牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
-
ホームページ
戻る
15-06-14 07:49
私と彼男とは、大学時代に友人の紹介で出会いました。 地元でCラン大学の私と、地元でAラン高専→Aラン大学編入→院へ進んだエリートの彼男。 しかも私が大ファンな斎木しげるに似ていました。 すぐさまポーっとなってしまい、付き合い、社会人になってからも交際は続きました。
社会人になって数年たち、結婚話が持ち上がりました。 うちの親と彼の親と、私たちの顔見せ&挨拶のための食事会が催されることになりました。 だけど数日前になって、彼男から 「親が結婚に反対している。食事会は延期してもらえないか」 という連絡が入りました。
それまでもずっと彼男から、彼男の父=自営業のワンマン頑固オヤジ。横暴。大酒飲み。 彼男の母=夫にいつも泣かされている人。けなげな良妻賢母。 という話は聞いていたので、 ああ私、彼男父に気に入られなかったのか…Cラン大卒のアホだしな…と落ち込みながらも納得し彼男の「かならず親を説得するから」という言葉を信じ、婚約を延期しました。
だけどそれから何年たっても、私と彼男の結婚話は進みませんでした。 その間にも彼男から 「オヤジがまたおかんを殴った」 「借金の保証人になったツケがいつまでも返せない」 「オヤジを殴ってやりたいが、あんなやつでも親だ。恩があるからできない」 という話をよく聞かされていて、このお義父さんがいる限り、彼とは結婚できないのかな…とぼんやり諦めの境地に達しつつありました。
そんな日々を送りつつ、私はある企画にかかわり、他社の人と合同でチームを組んで一緒に仕事することになりました。
仕事に忙殺されるうち、彼男へのメール返信がややおざなりになりました。 でも企画がどれだけ殺人的スケジュールかは事前に説明して納得してもらっていたので終わったら埋め合わせして、結婚話も今度こそ進めようと思っていました。
そしてやっと企画が終わり、盛大な打ち上げパーティが催されました。 お酒が入り、それまでろくに私語を交わしたことのない他社の社員さんたちともはじめて打ち解けて話しました。 そこでA男さんが、高専→大学ルートで、彼男と一緒だったことがわかりました。
私「じゃあ彼男って知ってますか?」 A男「知ってる!××(地名)のやつだろ?」 私「そうそう」 A男「マザコンで有名だったやつ!あいつまだ独身なんじゃない?あれじゃ一生結婚できないだ!」 私「え?」 A男「今でもママンに貢いでんの?あれもう病気だよな!」 私「え?え?」
お酒が入っていたこともあり口の軽かったA男さんに、同じくお酒の勢いでつめよる私。 A男さんの話によると、彼男父の借金癖やDVなどは全部嘘。むしろ地元で評判の高い良心的な自営業社長でした。
でも彼男は幼い頃から母を独占して育ったせいか(彼父は出張が多く、多忙期はほとんどそばにいなかったそうです) 立派なマザコンに育ち、不況になってよく家にいるようになった夫に母親は喜んだのに彼は毎日帰ってくる父親に猛反発。 成績が良かったこともあり、寮のある高専に進学してしばらく自宅と絶縁していたんだそうです。
でも母に泣かれて絶縁は解き、父とはぎくしゃくした関係が続く。 そんな中、彼母がほぼ二十年ぶりの懐妊。 夫婦は狂喜したが、彼は激怒。二度目の絶縁。 この頃に私と出会う。
彼両親の間に生まれた弟がかわいいので、また彼は絶縁を解き、父を無視しながら実家とつきあい再開。 でも私のことは親には告げず、ずっと彼女はいないことになっていたそうです。 このへんのことは全部あとからわかった話。
ひさびさに彼男と会えた私は、彼男の部屋でまず 「A男と会って、彼男の家のこと聞いたんだけど…」 と馬鹿正直に発言してしまいました。
「彼男お父さんがひどい人だなんて、どうしてそんな嘘ついたの」 と言い終わらないうち、顔面パンチを食らいました。
映画みたいに首がグルって曲がって、後ろの壁に激突しました。 そこからもう殴られ放題の私。腕を上げて目を守るのが精いっぱいで、他の部分はガコガコ殴られた。 不思議なことに耳を殴られるのが一番痛かったです。キュウウーーーッって耐えられない痛みがする。
私は無意識に、殴られながら「助けてー助けてー」と言っていたらしく、誰かから通報があったようで、助かりました。 がんばって目を守ったおかげで眼球は無傷(ここに傷ついたらもう仕事できない)、でも頬骨や鼻骨は折れていました。顎はひびだけで無事でした。
皮肉にも、そんな事態になって初めて、両者の親+私たちの会談がかないました。 A男の言うとおり、彼父はとてもまともな中小企業の社長さんらしい、ちょっと押し出しは強いけどいかにもいい人っぽいおじさんでした。 彼母はずっと泣いてたけど、彼男をかばうことはせず「罪は償わせます」と言っていたからまともな人だったと思います。
うちの両親はもちろん激怒していました。 彼両親はその前でペコペコ。 彼男だけがふんぞりかえって、彼母に 「頭なんて下げることないよ!」 「俺は、母さんにだけは苦労かけたりしないから」 「こんなやつ(私のこと)とは最初から結婚する気なかったんだから、親が出てくることじゃないよ」 とか言ってました。
彼が言うには、最初は私と結婚して、彼母・彼弟・彼男と私で新居を作り、幸福に暮らす予定だったそうです。 でも彼男がどうしても許せないことが起こったんだそうです。
それは私祖母が老人ホームに入ったことです。 私祖母は要介護度が上がり、伯母伯父の負担があまりに高くなったので老人ホームに入ったのですが、それが彼男には許せなかったそうです。
いざとなったら、彼母のことも老人ホーム送りにするだろう鬼のような女だと思ったそうです。 祖母はずっと他県の長男の伯父一家と暮らしていて、ホームに入ることも伯父一家のやむにやまれぬ事情です。 別に私が決めたわけじゃないし、みんなだってつらい苦渋の決断をした末のことなのに何言ってんだこいつ、と初めてマトモな怒りが湧きました。
私はもうむちゃくちゃ感情的になっていたので、うちの祖母と会ったこともなければ、世話したこともないくせに介護がどんなに大変かも知らないくせに、姥捨て山とか簡単に言うな。だいたいなんでそんなに母親が大事なら、いざとなったら自分で介護しようと思わないんだ、と泣きながら彼をののしりました。
彼が言うには、 「そういったこと全部を見越して、母の介護をするに見合うランクの女を選んだ。なのに介護放棄する(祖母をホームに入れたこと)ような女だとわかったので萎えた。 母をまかせられない女と結婚するわけにはいかないし、悩んでいた。 暴力をふるってしまったのは確かに自分の落ち度だが、精神的には自分も被害者だ。ここは痛み分けということで、告訴を取り下げてもらわないとおかしい」 と言われました。
この言い分に私は激怒し、私母も怒り、彼母も怒ったので三人が退席させられました。 別室で彼母は私たちにずっと謝ってたけど、よく覚えてません。 彼母は悪くないのかもしれないけど、でも彼母にも腹が立ってしょうがなくて、まともに話をしたくありませんでした。
最終的にお互い弁護士を立て、向こうがうちに払う慰謝料を決めてから刑事告訴は取り消し、いろいろと条件(もう私には近づかないこと、間違った嘘の噂をたてないことなどの確約)を書面で立てて決着になりました。
私母と私は彼に前科を付けてやりたかったんですが弁護士から 「ああいう人は追いつめると何をするかわからない」 「身の安全第一です」 と言われ、諦めました。
でもその後、彼は最愛の母親に 「もう二度とうちに来てくれるな」 「私たちの子供はこの子(歳の離れた弟)だけ。おまえのことはもう死んだと思う」 と言われたあげく、行き先も告げずに引っ越され、連絡も絶たれたので、おそらく刑事罰よりもっときつい最大の罰を受けたと思います。
細かいところを多々はしょったので、わかりにくかったらすいません。
[体験告白][DV][彼]
|
Copyright © ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)All rights reserved.
コメント