕枕されながら、私は拓真の肩にキスを落とした。

「セックスかぁ……」
「もうイヤ?」
「いや……なんて言うか、セックスだけじゃなくてさ」

付き合おう、って言われるのかな?
なんてどきどきしながら、拓真の言葉を待った。

「もっと、マキと一緒にいたい」

拓真は、恥ずかしいのか、天井の一点をにらんでいた。

「…………私も」

私はつぶやきながらカラダを起こして、拓真のくちびるにそっとキスをした。
友情と愛情の境目はわからないけど、これからも気持ちいいセックスして、いっぱい一緒に過ごそうね。

私と拓真は、一度だけセックスしたことがある。

昨冬の寒い夜。
同じ学科だから、期末レポートを拓真のアパートで徹夜して仕上げた。
ふらふらになって大学に提出してから、2人とも眠気に勝てず、空いている講義室で仮眠を取った。

結局、その日の夜に『打ち上げ』と称して酒を飲んだ。
酔った私は拓真にキスしてしまい、勢いでセックスまでしてしまった……。

拓真はふだんはふわふわした優男のくせに、セックスになるととたんに雄々しくなった。

「……やッ」
「ん? どうしたの?」
「気持ちい……」
「マキって淫乱だったんだね」

と言葉責めされて、触れて欲しい箇所の周辺だけを優しく愛撫して焦らされて、

「拓真……、い、挿れて……?」

と私からお願いするまで挿入してくれない。
それでも

「どうしよっかなぁ」

なんて、先っぽだけ挿れてゆるゆると焦らす。
早く挿して達(い)かせて欲しい、なんて経験は、それが初めて。

そして、実際の挿入も、ものすごく気持ちよかった……。

「ほら、上がって」
「お邪魔しまーす」

コンビニでビールと日本酒、梅酒、それからおつまみを買い、拓真のアパートに上がり込んだ。

「はぁー飲んだ飲んだ」
「まだまだ飲むぞー!」
「おいおい……」

それから小一時間ほど、こたつに向き合って話していた。
教授の変なクセについてケタケタ笑ったり、サークルがどうとかいう話をしているうちに、拓真はだいぶ酔っぱらってきた。

「あー、やばい、ぐらぐらする」

なんて言いながら、安い日本酒をぐびぐび飲み続けている。

「そろそろ寝よっか?」
「うーん……」
「一緒に寝よ?」

私は、またあの甘いセックスを期待して、拓真の耳元で囁いてみた。

「えー……? お前と一緒に寝るの?」
「イヤ?」
「いやー、……イヤじゃないけどさ、お前と寝るのはなぁ……」
「なんでよ」

拓真はふと顔を上げると、優しい目つきで私を見た。

「マキさぁ、発情期だろ」

どきん!
と心臓が鳴る。
が、事実なので素直にうなずいた。

「うん。春だもん」
「ははは、春だからか」
「うん」
「春爛漫(はるらんまん)だなぁ」

そう笑った拓真のくちびるに、私はそっとキスしてみた。

「…………」

拓真は何も言わず、キスを受けている。

「ね、ベッド行こ」
「……………………うん」

とたんに私のカラダの中の熱が一気に高まった。
ああ、拓真に焦らされたい。
拓真の声で感じたい。
拓真のペニスを挿してほしい。

拓真は、どさっとベッドに仰向けになった。


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