プールの底に横たわって空を見上げると、一枚フィルターがかかったように世界が青く見える。
勢い良く空気を吐き出すと、気泡は輪になって登っていく。
田所和也(たどころ かずや)はできるだけ心をからっぽにして何も考えないようにした。
それからもっとつまらないことを考えるようにした。
たとえば、溜まった夏休みの宿題や、社会の授業で暗記した歴史の年表なんかを頭に巡らせていく。
夏休みで開放中のプールでは、水をかけあってはしゃぐ子どもたちの声がどこかとても遠くから聞こえているように感じる。
実際和哉は、みんなが集まって遊んでいるプールの中央から一人離れるようにして、隅っこに沈んでいた。
誰もそんな和也に気付かないが、もし気付いたとしても、6年生がひとりで潜水して遊んでいるようにしか見えなかっただろう。
誰も和也が、まさか「勃起を収めるため」にこんな事をしているとは思わない。
しかし近くで見れば確実に、ポリエステル生地を突き上げる何かを見つけてしまうだろう。
底まで潜るために、だいぶ空気を吐き出していたのでそろそろ息が続かなくなってきた。
和也はギリギリまで我慢して、勢い良く水面に顔を出すと、上がった息であたりを確認した。
どうやら他の子はまだ中央で水をかけあったり、練習用に作られたラインで泳ぎの練習をしていて、和也のことは気にもとめていない。
和也はもういちど顔だけ水につけると、自分の股間を確認した。
まだ半立ちの状態ではあるけれど、このくらいならプールから上がって歩いていても不自然ではなさそうだ。
和也はプールサイドに上がると、そそくさとトイレに向かった。
まだ半立ちの状態なので、念の為に大便器側に入って用をたすことにした。
濡れていることに加えて、ヒモを強く結びすぎていたためになかなか海パンが下ろせず、ごぞごぞやっている間に刺激され、また和也のペニスはいきり立ち始めた。
ようやくヒモを解き、いそいで海パンをずり下げると、ペチンという音とともに反り返った和也のペニスがお腹に当たった。
まだ毛は生えておらず、皮につつまれてはいるが、先っぽからはピンクの亀頭が少し顔を出している。
「めんどくさいなぁ…もう。」
勃起のメカニズムや射精のことについては保健の授業で習っていたが、和哉はまだオナニーはおろか精通も経験したことがなく、勃起したペニスを収めるすべは知らなかった。
夏休みの小学校プール開放ももうすぐ終わる。
田舎の小さな小学校であることに加えて、自由参加なので、行けば必ず友達と会えるという保証はない。
実際、今日の和也はクラスの友達とも出会えずに一人だった。
わざわざ服の下に海パンを履いてきたので、そのまま帰る気にもならず、泳ぎの練習をするでもなく遊ぶのでもなくただ水中を漂っていた。
そんな和也がなぜ股間を勃起させているのかというと、原因は同じクラスの小西春香(こにし はるか)にあった。
和也と春香は、同じクラスというだけで、そう親しい間柄でもなかった。
お互い幼稚園の頃から一緒なのだが、趣味が違うのか性格が違うのか、お互いの家に遊びに行くような友達にはならなかった。
和也は六年生で春香と同じクラスになるまで、春香のことを異性として意識したこともなかった。
和也と春香が最後に一緒のクラスになったのが三年生。
クラスと言っても田舎の小さな学校なので、A組とB組しかないのだが、とにかく廊下ですれ違うことはあっても、特になにも感じることはなかった。
三年生の頃の春香は、少し太り気味で、背も小さかった。
それが六年生で同じクラスになり、さらに隣同士の席になってみて、和也は春香の成長ぶりに驚かされた。
三年生の頃は和也より頭ひとつほども小さかったはずなのに、身長は今や155センチの和也よりだいぶ大きいくらいで、それに引っ張られるように、たるんでいたお腹やほっぺたもひっこんですっきりし、イノシシとアダ名を付けられて泣いていた頃の面影はなくなっていた。
それより何より、和也の視線を釘付けにしたのが、春香の胸とふとももだった。
学校指定の体操服から浮かび上がるスポーツブラジャーの線や、こちらも学校指定の青い生地に白のラインの入った短パンから伸びる足は、和也の春香を見る目を変えてしまった。
春香は体のサイズより少し小さい体操服を着ているので、余計に体の線が目立。
どうやら来年中学校に上がるので、もったいないから新しい服を買わずにおくつもりのようだということを、春香と他の女子同士の会話から盗み聞きした。
今年の夏が始まったばかりの頃、六年生になって初めて春香の半袖半ズボンを見た時は、授業中に勃起してしまい、休み時間になっても立ち上がることができなかった。
その頃まだ春香はスポーツブラジャーをつけておらず、パッドの入ったシャツを着ているだけだったので、横からでも胸の形がよくわかった。
今までテレビや映画でエッチなシーンが出てくると思わず勃起してしまうことがあったが、現実の、しかも同級生をみてこんな気分になってしまうのは、和也にとって初めての事だった。
さすがにしばらくすると春香が自分で気付いたのか女子の誰かが助言したのか、スポーツブラジャーをつけるようになったが、その線が体操服に浮き出ているだけで、和也を勃起させるには十分だった。
プールが始まると、和也はできるだけ女子を見ないよう必死だった。
同級生の男子たちも、そろそろ性に関しての知識を備えだし、春に行った修学旅行では「誰々はちん毛が生えてる」とか「誰々はちんこがデカイ」とか、成長の早い男子はそういう話題の標的になった。
中には入浴中に羽交い締めにされ、ペニスを刺激され勃起してしまい、未だにそのことでいじられるかわいそうな同級生もいる。
男湯ならともかく、男女混合のプールで勃起しているのがバレようものなら、学校中に言いふらされて変態扱いされるのは目に見えていたからだ。
とにかく今まではなんとかプールの中で春香を見ないようにすることで勃起せずにすんでいた。
夏休みに入っていざプール開放が始まると、学校の授業とは違い、プールで自由に遊べるので、友達同士と遊ぶことに夢中になり、春香のことなどすっかり忘れていた。
しかし今日はいつも来るはずの友達が来なかったので、手持ち無沙汰だった和也は、春香のことを思い出してしまったのだ。
春香を探すと、練習用のラインで他の女子と一緒にクロールの練習をしている。
何人かいる女子の中で、やはり際立って春香の体は魅力的だった。
いままでプールの授業では意識して見ないようにしていたので気付かなかったが、競泳用水着に浮きだした胸や背中からお尻にかけてのラインは、体操服を着ている時よりも過激的だった。
いけないと思いつつも、興味が勝って春香の姿を盗み見てしまう。
そして、和也が休憩するふりをして体育座りでプールサイドから女子たちを見下ろしていたとき、和也の劣情を暴走させることが起こった。
ずれた水着をを直そうと、春香が肩部分の生地を引っ張った時、一瞬だが薄ピンクの部分が見えてしまった。
はっきり乳首が見えたわけではなく、乳輪がチラっと見えただけだったが、和也を勃起させるには十分だった。
あまり長い間プールサイドで休憩していると監視員の保護者に声をかけられそうだったので、急いで不自然に尖った股間を抑えたままプールに飛び込んだ。
そのままなんとか勃起を抑えようと心を落ち着け、今に至るのである。
トイレの中で海パンは脱いだものの、和也の勃起はなかなか収まらない。
少しやわらかくなり始めると、とたんにさっき一瞬見えた春香のピンク色の部分が頭に広がる。
早く戻らないと、と焦る気持ちとは裏腹に、和也のペニスはビクンビクンと脈打つのだった。
「とりあえずオシッコしないと…」
オナニーをまだ知らない和也にとって、勃起を収めるすべはそれぐらいしか無かった。
勃起したままのペニスでは難しいが腰を浮かして身をかがめ、なんとか出しやすい体勢になって用をたす。
こんなところを誰かに見られたら、勃起して変な格好でおしっこしていた変態だと一斉にクラス中はおろか学校中に広まって一巻の終わりだと思った。
やはり大便器を選んでおいてよかった。
なんとか小便を出しきって、ペニスも普通サイズに戻った。
和也はホッとしてプールサイドに出て行くと、なにやらプールの中が騒がしい。
どうやら低学年を高学年がおんぶして帽子取りをしようということになっているらしかった。
すぐに和也もクラスメイトとともにチーム分けじゃんけんに加わった。
内心、和也は「助かった!」と思った。
こんなゲームをしていればエロイことを考えることもないし、遊び相手が居なくて手持ち無沙汰になることもないだろう。
チーム分けが決まると監視員が開始の合図にホイッスルを鳴らした。
二十数騎の騎馬が、ぐるぐるとプールを回り始めた。
プール開きの時に一度やった遊びなので、みんな遊び方は知っている。
小さな騎馬戦のようなもので、おぶられた方の低学年が首からかけたゴーグルが目印で、和也たちは首からゴーグルをかけていない騎馬の帽子をとるのだ。
和也とペアになったのは、2年生の真央(まお)だった。
真央とは家が近所で、通学する時の班が同じなので普段からよく話すし、遠慮しなくていい。
それは向こうも同じようで、上級生だということを関係なしに自分が行きたい方へどんどん命令をしていく。
勝ち気な性格で、こういうゲームになると絶対に譲らない。
二度目のホイッスルが鳴ると、みないっせいに相手を見つけて組み合った。
2年生の中でも身長が高い方の真央は、続けざまに自分のクラスメイトの乗った騎馬を倒していく。
三人目の帽子をとった時、ふいに、春香の騎馬が目に入った。
低学年の男子をおんぶしている。
首からゴーグルをかけていないので、敵にまわってしまったようだ。
ただでさえ背の高い春香なので、動きは遅いが敵の騎馬の中では圧倒的な強さを示している。
しかし和也の目はそんなことよりも、激しく揺れる春香の乳房に惹きつけられていた。
再びじわじわと股間に血液が集まり始めたの感じていたが、真央の声で我に返った。
「かずくん、動かないととられるってば!」
「あ、ごめん…」
気が付くと真横から5年生と3年生が組んだ騎馬が近づいてくる。
お互い間合いを詰めながら相手の隙を狙う。
自分より背の小さい騎馬はあらかた倒してしまったので、ここから先は自分より高い騎馬を相手にしなければならないようだ。
不利な状況だが、負けず嫌いの真央は簡単に帽子をとられなかった。
一生懸命背伸びをして、それでも無理だとわかると和也のふとももに足をおいて、力をいれ立ち上がるようにして相手の上から帽子を狙った。
「うっ…!」
上で一生懸命になっている真央は気付かなかったが、立ち上がった瞬間に下で和也が短くうめき声をあげた。
悪あがきをするほどに、真央の足に力が入り、和也の太ももに置いていた足は股間を両足で挟みこむような形になってしまっていたのだ。
「ちょっとまって、真央ちゃん、痛い…」
「今それどころじゃないの! 我慢して!」
本当の所を言うと、やめて欲しかったのは痛いからというよりも、先ほど春香を見かけて膨らみ始めた股間が、真央の足で刺激され、完全に勃起してしまったからだった。
「くっ、うっ、はぁっ…!」
上で真央が暴れるほどに和也のペニスは踏みつけられ、硬さを増していった。
「やったー!」
真央が完成をあげると、3年生から取り上げた帽子を水面に叩きつけた。
相手の5年生は「くそー!」とか「惜しかったなぁ」と言って笑っている。
和也はやれやれと思って周りを見渡した。
騎馬の数は最初の半分くらいになってはいるが、まだ帽子取りは続いている。
プールの中央では、春香の騎馬がこちらのチームの騎馬に囲まれて苦戦しているようだった。
「かずくん、あれを狙おうよ!」
真央は自分より背の高い騎馬を倒したことで一人で盛り上がっているのか無謀なことを言い出した。
「わかったけど、さっきみたいに足で踏むの止めてよ、痛いからさぁ」
和也は不機嫌そうに言ってみたものの、真央はまったく応えていないようすで、
「ごめんごめん、もうしないから、ね? 早く早く」
と言って和也の頭をポンポン叩くのだった。
春香と1年生を取り囲んでいた騎馬は、一騎、また一騎と減っていき、最終的に和也と真央の騎馬と一騎打ちになってしまった。
相手の一年生は背はそれほど高くはないが、上級生でも怖がらずに帽子を取りに行く度胸がある。
真央の方はなおさら下級生に負けたくないという思いがあるので、意地になる。
最初はそれでも和也に気を使って足で立ち上がらないようにしていた真央だったが、夢中になってくるとどうしても押さえられなくなった。
再び足に力を入れて立ち上がるように背伸びをする。
「うっ! …やめて真央ちゃん…」
和也が小さく呻くが、今の真央にはまったく届いていない。
ただひたすら相手の帽子をとることにしか気が回っていない。
真央が何度も何度も足に力を入れて立ち上がる。
和也は俯いて耐えるしかなかった。
「あっ! あっ! いたっ!」
和也のペニスは小さな足で挟まれ、もみしだかれる。
真央には性の知識などまったくなく、自分が今足で何か挟んでいることも、挟んでいるものが何なのかも知らない。
どちらの騎馬もしぶとく、なかなか決着がつかない。
「かずくん、もうちょっと背伸びしてくれないととれないって!」
真央は相変わらず勝手なことを言っている。
しかし断続的に続く刺激に、和也は今までに感じたことのない不思議な感覚が背骨からおしりにかけてビリビリ流れているのを感じていた。
「ぐっ… うぅ、はぁっ」
もはや音に出すこともできなくなった和也の唸り声は和也意外に届いていない。
突然、和也は強烈な尿意に襲われた。
「真央! ちょっともう…っ!!」
真央を止めようと顔を上げた瞬間、目に飛び込んできたのは春香の顔だった。
一瞬世界がスローモーションになる。
春香の顔から下へと視線を下ろしていくと、先程まで盗み見ることしかできなかった大きな胸が踊っていた。
そしてさっき目撃してしまった乳輪のイメージが急に頭の中に広がった。
「これでどうだっ!」
真央が思いっきり力を入れて伸び上がり、今までに無いほどの刺激が和也のペニスを押しつぶした。
「あぁっ!!」
和也を追い込んできた刺激が一つに重なりあい、思わず声にならない悲鳴を上げる。
さっき背骨のあたりにあったむず痒さが、おしりの下を通って、勃起した和也のペニス全体にまとわりついた。
「漏れる…!」和也は心のなかで叫んだが、どうしようもなかった。
「あはっ! くぅ… うぁあ…」
ビュルル! ビュッ! ビュク!
和也の海パンの中で初めての射精が暴れまわっていた。
「おしっこ漏れてる…!」
頭の中でわかっていてもどうにも止めることができない。
ビュル、ビュッ…
やっと初めての射精を終えた時、同時に帽子取り終了のホイッスルが鳴った。
「もー、かずくんが急に止まるから負けちゃったじゃんかぁ!」
真央が文句を言いながら和也の背中から飛び降りた。
和也は初めての射精を終え、放心状態で、それどころではなかった。
海パンの中では未だに半立ちのペニスがびくんびくんと快感にふるえている。
みな思い思いに散っていったのもつかの間、開放時間終了の鐘が鳴った。
さっさとプールを後にする子どもたちを見送りつつ、和也はまだ水の中に居た。
春香の後ろ姿も見送ったが、もうペニスが反応することもなかった。
しかし未だに和也は自分が射精したことを知らず、プールの中でおしっこを漏らしたとばかり思って落ち込んでいた。
和也が我に帰ると、もう周りには誰も居なかった。
急いで海パンを引っ張って中を確認する。
さっきあんなにおかしなおしっこの出し方をしたのだから、ペニスがどうにかなってしまっていないか確認するためだった。
すると海パンの中から大量の、白い液体が溢れだした。
「何だこれ!?」
焦った和也だったが、最近うけた性教育の授業を思い出した。
「白い…もしかしてこれが…射精?」
プールの中にひとり佇む和也の周りで、彼が初めて出した真っ白な精液が、雲のように青い水の中に溶けていった。
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