牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
彼女と知り合ったのはボランティア活動だった。 彼女の献身的な姿に心引かれた。 偽善ではじめたボランティア活動だったが、彼女を見て、 俺も本心から人助けをしたいと思うようになったほどだ。そして告白し、OKをもらった。 共感できる人ができて嬉しいと喜ばれた。 俺は大学を卒業して、仕事に就き、 ボランティア活動はやめることになったが、 彼女は時々ボランティア活動の為にあちこち飛び回っていた。彼女はよく、もっともっと大勢の人の為、役にたちたいと言っていた。 天使が地上に降りたとすれば、きっと彼女の事だなと本気で思ってた。彼女の初めてをもらったのは俺だった。 穢れをしらない彼女を汚してしまったような、妙な罪悪感に心が痛んだ。 けれども、自分の欲に勝てず、彼女をなんども抱いた。ある日から彼女が積極的に奉仕してくれるようになった。 「私ももっと上手になって、いっぱい喜んで欲しいから」 この言葉は、俺の為だけに向けられたものだと思ってた。まさか彼女がセックスボランティアをしていたなんて思わなかった。彼女は俺が共感し、喜ぶとでも思ったのだろうか。 嬉々として俺に話してきた。 やり始めたのは二週間前。もう5人も相手にしたと。いい気はしなかった。 と、同時に、彼女を汚してしまった罰なのだろうかとも思った。俺は正直に、彼女にそれだけはやめて欲しいと頼んだ。 彼女は、どうして? と、いぶかしげな表情をした。俺「具体的にどういう事をするの?」 彼女「マスターベーションのお手伝いとかだよ」 俺「お手伝いって?」 彼女「手でしてあげたり…」 俺「手だけで?」 彼女「手でいけない人は口とかも使うけど…」 俺「………。 まさか本番とかはしないよね?」 彼女「………。」 俺「するのかよ……」 彼女「だって、助けになってあげたかったの」 俺「ゴムは…?」 彼女「ちゃんとつけるよ…」 俺「付けたらいけないって人がいたら?」 彼女「その時はしょうがなかったから…」 俺「生でしたんだ…?」 彼女「うん…」生でしたのかよ… 俺だって避妊は絶対にしてたのに… ここで俺キレた。 もう無理だと思った。俺「何考えてんだよ!」 彼女「だって、人助けなんだよ!?」 俺「ボランティアの域を超えてんだろ!」 彼女「すごく辛そうなんだもん、だまって見てられないよ!」 俺「頼む、もうやめてくれ…」 彼女「困ってる人を見て見ないふりするの?」 俺「やめてもらえないなら別れよう」 彼女「どうしてわかってくれないのよ!」 俺「ごめん、冷静になれない。今日は帰ってくれ…」彼女は涙を流しながら帰っていった。 電話がかかってきたが、無視していると、 メールで「もっと話し合いたいです。」と書かれていた。 俺は、返事を書いていない。言うほど修羅場じゃいかもしれないけれど、 このときは心が壊れた。 何度も頭の中で、犯罪を犯し死刑になる自分を想像した。 それほど俺としてはショックな出来事だった。 ←クリックでランダムの記事が表示されます
なし
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