窃視・Ⅲ_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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窃視・Ⅲ

15-06-14 10:26

「これがあれば、他には、なにも要らぬわい」
そう云って
老人は小さな青い種のようなバイアグラを奥歯でガリガリと噛み砕いた

青い種を噛み砕いた老人は、わたしも顔を知っている県会議員だった
「わしゃ、これしか楽しみがのうてなぁ…」

わたしは…
二重カーテンの後ろに居て
じっと動かずに、息をころしているのだった

県議の老人は逸《はや》る気持ちを抑えるのをもどかしく
すばやく、数十万円はする高価な背広を脱ぎ去った
高価な背広とは全く対照的な…
小柄で貧弱な老人の裸体があらわれた

老人である県会議員の肩幅は狭く
猫背気味で
細かい皺《しわ》の刻まれた皮膚は艶《つや》が無かった
胸部も平たく薄いが、腹だけは出ている
脚は細く、尻の皮は弛《たる》んで並んだホウズキのようだった
老いた県会議員の裸体は間違いなく貧弱な老人のもの…
だが…
老いた県議の細い脚の股の中心からは男性の肉柱が強烈に起立している
そして、垂れ下がった睾丸は小ぶりな鶏卵ほどもあった
睾丸の中心から起立している老人の肉柱は見事だった
これだけの男根を持った老人の、性の勢いを止めるのは誰にも困難だろう…
とわたしは思った

この老人は…
老人なのに…
「そこ」だけが凄い…

老人の…
使い込まれて太い、「そこ」だけが、紫色にテラテラと天井を向いている
鈴口からあふれた透明な粘液が鈍く光って、滴《したた》っている

痩せて貧弱な老人が、力強く自らの肉柱をそそり立たせている図は
まるで古い地獄絵の中に描かれている餓鬼《がき》のようだった

古い地獄絵の中の女たちは…
異様に巨大な性器を持った餓鬼の群れにたかられて
死ぬまで犯され続けるのだった…
死ぬまで、餓鬼の男根から無限に出る精液を注入され続ける…
いや、苦界に堕ちた女たちは…死んでも犯されるのだった
女たちは死んでも許されない…
性餓鬼に狩られ
死ぬまで性餓鬼から犯され
いや死ぬことを許されず…
永久に犯されるのが地獄絵の中の女たちだった

その…
苦界で女を狩る地獄図の中に居るような…
性餓鬼にそっくりな身体の、老いた県会議員だった

性餓鬼と同じに
老いた県会議員の頭の中には、女体の事しか無かった
いま老いた分だけ、女体のことしか考えられないのだった
それしか、そのことだけしか頭の中に無い…老人の肉体に
クスリで勃起した強烈な男根だけが
別の生き物のように取り付いている

老いた県会議員は…女体《にょたい》に射精することしか頭に無かった

全裸の老いた県会議員は自らのそそり立つ男根を見下ろして
その巨大さ、太さ、硬さ、形に、自信たっぷりだった
老人はクスリで怒張している自らの強烈な男根を愛《いと》しく見下ろしている
「これだけが、楽しみじゃ…」
と再び、云ったのが、わたしには聞こえた

力強い自らの男根を見下ろして…
「今宵《こよい》はたっぷりと女の汁を吸わせてやるからなぁ」
とも、老人は云った


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