狂女_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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狂女

15-06-14 11:53

時間的にまだ余裕があるので頂上に向かっている人々も少なくない。僕は行きと同様、芳美とは単なる知り合いだと割り切って彼女と程良い距離を取って歩いており、行き交う人々もそんな僕らに対して別段変な顔をしなかったが、時々、芳美の顔や胸などをじっと、あるいはちらりと見て通り過ぎる男たちがいる。そんな時にはやはり誇らしい気分になる。『この女は俺のものだ。羨ましいだろ』とか、『今からおまんこしに行くんだぜ』などと優越感を持って思うのだった。けれど芳美は自分の体に注がれる男たちの厭らしい視線が不快らしい。「おっぱいが大きいからしょうがないよな」とからかっても黙っている。「本当は嬉しいんじゃないのかい?」「そんな事ありません」ブラジャーをしていても乳房が揺れ、男がそれ!
惹きつけられるのは無理もない。強い日差しで汗ばみ、色香がことさら匂い立つようだ。旦那、そして今では僕に精液を注がれた体は食べごろを示している。                         途中、休憩を兼ねて食堂に寄り、冷たいソーダ水を頼んだ。まだ六月なのにこの暑さ。「今年も猛暑になりそうですね」芳美はリュックを下ろし、タオルで顔や首の汗を拭き取りながら言った。「夏休みに海へ行こうか?」その提案に芳美は僕を見た。「二人でですね?」「ああ」嬉しそうな彼女。「君のビキニを見たいんだ」「まあ、ふふ。でも若い子に目移りしちゃ嫌ですよ」「それは芳美の魅力次第さ」そう言われて芳美は僕を意味ありげに見た。やがてソーダ水が運ばれてき、僕たちは向かい合ってストローで!
エメラルド・グリーンのそれを飲み始め、自!
に見つめ合った。知的に整った顔立ち、そして長目の首。芳美はストローから口を離し、「もっと早く知り合いたかった・・・」と切なそうに呟いた。前にも聞いた言葉で、あれから彼女の状況はあまり変わっていない事がわかる。「子供は諦めな」「・・・」「母より女を取ればいい。悩む事なんかないさ」芳美は俯いた。僕はテーブル上の彼女の手を取り、「芳美は女になりきるんだ」と、小さくも断固とした声で言った。「俺に抱かれて全てを忘れる。それこそがおまえの幸せだ」「・・・」「夜の公園は楽しかっただろ?女になりきってたからな。いや、メス犬になれたからかな?」悪魔の囁きは、恋と欲情に溺れた人妻の心に甘い言葉となって作用したのだろう、芳美は全てを捨てて僕に身を任せる方へと心が傾いていっ!
た。                                    疲れが取れ、僕たちは食堂を出て山をどんどん下っていった。早く合体したいという性欲がくすぶってしまい、ハイキングを楽しむ心の余裕は無くなっていた。夜になるまでには帰宅しなくてはならない為、少しでも早く芳美とベッドに着きたい。こんな事なら最初からホテルに入っていれば良かったという後悔の念が起きてもいたが、今更どうにもならなかった。芳美も僕と狂いたがっていて自然に足が速くなるのだった。曲がりくねった小道を通り過ぎ、ハイキングコースの案内図とベンチのある小休憩所を無視してさらに歩いていくと、はっきり覚えのあるスタート地点近くの所に出て嬉しくなった。「もうすぐだ」「ええ」僕はタオルで汗!
拭って元気に歩き続けた。「もうちょっとゆっくり!
」芳美が苦笑して頼んだので、「ごめん」と謝って少し歩を緩めた。道幅が比較的広くなっており、斜めすぐ前で一人の少年が長い網を使って蝶を捕まえようとしており、その先では、ハイキングを終えようとする人たちが明るく談笑しながら歩いている。                            ようやく終えると僕たちはトイレで用を足し、芳美の車に乗り込んだ。


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