この話は続きです。初めから読まれる方は「桜の季節」へ
二人分の布団を横にならべ,寝転がってテレビをつけた。夜八時だった。
岸田あゆみは新聞をとっていないから,とノートパソコンを開いてネットにつないだ。
「何かよさそうなのある?」
「んー・・・・・・」
とりあえずつけただけのテレビには,賑やかなお笑い番組が映し出されていた。
「寝るにはまだ早いもんねー」
彼女はそう言いながら番組表をスクロールしていく。
四月の夜はまだ冷える。私は布団にもそもそともぐり込んだ。
「うんとねー,今みてるお笑いと,ニュースと,旅番組と・・・・・・」
彼女はこの時間にやっている番組を列挙していった。
「何か観たいのある?」
「岸田さんは何かある?」
返した質問に,また彼女がうーんと唸り,色素の薄いふわりとしたウェーブのポニーテールが左右に揺れた。
「テレビってあまり観ないのよね・・・・・・」
そうか,と私も唸る。
「じゃあネット配信の動画とか観る?」
「動画?」
俯せになった私の隣でノートパソコンをいじっている彼女が私を見る。
「ちょっと貸してもらっていい?」
「あ,うん。どうぞー」
マウスを借りて検索サイトから動画のポータルサイトを探し,トップページを表示する。
「こういうやつ」
「へぇ,よく観るの?」
「私の部屋テレビないから,家族でテレビ観る以外はね」
「なるほどー」
カチカチとクリックしてあらわれる画面を彼女が横から覗き,ふんふんと頷く。
「どういうの観てみたい? ここにカテゴリーあるけど」
「歴史,スポーツ,お笑い・・・・・あ,動物とかどんなのかな?」
「動物ね」
カチリ,とクリックする。そのカテゴリーに集められた動画の一覧が表示された。
「あ,ハムスターかわいい!」
彼女が反応したサムネイルの動画を片っ端から観ていく。疾走して転げ落ちるハムスターを観てはかわいい,鍋にはいってまるまって寝ている猫を観てはかわいい,走っている中突如ジャンプして伸び上がるうさぎを観てはかわいい,と蕩けている。そうして辿っていくうちに,ドラマやアニメーションのパロディ動画に行き着き,今度はけらけらと笑い転げていた。
「貸して貸して」
そして,自分で辿ってみたいとクリックし始める。
知らなかった人に紹介した方としてはそうして楽しんでもらえるのは本望で,岸田あゆみの横から私も動画を眺めていた。
「あ」
不意に彼女が声をあげる。
「うん?」
何ごとかと彼女の顔を見上げた。
「クリックする場所ずれちゃった」
なんだそんなことかと私が笑うと,彼女もえへへと笑った。
「ブラウザで戻ればさっきのところ表示されるよ」
「うん,あぁ,でもせっかくだから観ようかな」
そう言って彼女は再生ボタンをクリックした。
そして始まった動画を見て彼女はガチっとかたまる。
夕方,彼女がバランスを崩して転がったアレを私が見てしまった時のような空気が流れる。
R-18の動画だった。
すごく小さなビキニを着た女性がアップになっていて,カメラの下から伸びた手がその胸を触っているものだった。触られている女性は,ん,あん,と小さく喘いでいる。
岸田あゆみの耳は真っ赤になっていた。しかしその目は,俯きながらも映像に見入っているようだった。
胸を両手で揉まれている女性のビキニは柔らかい布のようで,その胸の先端がかたくなっている様子もはっきりとわかる。そしてゆっくりとマットの上に俯せになり,その下からビキニが抜きとられた。彼女自身の体重で押しつぶされてそのまるみを強調している乳房がクローズアップされる。そこからカメラは下肢の方へ移動し,お尻のまるみを映した。お尻をゆっくりと揉む手が加わり,カメラは左右の太腿の間,Tバックの食い込むあたりへ寄っていく。そこで微かに見える筋目は,すでに水分を含んでいるようだった。
岸田あゆみを再び見上げると,食い入るように映像を見つめている。まるく屈んだその身体からパジャマの下のブラが浮き上がり,自身の胸からすこしずれてしまっていることにはまだ気付いていないらしい。パジャマの柔らかい布地が彼女の胸を直接覆い,その胸の先が,先ほどの映像の中の女性のようにかたくなってしまっていることを示している。
「あ・・・・・・」
私は彼女の腕に触れた。彼女がぴくっと身体を震わせる。
「・・・・・・ここ,いっしょに入ろう」
私が声をかけると,彼女は赤い耳を更に赤くして私を見つめ,そしてしばらく視線をそらしていた。
「あったかいよ」
もう一度声をかける。
すると,小さくこくりと頷き,ゆっくりと私の布団に身体をいれてきた。
隣に横になった彼女をゆるく抱き寄せる。
あわせた胸から彼女の速い鼓動が伝わってきた。
「・・・・・・ドキドキしちゃった・・・・・・?」
すぐそばにある彼女の耳もとで囁くと,そのわずかな息にも敏感に反応して身体を震わせた。
「ご・・・・ごめんね,あたし,また・・・・・・・」
「いいよ・・・・・。・・・・・したくなっちゃった・・・・・・?」
「・・・・・・瀧さんは・・・・・?」
「うん,少しね・・・・・・・・」
「そっか・・・・・・・・」
彼女は私の胸に顔をうずめ,小さくつぶやく。
「・・・・・・・・・あたしも,少し・・・・・・」
その言葉で,彼女の額に軽く口づけた。
「じゃあ,少しだけする・・・・・・? 岸田さん・・・・」
「・・・・・名前がいいな・・・・あゆみでいいよ・・・・・・」
「して,いい・・・・? あゆみちゃん」
彼女が吐息混じりに私の首筋にキスをする。
「・・・・・・・ううん,あゆみって,呼び捨てがいい・・・・・・」
「じゃあ私のことも名前で呼んで・・・・・・・・」
あゆみの瞼に唇をよせ,まつげ,頬と静かにたどる。
「かなちゃんって呼ぶね・・・・・・・・・」
その唇をふさぐ。
ん・・・・・・・,とあゆみの鼻腔から息がもれる。
柔らかい彼女の髪の下に指を滑らす。そして彼女の指は私の鎖骨をなぞっている。
ただ重ねるだけのキスを繰り返しているうちに,あゆみの舌先がわずかに覗くようになる。その舌に私の舌先で触れると,あゆみの身体が跳ね上がった。あゆみが唇を離す。
「・・・・・・かなちゃん,ドキドキしてる・・・・・・?」
彼女の手が私の心臓の上へと滑っていく。
「きいてごらん,あゆみ・・・」
促されて,あゆみは私の胸に耳をあてる。
ふふ,と恥ずかしそうに笑った。
「すごく,どきどきいってるね」
そしてその胸の谷間に彼女は口づけた。
「でも,あたしの方がもっとどきどきしてるよ・・・・・」
彼女のあごを指でなぞって上を向かせ,唇を重ねる。
差し出されたあゆみの舌先をその口内で絡め取った。
唾液の混じる音がする。
互いの舌を触れさせると軽い電流が流れたような衝撃に襲われた。そうして深いキスを重ねる中で,あゆみの指先が私のパジャマのボタンをはずし,直接肌へと触れてくる。下腹部から脇腹,そしてゆっくりと背中をまわって肩を抱き寄せられる。
「あゆみ・・・・・あゆみ・・・・・・・・・」
角度を変える際にわずかに離す唇で呼ぶ。
「・・・・・・・あゆみ,胸・・・・・なめてもいい・・・・・?」
あゆみが更に強く抱きしめてくる。
「・・・・・・・なめて・・・・・・・」
舌を唇からあご,首筋へと滑らせる。あゆみが頭を大きくうしろへそらせる。
ボタンをはずしながら,そこを舌先でたどる。
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