牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
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15-06-14 08:52
愛美ちゃんから最初の手紙が来たのはそれから数日後だった。「好きだよ」 「あいたいよ」「寂しいよ」という言葉の合間に、今度移り住んだ場所のことがちょこちょこと書いてあった。
その日の夜、俺は愛美ちゃんに電話を掛けた。 電話の向こうの彼女の声は、頼りなく、まるで宇宙の果てと交信しているようだった。子供である自分達の間にどうもできない障壁として立ちはだかって2百キロという距離を実感させられた。
俺たちはたわいも無い会話を何時間も続けた。終いに俺達は喋ることがなくなっても、電話を切りたくなかった。ただただ微かに伝わってくる相手の息遣いを受話器を握ったままずうっと聞いていたかった。通話料も馬鹿にならかっただろうに、俺達の恵まれない小さな恋を哀れんでか、親たちは何も言わなかった。
愛美ちゃんの手紙は殆ど毎日のように来た。一度に2通来るときもあった。俺も一生懸命返事を書いたがとても書ききれるものではなかった。その分電話で補った。俺たちは夏休みが待ち遠しかった。
5月の連休も終わった頃だろうか、彼女から来る手紙の中に悪天候の兆候が現れていた。でもまだ子供の俺にはその重要性に気がつかなかった。
「和也君」という名前がポツリ、ポツリと顔を出すようになった。近所に住んでる子で、すごく親切な子だということだ。でもその頃の俺は、あまり気にもとめていなかった。俺には、愛美ちゃんしか見えていなかった。俺の回りは、愛美ちゃんがいなくなった事をのぞいては前と何の変わりも無かった。俺も一生懸命、日記のようにして手紙を書いた。
待望の夏休みがやってきた。学校が終わって二日後、愛美ちゃんがやってきた。その日、母親が働いていたのか、俺は、一人で電車を乗り継いで新幹線の駅まで行った。愛美ちゃんはお母さんと来る事になってた。
予定の時刻にプラットフォームで待っていたけど、ぞろぞろと降りてくる人のなかに愛美ちゃんはいなかった。俺は半分泣きたい気持ちをおさえて、フォームを行ったり来たりした。
そのうち、人影もまばらになって、別の列車が入ってきた。それにも愛美ちゃんたちは乗っていなかった。おれは、がっかりしながら、階段をとぼとぼ下りて、改札を抜けると、「リョウくーん」という、あの可愛い愛美ちゃんの声が後ろから聞こえた。
俺が振りむくと、嬉しそうな顔をした愛美ちゃんが、俺の方に向かって走っていた。
俺はそのとたんに嬉しくて、涙が出てきた。愛美ちゃんはぎゅうっと俺に抱きついて「会いたかったよう」といって、泣いた。愛美ちゃんのお母さんがすぐ追いついてきて、「まあまあ、二人ともこんなところで泣いてないで、早くリョウ君のお家に行こう」といった。
俺は、最高に幸せだった。そして、それから一ヶ月、夢のような毎日を過ごした。お互いに内容は違うけど、一緒に宿題をやった。二人で、理科研究もやった。
ところで、その頃、11歳になった愛美ちゃんの体は明らかに変化し始めていた。 俺がそれに気がついたのは、来たその日に一緒にお風呂に入ったときだった。最初、以前から肉付きが良かった彼女の、お尻のあたりが太ったように見えた。
でもすぐ、それよりも、もっと顕著な変化に気がついた。彼女の胸には、それまで無かった膨らみが二つできていた。それは紛れもなく膨らみ始めたおっぱいだった。
これには、6年生だった俺も興奮した。おれは、「ああ、おっぱい」と思わず言った。二人で湯船に入ってるときに俺が気になってまじまじと見ていると、彼女は、「触ってもいいよ」といった。それまで、愛美ちゃんの胸を触ったことは一度も無かった。
おれはそおっと腫れ物にでも触るように触ってみた。おもったよりも堅かった。愛美ちゃんは、「うーん」と気持ちよさそうな声を上げながら笑った。「気持ちいいの?」というと、「うん」というので、もっと触ってあげた。彼女が、気持ちよさそうにうっとりした顔をすると、俺はすごく興奮した。
あと、彼女の股間のふくらみの周りにも、産毛よりも濃い毛が生えつつあった。俺の方はというと、まだ以前と変わらぬ、つるつるだった。でもそんなことはぜんぜん気にしなかった。俺たちは以前と同じようにオチンチンをオマンコにはめて遊んだ。
でも、その時から、はめながら、愛美ちゃんの胸を触ったりするようになった。
夏休みも終わる頃、今度は、俺と母親が、愛美ちゃんを東京の家まで送り届ける事になった。俺たちは新幹線にのって東京にいった。新幹線の中を二人で探険した。乗車口のところで二人で外を見ながら、軽くキスをしたりして、いつものようにいちゃついていたら、可愛いと思ったのだろうか、カメラマン風のおじさんが、写真を取らせてくれと頼んできたりした。
その頃、俺たちの親が、どこまで俺たちの関係を知っていたか定かじゃないが、キスしたりしてるのは知っていたかも知れない。なにしろ、本当に、いつもベタベタ引っ付いていたのだから。
彼女の家は、自分が3年生まで住んでいた社宅だった。ただ家自体は、建て替えられていた。でも自分に取っては、懐かしい故郷に戻ったような気持ちだった。
母親は、叔母の家に一泊、俺は、愛美ちゃんの家に一泊した。彼女が、同級生の写真などを見せてくれた。俺の知っている子も沢山いた。
今回は、どういう訳か、前回の別れの時ほど感傷的にならなかった。どういうのか、また冬休みになれば会えるという確信があったからかもしれない。俺たちは、次の日、俺たちは、近くの駅で「笑って」バイバイをした。ホームの上で、冬休みに絶対あおうねといって指きりげんまんをした。
その約束は結局、果たされることは無かったのだが。
俺たちはまた手紙と電話にたよる毎日が始まった。ところが、そのうち、彼女の手紙の回数が減ってきた。手紙が3日4日来ないことがあった。そして、もう冬も近づいたある日、俺は一通の手紙を受け取った。
それは愛美ちゃんからじゃなかった。封筒の差出人の欄にOO和也と書いてあった。何が書いてあったか詳しくは覚えていないが、とにかく、もう愛美ちゃんと付き合うなという内容だった。「愛美をこれ以上きずつけるな」というようなことが書いてあった。
これもまた晴天の霹靂だった。俺が愛美ちゃんをいつ傷つけた?なんでそんな事を、このわけのわからん赤の他人に言われなきゃいけないんだと思った。俺は、早速愛美ちゃんに電話をした。彼女にその手紙の事を話した。そして、 「ねえ、いったいこの和也って子は何?」と聞くと、 「お友達。私がさびしいからいろいろ私の話を聞いてくれる」といった。
俺が、 「ぼく、愛美ちゃんを傷つけたの?」ときくと、 「ううん、私はリョウ君好きだもん。」といった。
「じゃあなんで、その人はこんなこといってんの」ときくと、 「知らない」というだけだった。俺は、和也という人と付き合わないでくれという事を言ったけど、彼女は、 「なんで?和也君は、すごくいい友達だもん」というだけだった。
そして、いろいろ問い詰めているうちに、彼女は黙ってしまった。俺たちは、多分一時間以上も無言で電話口に立ったままだった。
次の日曜日に俺は愛美ちゃんに会いに行くことにした。親に、愛美ちゃんとどうしても話したいことがあるからと頼み込んで許しをもらった。俺はその頃よく一人で電車に乗っていたので問題なかった。
俺は愛美ちゃんには何も連絡しなかった。彼女の家に着くと、お母さんが玄関口にでて、おれを見てびっくりして「あらぁ、リョウ君どうしたの?」といった。愛美ちゃんは遊びに行っていなかった。
お母さんは「寒いし、上がってまったら」と言ったが俺は、玄関の外でまった。俺は何時間も待った。愛美ちゃんのお母さんが途中で心配して何回か出てきて中に入るように奨めたが、俺は外で待ち続けた。
日も沈みかけて、薄暗くなり始めた頃、愛美ちゃんが戻ってきた。彼女は一人じゃなかった。結構背の高い中学生らしき男の子の腕に自分の腕を絡めて嬉しそうになんか話しながら歩いてきた。
俺の姿を見るなり、彼女の顔色が変わるのがわかった。彼女はあわてて、彼から離れた。彼女は 「リョウ君、どうしたの」と一言いった。その中学生は俺を見て、 「ああ、お前がリョウか」と吐き捨てるようにいった。 愛美ちゃんは、 「和也君」と一言いった。
愛美ちゃんは、夏に会ったときよりも、一段と大きくなって、体もさらに丸みを帯びていた。俺は相変わらずチビだったから、彼女の方が10センチくらい背が高かったかもしれない。
その和也という男の子は、一見不良っぽいが、なんとなく格好よかった。彼は愛美ちゃんよりも優に頭一つ以上背が高かった。
俺は、その二人の前に立って、自分がちっぽけで惨めな存在に思えた。そして、彼は、それに追い討ちをかけるように、 「お前、愛美をこれ以上傷つけるなっていっただろう」といった。
上から降りてくる既に声変わりした低い声は威圧感があった。愛美ちゃんに何か言いたかったが、何も言えずその場で立ちすくんでいた。
愛美ちゃんが 「リョウ君・・・」と何か言いかけたら、そいつは、遮るように 「お前は何も言わなくていい」といって、それから、毎日悩んでる愛美ちゃんを自分がいかにして慰めているかという話をした。
俺は怒りと悔しさでカーッと頭に血が上るのがわかったが、あまりにも相手に圧倒されて、何も言うことができず、ただ唇をかんでいた。最後にやっとのことで、震える唇から搾り出した言葉は 「愛美ちゃんは僕が好きなんだ・・」だった。彼は、 「アホかお前は」といって一笑に付した。
俺は悔しくて涙がボロボロこぼれてきた。とても自分にかなう相手ではなかった。 愛美ちゃんはそれを見てか「リョウ君」といって泣き出した。彼は、 「見ろ、お前のせいだ、もうこいつを苦しめるな」といって彼女の肩を抱き寄せた。俺は心臓を引き裂かれるような気がした。
俺はもうその場にいたたまれなくなって、そのまま彼らに背を向けると、何も言わずに走りだした。その場から一刻も早く逃げたかった。
母親が新幹線の駅まで迎えに来てくれた。彼女は俺の様子がおかしいのに気がついたのか、 「愛美ちゃんとなんかあったの?」と聞いてきた。俺は、我慢してたものが一気に噴出した。
「お母さーん、僕さあ、僕さあ・・」といって母親の胸で泣き崩れた。彼女はそのまま何も言わずに俺を抱いて頭を撫でてくれた。
数日後に愛美ちゃんから手紙が来た。彼女の宛名書きを見ていると、あの憎たらしい中学生と腕を組んでいる愛美ちゃんの姿が目に浮かんだ。俺は開封せずにゴミ箱に捨てた。
さらに数日後にまたもう一通来た。それも開けずに捨てた。冬休みになってもお互いに連絡を取らなかった。実は、愛美ちゃんは一回電話もしてきたが、俺が出るのを拒否した。
俺は、あの中学生に対する嫉妬で気が狂いそうだった。毎日、胸が苦しくて、一日中ため息をついていた。
元旦に彼女から年賀状が届いた。ぱっと見たところ何の変哲も無い型どおりの年賀状だった。ただ、最後にひとこと「リョウ君、ゴメンね」と書いてあった。
俺は、あの中学生の顔がまた眼に浮かんだ。「ごめんね」と言われても許せなかった。それが彼女から来た最後のメッセージだった。
俺は完全に打ちひしがれ、食べ物もしばらく喉を通らず、体重も減った。両親は心配していたはずだが、何も言わなかった。それ以降、家では愛美ちゃんの話題はいっさい出なくなった。
後日母親に聞いた話だと、あのあと、母親が愛美ちゃんのお母さんと話をしたらしい。向こうの親も何があったのかしらなかった。ただ愛美ちゃんもその後しばらくふさぎこんでいたらしい。
あと、俺が捨てた手紙は、母親が密かに取って隠してあった。大人になってからからそれを読むと、当時の彼女の気持ちが手に取るように伝わってくる。
結局、彼女は俺と離れ離れになった寂しさから、たまたま近所に住んでいてしりあった、中学生の彼と良く話すようになった。彼女は、彼がいろんな悩みを聞いてくれるから、お兄さんのような感じで付き合っていたのだが、彼は独占良くが強く、愛美ちゃんに彼氏がいるのがいやでしょうがなく、とにかく俺たちの中を妨害するようになった。
あの日は彼女も彼に威圧されて、言いたいことがいえなかったというのだ。その後の手紙にも、彼女の悲痛な心の叫びが聞こえてきそうな内容だった。
でも、そのときの俺は、もうあまりの嫉妬心から思考回路がオーバーロードを起こしてたから、その手紙をその時点で読んだとしても、おそらく、頭の中に入ってこなかっただろう。
俺は、勇気をだして、「愛美ちゃん」といった。彼女はびっくりしたようにこっちを見た。俺たちは廊下の真ん中で向かい合っていた。心臓がドキドキなっていた。
空白の時間がすぎていく。2年生が俺たちの方を興味ありげにジロジロみながら通り過ぎていく。あの小学校から来た生徒は全体の4分の1しかいなかったので俺たちの事を知っている子は少なかった。
俺はそこから、なんて切り出して言いかわからなかった。昨日からさんざん頭のなかでリハーサルしてきたのに頭のなかは真っ白で台詞が浮かんでこなかった。 始業ベルが鳴った。俺はとっさに、「放課後、会える?」ときいた。彼女は、困 ったような顔をしてだまっていた。「何組?」と聞くと、彼女は「2組」と 答えた。俺は「じゃあ、あとで行くから待ってて」と一方的にいって分かれた。
その日は、一日中彼女のことばかり考えて、授業は上の空だったことは言うまでも無い。俺は、あまた頭の中で何を言うのかずっと考え続けていた。愛美ちゃんが待っててくれるかどうかもわからなかった。
放課後、彼女のクラスにいくと、教室の端の方の机に、愛美ちゃんがぽつんと一人で座っていた。他にはだれもいなかった。俺は、扉を後ろ手で閉めると、彼女 の方に近寄っていった。彼女は不安そうな顔をして、俺の方をみていた。彼女のところまでくると、俺は彼女の前の席に座った。おれは、心臓がバクバクドキドキして痛いほどだった。
俺は、まずリハーサル通り「こんにちは」といった。実際に言ってみると、なんか間の抜けた感じだが、彼女もそれにこたえて「こんにちは」といった。 彼女の視線は、机の上にあった。
「久しぶり」と俺が言うと、 「うん」と愛美ちゃん。それから、俺は一生懸命一日中考えていた台詞をいおうとした。 「愛美ちゃん、僕さ・・・」といいだすと、彼女は、 「リョウ君、もう何にもいわないで。もう終わったことだし。私が悪いのわかってるし、なに言っても許してくれないってわかってるから」 「・・・・」 おれは、なんか出鼻をくじかれて、次にどう言葉を繋げていいか困っていると、愛美ちゃんは、俺の方を見て、 「リョウ君、元気だった?」と、助け舟を出してくれた。 「うーん、まあね・・・・愛美ちゃんは?」 「私は、うーん、わかんない・・」とまた視線を落とした。
「あのさ、なんていったっけ、あの男の子」 「和也君?」 「うん、まだ、仲良くしてるの?」俺は、表向きは平静を装っていたが、実は、心の中は嫉妬心で胃がよじれるような気分だった。 彼女は間髪いれず、「ううん、あの後すぐ別かれた」といった。 この意外な返答に、俺は、一気に落ち着きを取り戻した。 「ええ?」 「なんか、あの子すごく嫌になったの。」 「なんで?仲よさそうだったじゃん」 「うーん、そうなんだけど・・」 「・・・」
「なんか、リョウ君にすごい意地悪だったでしょ?」 「うん」 おれは頷きながら、あの、ちょっと格好をつけた憎たらしい顔を思い出していた。 また、内臓をギュウと捻られるような気分になった。 「リョウ君がすごく可愛そうだった」 「・・・・」 おれはなんて応えていいかわからずに黙っていた。 「私がまんできなくて、後でいろいろ言ったら喧嘩になっちゃって・・」 「そうだっんだ」 「信じてくれないかも知れないけど、あの時も、私、リョウ君すごい好きだったから」 「でも、あいつも好きだったんだろ?」 「うん、でもちょっと違ったの」 「・・・」
「なんかリョウ君の悪口ばっかりいうから、私、リョウ君の方が好きだってはっきり言ったの」 「・・・」 「そうしたら、怒っちゃって、それから私にもいろいろ嫌がらせしてきた」 「そうか」 「なんかそれで、一気に嫌いになっちゃった」 俺は、この予想外な話の展開に少しびっくりしたのと同時に、嬉しくて仕方がなかった。急に全身にエネルギーがみなぎってくるのがわかった。スーパーヒーローが、やってきて、いじめっ子を、こてんぱんにやっつけてくれたような、なんともいえない爽快感を味わっていた。
「わたし、東京に行ってからさ、寂しかったから、お友達もいなかったし」 「・・・」
「あの子が親切にしてくれたの。なんかお兄さんみたいな感じで」 「・・・」俺は無言で頷きながら彼女の話を聞いていた。 「でも最後、なんかあんなると思わなかった」 「そうか、知らなかった」と俺がいうと、 「手紙にも書いたと思うけど・・」といって俺の顔をみた。俺は、読まずに捨ててしまった手紙の事を思い出した。 「ああ、あの手紙・・・・あれ、読まないで捨てちゃった」 愛美ちゃんは驚いたような顔をして 「ウソー、ひどい」というと、愛美ちゃんは俺の顔をにらんだ。 俺は、一瞬、いい訳を考えようとしたけど、正直に本当の事を言った。 「ごめん。だって、耐えられなかったんだよ」 「・・・」
「僕さ、愛美ちゃんの書いた宛名を見るだけでさ、あいつの顔を思い出しちゃってさ」 「・・・」 「なんか、心臓が引き裂かれるような気持ちになってさ、毎日、苦しくてため息ばっかりついてた」 「ごめんね、本当にごめんね、私なんていっていいか・・・」彼女は下を向いた。 「いいよ。もう終わったことだしさ、忘れようよ」 「うん・・・でも、わたし・・・・嬉しい、またリョウ君と話ができるなんて」 このときの愛美ちゃんは本当に嬉しそうな顔をした。俺は可愛いなと思った。 「わたし、またこっちに来るってわかったとき、リョウ君に会ったらどうしようってそればっかり考えてた。」 「・・・・」
「あっても、無視されるだろうなって・・・」 おれは、すこし心に余裕が出てきて 「でも昨日、そっちが無視したじゃん」と意地悪くいった。 「うん、私なんか恐かったの」 「何が?」 「まだ怒ってんだろうなと思って」 「おれ、そんな顔してた?」 「わかんないけど、なんて言っていいかもわからなかったし」 そして、「ふー」と大きく息をすると、愛美ちゃんはうれしそうにニッコリ笑って 「でもよかった。リョウ君まえと変わってなくて」といった。
「僕はもっと早く大きくなりたいたけどね、僕だけいつまでも子供みたいでさ」 「でも、ちょっとおっきくなったんじゃない。」といって、愛美ちゃんは俺の足の先から頭のてっぺんまでながめた。 「うん、そうかも、でも愛美ちゃんは随分変わったね、最初だれだかわかんなかった」 「私も大きくなった?」 「ていうか、ちょっと太くなったんじゃない?」 「いやだあ、もう、気にしてんだから」 「それに、すごいじゃん」といって、俺は自分の胸の前に両手を持ってくると、大きなおっぱいの形に動かした。子供の頃から肉付きの良かった彼女は、女性的な肉のつき方をして、さらにムッチリ度が増していたけが、特に2年間のうちに胸は良く発達して、セーラー服が窮屈に見えるくらいになっていた。 「えっちー」といってい愛美ちゃんは俺のおでこをポンと叩いた。 俺は、嬉しくて仕方が無かった。愛美ちゃんとこんな風に喋れる日が来るなんて、つい二日前まで思っても見なかったのだから。
思えば俺は、その前の二年間、愛美ちゃんの事を自分の心の中から消そうといつも努力しつづけていた。ほんの30分ほどの間に、俺たちは、以前ののりを取り戻しつつあった。驚異的だった。俺は、ぽんぽんと軽い会話を交わしながら、大人の女性になりつつある愛美ちゃんに新たに魅了されていた。
二人の会話がふと途切れたとき、俺は愛美ちゃんの目を見ていった。 「愛美ちゃん・・・」 愛美ちゃんは恥ずかしそうに 「なあにぃ?恥ずかしいじゃん、そんな見たら。なにぃ?」 俺は、本当は「好きだよ」、といいたかったけど、なんか気恥ずかしていえなかった。
「うん、なんでもない」といってごまかすと、 「なによう、いいかけて」と追及してきた。 おれは、かわりに、 「僕さ、よく愛美ちゃんの夢を見てた」といった。 「えー、ほんとう?私も」 「エーどんな夢?」 「リョウ君が先に言って」 「うん、大した事ないんだけどさ、・・・」といってから、 俺は自分の夢の話をした。 「へー」 「それだけ。面白くないでしょ。はい、今度、愛美ちゃんの番」 「私のはねえ・・・ちょっと言うの恥ずかしい。やっぱやめる」といって恥ずかしそうな顔をした。
「ずーるい、僕は教えてあげたじゃん」 「うーん、じゃ言う。私のはね、リョウ君とね、・・・海で『変なこと』してるの」と恥ずかしそうにいった。 俺は、そのとき「変なこと」というすっかり忘れていた言葉を久しぶりに聞いて、心が騒いだ。なんか股間がムズムズとしてきた。 俺は「『変なこと』って、どっちがエッチなんだよー」とわざと意地悪そうにニヤニヤして見せた。 彼女はニコっとしたあと俺の目をじっと見て、 「リョウくーん・・・・」というと急に思いつめたような顔をした。そして 「わたし、今日ね・・・」といって、視線を落とした。
「今日どうしたの?」と俺がきくと、 「わたしね・・・わたしね・・・」といって声を詰まらせた。 彼女は、机の一点を見めているようだった。俺はすこし待った。 彼女の体が小刻みに震えるように見えた。 俺は、彼女の顔を覗き込むようにしてみた。 俺の視線に気がついて、俺の方を見た彼女の目に涙がが浮かんでいた。
俺が「え?泣いてるの」と思った瞬間、彼女の口元がギュウと歪んで、わーっと泣き出した。 俺は、立ち上がると、彼女のそばに行って、彼女を抱きしめてあげた。 彼女は泣きながら、 「ごめんねー・・・・・リョウ君・・・・本当にごめんね・・・・・リョウ君」 とそれだけを何回も何回も繰り返した。 「いいよ・・・わかったから・・・もういいよ」 という俺の目からも、涙がこぼれた。 彼女の涙で俺の学生服の前が濡れた。 彼女はしばらく俺の胸でしゃくりあげるように泣きつづけた。
そのときに不意に、ガラガラという音とともに、入り口の戸が開いて、男子が数人入ってきた。俺たちに気がつくなり、「おっとー」「ヤバイヤバイ」「なんか、なちゃってよ」と口々にいった。
俺たちは、あわてて離れた。彼女はあわててセーラー服の袖手で涙をぬぐって鼻をすすりながら笑った。俺は、愛美ちゃんの手をとると、驚きのまなざしで俺たちを見ている、2年生を尻目に、教室を出た。 俺たちは、外に出ると、校舎と校舎の間を通って、学校の外にでた。生徒が、門の周りに何人かたまっていた。俺たちは、無視して、あてもなく、ただ、人のいないほうへ向かって歩いていった。
歩きながら愛美ちゃんは俺に聞いた。 「リョウ君って、付き合ってる子とかいるの?」 俺の頭にある女のこの顔が一瞬浮かんだが、すぐかき消した。2年生の時にちょっとした事があった。でもその時点では付き合っているという状態ではなかった。俺は 「ううん、いないよ。愛美ちゃんは?」と聞き返した。 愛美ちゃんは何の躊躇もなく、 「私もいないよ。だってこっちに来たばっかりじゃん」といった。 そのあと俺たちはしばらく何も言わないで歩いていた。でもお互いに何を言いたいのかわかっていた。俺たちは、畑の間の細い道を歩いていた。周りには誰もいなかった。
しばらくして、愛美ちゃんがぽつりといった。 「わたし、また前みたいにリョウ君と仲良くしたいな」。俺は 「うん、僕も」といった。俺たちは立ち止まってどちらからともなく抱き合った。 そしてお互いの唇を求め合った。2年半ぶりのキスだった。俺たちはお互いの舌を絡めあった。これでもか、これでもかというように、絡めあった。俺は、行き先を失って、さまよっていた俺の魂が、やっと、帰るところを見つけたような、安堵感を味わっていた。俺は愛美ちゃんのつぶった目からツーっと一筋の涙がこぼれ落ちるのを見た。このときほど、愛美ちゃんが愛おしいと思ったことはなかった。俺はこのとき世界中で自分が一番幸せ者だと思った。
<続く>
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