牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
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15-06-14 01:44
そんなある日、決定的な時が突然訪れたのです。 休日を部屋で過ごしていると、隣のドアが閉まる音が聞こえて来ました。 かすかに女性の声が聞こえて来ます。 あの可愛い彼女が、また隣の彼氏の部屋を訪ねて来たのです。
もう僕は無意識のうちに、壁際まで行き耳を押し当てていました。 彼氏と彼女の、他愛もない会話がはっきりと聞こえて来ました。 今日もきっと、いやらしいセックスをいっぱい楽しむのだろう。 30歳目前の童貞男のすぐ隣で・・・。 胸がどきどきして、感情が高ぶって来たのが分かります。
「そういえばさ、隣に住んでる人童貞みたいだぞ」 突然聞こえてきたその一言に、僕は呼吸が止まりました。
「ウソ!だって隣の男の人30くらいじゃない?」 大袈裟に驚いた彼女の声が、全身を硬直させている僕の身体を突き刺します。 まるでこの歳まで童貞であることがいけないことのような彼女の言い方に、僕はたまらない気持ちになりました。
「間違いないって。俺見たんだよ・・・」 ビデオをばらまいてしまった時の事を、彼氏が彼女に説明しています。 やはり、気付かれていたのです。
「あの歳でドーテイ?なんか笑える!」 その一言で、僕は崖から突き落とされたような気分になりました。 いま僕は、あの可愛い年下の女の子に童貞だということを知られ、はっきりと馬鹿にされ、笑われたのです。
全身、汗でびっしょりです。 心臓の鼓動が異様に早くなっているのが分かります。
「俺らのエッチ聞きながら、しごいてたかもな!」 「えー気持ちわるーい」 彼氏と彼女は笑いながら、僕を馬鹿にし続けていました。
「今日も居るはずだよ。隣から物音聞こえてたから」 「えー、やっぱり聞かれてるんじゃない?」 「そういえばおまえが来てから急に物音しなくなったな。たぶん間違いないぞ」 「あはは。ドーテイ君、聞こえますかー?」
僕は息をひそめながら、彼女の口から発せられる屈辱的な言葉に打ちのめされ続けていました。
「なあ、隣の童貞お兄さんに俺たちのスケベ声聞かせてやろうよ」 「それ感じちゃうかも~!」
隣の二人は、わざと壁際に寄って話しているようです。 いつもよりかなり近くで、二人の声が聞こえてるのです。 まるで壁が存在しないかのように、はっきりと屈辱的な言葉が聞こえて来ます。 しかしそこには、確かに壁が存在しているのです。 薄っぺらい物理的な壁が存在しているのはもちろんですが、それ以上に、経験者と童貞というあまりにも厚すぎる壁が存在しているのです。
壁を挟んで1メートルも離れていない所にいる大学生カップルは、セックスの快感、楽しさ、ノウハウといったものを、全て体得しています。 それに比べ僕は、それらのことを全く知らない未経験者なのです。 そしていま、全く経験が無い僕の存在そのものが、豊富な経験をしている大学生カップルの楽しいセックスを、より楽しく演出する為だけに使われようとしているのです。
(あああ・・・)そんな屈辱的な状況であるにもかかわらず、僕の肉棒はいまにも射精してしまいそうなほど硬く勃起していました。 僕は、自分のマゾ性を改めて思い知らされていました。 そして、幸せなカップルがセックスをより楽しくする為の演出材料という存在でしかない情けない自分に、これまでに無いほど激しく興奮しているのでした。
二人は童貞の僕に聞かせようと、壁のすぐ側で抱き合っているようです。
「舞の身体、相変わらず綺麗だよ」 「直樹も素敵」
もう裸になっているのでしょうか。 僕に聞こえるように、いつもより大きな声で二人はお互いの身体を褒めています。 まだ見たことがない生の女性の裸が、いまこの瞬間に1メートルと離れていない所にあるのです。 彼氏は、そんな彼女の裸に自由に触れることが出来るのです。 僕には想像することしか出来ないのに・・・。
「胸も大きいし、色白の肌にピンク色の乳首が可愛いよな・・・」
彼氏は、童貞の僕にわざと聞かせているのです。 僕はその言葉に、ますます想像を掻き立てられ興奮するのでした。
「ん・・・はああ~ん・・・ああ・・・」 艶めかしい声が、途切れることなく聞こえて来ます。 僕は間近でそれを聞きながら、未だ性交に使用したことのないペニスを硬直させていました。
隣のカップルは、今までに何回セックスを経験したのでしょうか。 初めて声を聞いたあの日から約3ヶ月で、およそ20回くらい彼女が隣の部屋に来ている筈です。 そして、彼女が来る度に2~3回は、セックスの声が聞こえて来ています。
つまり、29歳の僕が生涯で経験ゼロであるにもかかわらず、隣の大学生カップルは、ほんの数ヶ月で50回くらいはセックスをしたのです。 仮に、初めて声を聞いた日がカップルの初体験の日であったとしても、僕は既に50回も遅れをとっているのです。 しかも初めて声を聞いた日のセックスでさえ、二人にとっては当たり前のことのようでした。
つまり、僕が初めて声を聞いた時点で既に、二人は何度もセックスを重ねていたということになります。 しかもこの数ヶ月間、隣の部屋だけで会っていた訳でもなさそうです。 きっと、彼女の部屋やホテルなどでもしていたのでしょう。 しかも二人とも、過去に何人も経験があるに違いない・・・。
そう考えていくと、隣のカップルの途方もない性体験に比べて、はるかに子供である自分の存在にいたたまれない気持ちがこみ上げて来ます。 さらに、童貞の僕には信じがたいことですが、隣のカップルのようなセックスライフは、特別なことでも何でもなくこの世の中ではごく普通なことなのです。
僕の周りで澄ました顔して日常生活を送っている女の子達。 会社のOLの子。 街ですれ違う子。 電車で隣に座っていた子。 みんな、僕が知らない所でどんどん経験を重ね、大人に磨きをかけているのです。 僕だけが、取り残されているのです。 僕だけが、子供のままなのです。
「ああっ・・・あうんんっ・・・あはぁ・・・」 そして、今日も僕は子供のまま取り残されていこうとしていました。
その時、隣の喘ぎ声が突然止まりました。 何かひそひそ声で話し合っています。 僕はどうしたんだろうとどきどきしながら、固唾を飲んでいました。 隣のドアが開く音がして、続けて僕の部屋のチャイムが鳴りました。 (!?)僕は訳がわからぬまま、慌てて服を着てドアを開けました。
そこには、隣の大学生・・・直樹が立っていました。 今まで僕と顔を会わせると、彼はいつも歳下らしく振る舞っていたのに今日は違いました。 明らかに、年上の僕を見下した目をしていました。
「聞いてたんだろ?」
言葉遣いも今までの敬語とは違い、目下の者に対する言い方です。
「・・・」
否定しなければいけないと頭の中では思っているのに、何故か出来ませんでした。 直樹はニヤリと笑い、「来いよ」と言うと自分の部屋へと戻って行きました。
「来いよ」・・・どういうことだろう・・・。 もしかしたら、あまりにも可哀想な童貞の僕に、彼女と初体験をさせてやるというのだろうか。 憧れの、初体験を・・・。 夢にまで見たセックスを・・・。 僕も、ついに大人になることが出来るのだろうか。 そうに違いない。 きっと、そうに違いない。 (したい・・・初体験、したい・・・)僕はズボンを膨らませたまま、はやる気持ちを抑えながら隣のドアを開けました。
この時の僕は、自分でも信じられないほどの行動力でした。 憧れの初体験のチャンスなのです。 このチャンスを逃すと、もう一生出来ないという焦りがあったのです。 三十路間近の僕には、恥を恐れる余裕すら無かったのです。
ドアを開けると、室内には生暖かい男女の臭いが充満していました。 その臭いに、僕の興奮はますます掻き立てられます。
「あがってこいよ」 奥から声が聞こえました。 「失礼・・します・・」ベッドの上では、直樹と、直樹の彼女である舞がこちらを見ていました。
直樹はパンツ一枚の姿になっていて、舞は大きいバスタオルで全身を隠し、直樹に寄りかかっています。 このバスタオルの下は・・・そう考えるだけでたまらない気持ちになります。 以前エレベータの中で見た時よりも、さらに美しく見えます。 「あ・・あの・・・」僕は声を出そうとしましたが、あまりの緊張になかなか声が出ません。
「待ってたよ。童貞君」
直樹がそう言うと、舞がクスクスと笑いました。 僕は耳の先まで真っ赤になっていくのが自分でも分かりました。
「舞と、したいんだろ?」
顔を真っ赤にしている僕は、俯き加減のままコクンとうなずきました。 そんな僕の姿を見ていた舞が、またクスクスと笑いました。 どう考えても、僕のほうが年上だとは思えない状況です。 でも、この恥ずかしさを我慢すれば憧れの初体験はもうすぐなのです。
「脱げよ」 直樹にそう言われた瞬間、僕は顔を上げました。
「えっ?」 「脱がないとセックス出来ないだろ?」
直樹は、舞と共にクスクス笑いながら言いました。
「あ・・・」確かに言われるとおりです。 「童貞君はそんなことも分からないのかい?」
この一言で、舞はついに笑いを堪えきれずに吹きだしてしまいました。 僕は恥ずかしすぎて顔から火が出そうです。 直樹は僕の初体験を見ているつもりでしょうか。 下手くそなセックスを見られてしまうのはとても恥ずかしいことですが、こんなチャンスを与えてもらった以上、文句を言う訳にはいきません。 僕は覚悟を決め、若いカップルが見ている前で、着ていたものを一枚ずつ脱いでいき、ついに素っ裸になりました。
硬く勃起している童貞ペニスが、若いカップルの前に晒されています。 僕の情けない姿に、直樹だけでなく舞までもが大笑いしています。 どうして童貞というだけで、こんな恥ずかしい目に合わないといけないんだろう・・・。 恥ずかしくて、情けなくて涙が出そうになっていました。 でも仕方ありません。 主導権は若いカップル二人が握っているのですから。
「そのちんぽ、まだ未使用なんだよな?」 「・・はい・・・」 「いったい何年間新品のままなんだ?」 「も・・もうすぐ30年です・・・」
僕が返答するたびに、ベッドの上にいる二人は大笑いします。 そして僕は、いつの間にか自分が敬語を使っていることに気付きました。 それは、僕とカップルの立場の違いが、僕の心の中で明確になって来たことを表していました。
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