そして黙っている僕に、「加奈とはうまく行っとるのか?」と聞いた。「はい」そう答えた僕を好奇の目でじっと見ていた叔父さんは、「君は二年前に比べると随分大人びたな」と意味ありげな笑みを浮かべて言った。「そうですか」「女の扱いもさぞかしうまくなったんだろ?」「まあ・・・」僕は苦笑いした。「ふふ、それでこそ男だ」沈黙している時にアイスコーヒーが運ばれて来、叔父さんは砂糖を入れて二口飲んだ。僕はずっと気になっていた、強姦犯と偶然会った事を尋ねた。「おお、それよ」叔父さんは店内を警戒するように見てから僕の方に身を乗り出し、「どんな男だと思う?」と声をひそめて逆に聞き返した。「さあ・・・」「それが、俺より五つ年上の、今は或る会社の係長になっとる男だ」会社の係長と聞!
て僕は思わず目を見張った。声も無く驚いているその僕を見詰めたまま叔父さんは体の位置を戻し、「ひどい話だろ?女を強姦しておきながら自分は係長に出世だ」と相手を非難した。「・・・」しかし叔父さんは溜め息を吐いてスプーンでコーヒーを掻き回しながら、「まあな、男とはそういうものかもしれんが・・・」と呟いた。僕は俯いて椅子にもたれたきり黙っていた。人を不幸な目に合わせておいて平然と過ごして来た犯人にむっとしたが、ではこの自分はどうなんだ?もっとひどい事をしているじゃないか・・・。勿論、犯人を責める叔父にだってそんな資格などない筈で、悪人が悪人を責めるようで滑稽ですらある。僕は、男とは所詮醜い生き物で、結局それを認めている叔父共々お互いに自分たちの醜さを言い合っ!
ているような気がしていた。 !
「その男とは強姦プレーで知り合ったんだ」叔父さんは苦笑いをして小声で打ち明けた。「どんなふうにですか?」「そいつと代わる時によく顔を合わせてな。たまたま、酒を奢るって言われて一緒に話をしたんだ」「・・・」「初めはお互いにスケベな話をしていたんだが、酒が回って自分の過去を言いやがった」「・・・」「女子高生を強姦したなんて打ち明けてな。色々聞いていく内に加奈の事に違いないと思った訳だ」「その時、男はどんな感じでした?」「悪い事をしたなんて言ってたが、本心かどうか・・・。ま、強姦したい欲望は今でもあるが、プレーで押さえとるってとこだ」「・・・」 「そろそろ行くか」叔父さんは腕時計を見て話を!
打ち切り、僕は応じて立ち上がった。【黒い蝶】へはタクシーで行く事になっていた。所在地は市内のとあるマンションの五階。未成年者のプレーは違法行為で、それを承知で営業しているのだから闇の会に違いない。正直不安だが、興味の方が強い。タクシーは繁華街を通過してやや寂しい所に入り、しばらくそこを走った後、踏切を横断してやや活気のあるビル街に出、そこを五分程走って✕✕マンションの前で停まった。叔父さんが料金を払い、一緒にそのマンションの中に入って行った。人が住んでいるのに自由に出入り出来るのだろうか?普通は雑居ビルとかに在ると思うのだが・・・。ますます胡散臭く、やくざがらみの組織が運営しているのでは・・・?と、さすがに怖くなってきた。「緊張しとるのか?心配せんで!
いい」叔父さんは平然としている。
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