牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
『お前の奥さん犯られちゃうぞ!』友人の渡辺から突然のメールが入った。渡辺というのは妻の会社の同僚だ。かつては俺も妻と同じ会社だったため渡辺とは同期であり、友人でもあった。妻とは社内恋愛の末結婚し、俺は結婚後に転職して今は別の会社に勤務している。妻の由希は32歳、慶応出の知的美人でアナウンサーの小林麻耶さん(歌舞伎の実力無いけど偉そうな人と結婚した人の姉)に似ていると言われる、俺の自慢の妻だ。妻の会社は、大手メーカーの下請け企業で、売上げの殆どを某メーカーに依存していた。その会社で、由希は今年の春から責任感の強さを買われて、プロジェクトリーダーを任されていた。渡辺のメールでは、そんな妻が重大なミスをしてしまって、先方の担当者に謝罪に行ったというのだ。それだけならば、ありふれた話であるが、問題は一緒に行った戸森と、先方の担当者である吉田の2人だ。 戸森というのは俺や渡辺と同期で、妻の由希に惚れていて結婚の前には何度も口説いていた男だ。俺とは研修の時から仲が悪かった。吉田というのは俺とは面識はないが、渡辺の話では、妻に横恋慕していて、何かと妻に言い寄っている男だそうだ。そして先程、その戸森から渡辺の元にメールが送られてきたというのだ。『超ラッキーな展開。今ホテル、由希ちゃんとHしまくるぜ。』俺は渡辺からのメールを読んだ後、すぐに由希に電話を掛けた。繋がらない。何度掛けても電源が切られている状態だ。しかたなく、戸森に電話を掛けてみた。一応、同期だからアドレスは知っていた。かなり嫌だったが、俺は番号を押した。数秒の発信音の後、戸森は電話に出た。俺は「戸森か?今何処にいる?」と尋ねた。「いきなり、なんだよ?」「由希と一緒にいるんだろ?今何処にいるんだ?」「はあ?知らねえよw」で切られてしまった。すぐに掛けなおしたが、電源を切られてしまったらしく繋がらない。由希から遅くなるとのメールが入ったのが、19時過ぎだった。今は21時を過ぎてる。俺は、あては無かったが必死に探した。ただ、あてもなく歩いた。どのくらい歩いていたのか分からないが、暫くして、突然、携帯が鳴った。戸森からのメールだった。『場所が知りたいんだろ?教えてやるよ、××ホテル。ああ、そうそう、お前の由希ちゃん美味しく頂きましたw ありがと~う誤解するなよな。合意のうえだぞ。○○社の吉田さんと2人で、たっぷり、かわいがってやったよ。』俺はすぐに由希に電話を掛けた。繋がらない。戸森にも電話を掛けた。こちらも繋がらない。しかたなく戸森にメールを打った『ふざけるな!嘘をつくんじゃねえ!電話に出ろ!』少しして戸森から返信があった『嘘じゃねえよ。全裸に剥かれた由希ちゃん、超可愛かったw 見覚えないか?』俺は添付された写メを見て気が狂いそうになった。顔こそ写ってはいなかったが、その写メの裸体は紛れもない由希の体だった。すぐにタクシーを止めて××ホテルへ向った。時計を見ると23時を回っていた。気が急いて、タクシーの中で貧乏ゆすりが止まらなかった。もう23時を過ぎてる。由希は2時間以上も戸森たちに弄ばれていたのか。突然、携帯が鳴った。また戸森からのメールだった。『会社では真面目くさった由希ちゃんだけど、かなりエロいな。嬉し涙、流しながら俺のチンポを丁寧にしゃぶってくれたよ。吉田さんと2人で、鍛えてやったから感謝しろよ』俺は、このメールは完全無視した。心臓がばくばくいって破裂しそうだった。口に錆びた鉄のような味が広がっていた。いつの間にか、唇を噛んでいたようだ。また、携帯が鳴った。由希からだった。俺はすぐに電話に出た。「今、何処にいるんだ!誰と一緒なんだ!」「取引先の人と飲んでた。疲れちゃった」「・・・」少し間があいて「ごめんね・・・。遅くなって。すぐに帰るね。本当にごめんね。」俺は「お前・・・」と言いかけて言葉を飲み込んだ。家に帰ってから、俺は由希を問い詰めた。なかなか口を割らないから、仕方なく戸森のメール見せた。由希は驚愕の表情になったかと思うと、ぽろぽろ涙が落ち始めた。由希はぽつりぽつりと話し始めた。仕事でミスをして謝罪に行ったら、とりあえず場所を変えようということで、ホテルのラウンジへ。そこでカクテル等を散々飲まされながら、口説かれた。口説きは固く断わっていたが、酒についてはミスした負い目もあり、飲んだ。気づいた時は、ホテルのベッドの上だった。どうにもならず、吉田に抱かれて、吉田の後、戸森にも抱かれた。俺はぶち切れた。この時のことを今でも後悔する、俺は対応を誤った。「分かった。明日、二人で役場へ行こう。離婚する。」由希はわんわん泣いたが、俺は断じて許さなかった。そして数ヶ月が経った。由希が戸森と付き合っていることは、以前聞いて知っていたが、今回は別の噂が入ってきた。戸森には由希の他にも女がいて、由希はただの遊びだそうだ。戸森は社内でも有数の美人である由希を「調教してる」などと自慢しては、由希の痴態を撮影して、会社の同僚や同期連中に見せているらしい。女ながらに一生懸命働いていた、あの聡明な由希が、会社の馬鹿どもに下卑た目で見られながら働いていると思うとなんだか可愛そうに思えてきた。俺はあの時、由希を許せば良かったのかと自分を責めている。時は戻すことはできないが、俺に何かできることはないのだろうか。
なし
Copyright © ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)All rights reserved.
コメント