狂女125_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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狂女125

15-06-14 10:36

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「狂女」へ

そうした浮かない気分が続く、或る眠れない深夜、離れの方から突然女の悲鳴が聞こえて思わず起き上った。
急いで明かりを点け、窓を開けて平屋の暗い離れを見下ろすと、父さんらしき男が一人母屋の方へあわてて逃げて行く。

『まさか・・・』
僕は鼓動を感じながら階段を下りて行き、階下で父さんとかち合った。
父さんは驚いている。
「どうしたんだい?」
「いや別に・・・」
すぐに平静を装って自分の寝室に向かう父さんの姿を見届けた後、僕は気が気でなく離れへ行った。
明かりが点けられており、締められている窓に向かって、「おい、何かあったのか?」と聞いたら、「あ、ご主人様」という芳美の声がして窓が開けられた。
「怖かった・・・。変な男が覗いていたので・・・」
「親父だよ」
「ええ!?」
「ちょっと入れてくれんか?」
「でも・・・」
「いいから」
「はい・・・」
しばらく経ってドアが開けられ、部屋に入った。
加奈、芳美、智子それぞれの布団が並んでおり、今夜も寝苦しいのだろう、弱い冷房が効いている。
僕が真ん中の布団の上に立つと三人は部屋の空いている端に並んで正座をした。
「ちゃんと鍵を掛けとかんと駄目だぞ」
「はい、すみませんでした」
「すみません」
「すみません」
三人は頭を下げて謝った。
「まあ、親父の方が悪いがな。痴漢するとは」
そう言ったものの、父さんの弱みを掴んだ思いで内心愉快でもあった。
それから三人をまじまじと見た。
電灯下の彼女たちのすっぴん肌はさすがに年齢を感じさせるが、それが生身の女を思わせて刺激的だ。

痴漢騒ぎがあって神経が高ぶっていた上に飼い主が現れた訳だから女たちも眠れなくなってしまった。
僕が「外に出てみるか?」と聞くと、「はい」とか、「いいですね」「行きましょう」なんて調子に乗ったので彼女たちをこっそり外に連れ出す事にした。
静けさに包まれた深夜は不気味で、もしも誰かに見られたら・・・という一抹の不安を拭い切れなかったけれど、一時的にせよ家の中から解放された感じは言い様の無い快感だった。
同棲生活に行き詰まってマンネリ化し、将来への見通しが無くなり掛けていた頃だけに、女たちとの新鮮な刺激が欲しかった。
闇に目が慣れ、暗い道も危なげなく進み、落ち着き先として神社へ行った。鳥居とは逆の方向で、いきなり社殿裏が現れる。
昔、ここで勝叔父と共に加奈さんを犯した記憶が甦る中、三人をその草むらへ導いた。
「加奈さん、ここを覚えているかい?」
「いいえ」
加奈さんは闇を怖がっている様子で答えた。
「忘れちゃったのか・・・」
寂しい気持ちになったが、精神異常だったから当然だろう。


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